＜1月31日〜　東京エレクトロンホール宮城　ほか＞　2021年のショパン国際ピアノコンクールセミファイナリストであり、国内外のオーケストラと多数共演するなどクラシックのピアニストとして確固たる位置を築く一方、ジャンルの垣根を越えた音楽を探求し続ける唯一無二のピアニストとして注目を集めている角野隼斗。現在はニューヨークを拠点とし、ボストン・ポップス・オーケストラとの共演でアメリカデビューを果たすなど活躍の幅を広げる中、2024年は1月から3月にかけて、全国23公演というこれまでにない大規模なツアーを展開する。
　タイトルの“KEYS”に持たせた意味合いはふたつ。鍵、鍵盤楽器という意味では、グランドピアノのほかにアップライトピアノやトイピアノなどをステージに持ち込む。コンサートの前半はグランドピアノでJ.S.バッハ作曲《イタリア協奏曲》BWV971、モーツァルト作曲 ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.331《トルコ行進曲付き》を演奏。後半は、ガーシュウィン《パリのアメリカ人》やラヴェル《ボレロ》といったオーケストラ作品を自身で編曲し、複数の鍵盤楽器を用いるというのだから、さまざまな鍵が描き出すバリエーションを楽しめることだろう。また、KEYを「鍵（かぎ）」、転じて「重要なもの」との意味合いで調性を意識し、2024年の年に合わせて《24の調によるトルコ行進曲変奏曲》を創るというアイデアが浮かんだという。これは、本番への関心を高めずにいられない。
　“Cateen（かてぃん）”の名で活動するYoutubeは、クラシックで培った技術とアレンジ、即興技術を融合した独自のスタイルが話題を集め、チャンネル登録者数が130万人を超える人気を誇る。視覚が伝える重要性も強く認識しているだけに、観客の五感をどう震わせるのか。期待が尽きない。

＜文・小畑智恵＞