藝大時代からインストゥルメンタル・バンド「G-CLEF」で活動するなど、クラシック音楽というジャンルに限らずさまざまな音楽を奏で続けているチェリスト、柏木広樹さん。「音楽って、表現って自由でいいんだ」をモットーに、多くの音楽の楽しさを伝え続けています。 チェロを始めたきっかけからワールド・ミュージックに出会った大学時代、そしてさまざまな楽器をそろえた編成でおこなうコンサートまで、たっぷりお話をうかがいました。
チェロを選んだわけではなく、そこにあったのがチェロだった
―― チェロを始めたきっかけを教えてください。ピアノを先に習われていたともおうかがいしました。
ピアノを3歳から、母親に習っておりました。
“母親に習う”“親に習う”というのが本当に嫌で、これをやめるためにはどうすれば良いか……と考えたときに思いついたのが、「ほかの楽器ならなんでもやるから」とお願いすること。そのとき、たまたま兄がヴァイオリンを習っていてピアノ・トリオを演奏するにあたって、足りていない楽器がチェロだ、ということで、チェロがスタンバっていたのが始めたきっかけでした。なので、チェロを選んだわけではなく、そこにあったのが、チェロだったんです(笑)。
ピアノを3歳から、母親に習っておりました。
“母親に習う”“親に習う”というのが本当に嫌で、これをやめるためにはどうすれば良いか……と考えたときに思いついたのが、「ほかの楽器ならなんでもやるから」とお願いすること。そのとき、たまたま兄がヴァイオリンを習っていてピアノ・トリオを演奏するにあたって、足りていない楽器がチェロだ、ということで、チェロがスタンバっていたのが始めたきっかけでした。なので、チェロを選んだわけではなく、そこにあったのが、チェロだったんです(笑)。
―― では、ピアノという楽器を演奏すること自体は好きだったのでしょうか?
ぜんぜん嫌いじゃなかったし、そもそも音楽自体が大好きだったのですが、ただただ、“親に習う”のが本当に苦痛でした。
親が料理を作っているときでも、僕がピアノを弾いていたら「音が間違ってる」と声が飛んできたり、学校から帰ってきて野球に行きたいときにも「5回弾いてからにしなさい」と言われたり……。そういうエピソードが苦痛だっただけで、ピアノ自体は本当に好きでした。
ぜんぜん嫌いじゃなかったし、そもそも音楽自体が大好きだったのですが、ただただ、“親に習う”のが本当に苦痛でした。
親が料理を作っているときでも、僕がピアノを弾いていたら「音が間違ってる」と声が飛んできたり、学校から帰ってきて野球に行きたいときにも「5回弾いてからにしなさい」と言われたり……。そういうエピソードが苦痛だっただけで、ピアノ自体は本当に好きでした。
―― そんなエピソードがあってチェロを始めた柏木さんですが、プロの演奏家になろうと意識をされたのはいつごろでしょうか。
実は、プロになろうとはまったく考えていませんでした。
だいたいは幼稚園~小学生から楽器を始めて、その流れで音大に行って、という方が多いと思うんです。でも僕の場合は、小学生のときこそしっかりチェロを弾いていましたが、中学生のときはスポーツがとても好きでそちらに力を入れていたため、チェロは趣味でした。その後、高校受験でことごとく失敗し、高校に入ってから「やっぱり音楽をやらせてくれ、チェロをやらせてくれ」と親に泣きつきました。そこからプロを意識し始めました。
実は、プロになろうとはまったく考えていませんでした。
だいたいは幼稚園~小学生から楽器を始めて、その流れで音大に行って、という方が多いと思うんです。でも僕の場合は、小学生のときこそしっかりチェロを弾いていましたが、中学生のときはスポーツがとても好きでそちらに力を入れていたため、チェロは趣味でした。その後、高校受験でことごとく失敗し、高校に入ってから「やっぱり音楽をやらせてくれ、チェロをやらせてくれ」と親に泣きつきました。そこからプロを意識し始めました。
――ちなみにチェロ以外の楽器を演奏されるとしたら、気になるものはありますか?
とにかくベースが好きで、若いころに趣味でやっていたこともありました。低い音程の楽器が好きなのかな……。
あと、読者のみなさんにオススメしたい楽器は、絶対にピアノです。音楽の要素はリズム・和音・メロディー。これを一気にできる楽器が、実はピアノなんです。ギターも近いけどね。
ピアノができると音楽の幅が一気に広がります。僕は途中でリタイアしたにも関わらず、受験の副科実技でピアノを選んでめちゃくちゃ苦労したのですが、ピアノをちゃんと習っておけばよかったなと思う今日このごろです。
とにかくベースが好きで、若いころに趣味でやっていたこともありました。低い音程の楽器が好きなのかな……。
あと、読者のみなさんにオススメしたい楽器は、絶対にピアノです。音楽の要素はリズム・和音・メロディー。これを一気にできる楽器が、実はピアノなんです。ギターも近いけどね。
ピアノができると音楽の幅が一気に広がります。僕は途中でリタイアしたにも関わらず、受験の副科実技でピアノを選んでめちゃくちゃ苦労したのですが、ピアノをちゃんと習っておけばよかったなと思う今日このごろです。
―― チェロを弾く、扱う上で大切にしていることはなんでしょうか。
昨日よりひとつでも良い音色を出そうと、いまも毎日練習しています。若いころはがむしゃらにチェロを弾いていた気がするのですが、年齢を重ねて身体が少しずつ硬く、動かなくなってきてからは考えて弾くようになりました。身体のどこを使って弾けば良い音が鳴るんだろう、ということを、チェロとお話しています。日々終わりがないですね。
昨日よりひとつでも良い音色を出そうと、いまも毎日練習しています。若いころはがむしゃらにチェロを弾いていた気がするのですが、年齢を重ねて身体が少しずつ硬く、動かなくなってきてからは考えて弾くようになりました。身体のどこを使って弾けば良い音が鳴るんだろう、ということを、チェロとお話しています。日々終わりがないですね。
ブラジル音楽との出会い
1987年5月、「G-CLEF」結成前夜
―― 藝大時代から、純粋なクラシックの活動と比べてよりポップスに近い音楽活動をされています。なぜ興味を持ち、こちらのジャンルを開拓し、広げられたのでしょうか。
藝大時代に「G-CLEF」というバンドに参加しました。いろんな音楽に興味を持ちだしたのは、実はそれ以降だと思います。友だちの影響が大きかったですね。その当時の仲間が聴いていた音楽を一緒に聴くうちに、「音楽って自由でいいんだ」ということを学んだ気がします。そこから僕の音楽は広がっていきました。
藝大時代に「G-CLEF」というバンドに参加しました。いろんな音楽に興味を持ちだしたのは、実はそれ以降だと思います。友だちの影響が大きかったですね。その当時の仲間が聴いていた音楽を一緒に聴くうちに、「音楽って自由でいいんだ」ということを学んだ気がします。そこから僕の音楽は広がっていきました。
―― 柏木さんはブラジル音楽にもお詳しいですが、出会いやハマったきっかけも教えてください。
これも、人との出会いがきっかけです。当時おもにブラジル音楽で活動していた、越田太郎丸くんという同い年のギタリストがいまして。そのころの僕は、サンバとかボサノバという言葉は知っていたけど、それくらいしか知らないレベルの認識度でした。
ブラジルって実はとても大きな国で、地域によっていろんな音楽があるんです。そういったことを越田くんから教えてもらううちに、「チェロとの相性」という点で、ブラジル音楽は僕にとって非常にマッチングする音楽だということに気がつきました。それから急速にハマっていって、演奏することはもちろん、聴くこともたくさんしました。
これも、人との出会いがきっかけです。当時おもにブラジル音楽で活動していた、越田太郎丸くんという同い年のギタリストがいまして。そのころの僕は、サンバとかボサノバという言葉は知っていたけど、それくらいしか知らないレベルの認識度でした。
ブラジルって実はとても大きな国で、地域によっていろんな音楽があるんです。そういったことを越田くんから教えてもらううちに、「チェロとの相性」という点で、ブラジル音楽は僕にとって非常にマッチングする音楽だということに気がつきました。それから急速にハマっていって、演奏することはもちろん、聴くこともたくさんしました。
―― ブラジル音楽は日本ではなかなか聴くきっかけをつかむのが難しいかと思いますが、初心者におすすめの曲やアーティストも教えていただけますか?
いまは新しいブラジル音楽がたくさんあって、ひとくちでオススメというのをなかなか言えないんですが、王道としてAntônio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)を聴いてみるのはいいと思います。コードの美しさ、そしてメロディーのすばらしい絡み方など、ブラジル音楽にもともとあったものがより感じられます。
あとはIvan Lins(イヴァン・リンス)は、6人組の男性コーラス・グループ「TAKE 6」がカバーした曲《Nosso Acalanto / That's Love》で有名になったりと、名曲がたくさんあります。
ほかにもToninho Horta(トニーニョ・オルタ)は、アメリカのジャズ・ギタリストのPat Metheny(パット・メセニー)に大きな影響を与えたアーティストで、彼の音楽も大好きです。
キリがないですが……あとひとり挙げるとすればDori Caymmi(ドリ・カイミ)。僕もアルバムでカバーしていますが、彼の作った作品《Amazon River》は、僕の人生においてもっとも重要な曲のひとつです。アマゾンの自然が壊れることや飢饉を危惧している曲なのですが、最初に聴いたとき、とてもとても美しい曲で思わず泣きました。
いまは新しいブラジル音楽がたくさんあって、ひとくちでオススメというのをなかなか言えないんですが、王道としてAntônio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)を聴いてみるのはいいと思います。コードの美しさ、そしてメロディーのすばらしい絡み方など、ブラジル音楽にもともとあったものがより感じられます。
あとはIvan Lins(イヴァン・リンス)は、6人組の男性コーラス・グループ「TAKE 6」がカバーした曲《Nosso Acalanto / That's Love》で有名になったりと、名曲がたくさんあります。
ほかにもToninho Horta(トニーニョ・オルタ)は、アメリカのジャズ・ギタリストのPat Metheny(パット・メセニー)に大きな影響を与えたアーティストで、彼の音楽も大好きです。
キリがないですが……あとひとり挙げるとすればDori Caymmi(ドリ・カイミ)。僕もアルバムでカバーしていますが、彼の作った作品《Amazon River》は、僕の人生においてもっとも重要な曲のひとつです。アマゾンの自然が壊れることや飢饉を危惧している曲なのですが、最初に聴いたとき、とてもとても美しい曲で思わず泣きました。
―― ありがとうございます。柏木さんの思われる、ブラジル音楽の良さもぜひ教えていただけますか?
構造、和音が美しいことと、サンバに代表されるようなアッパーな感じもいいですよね。ハードロックみたいなアッパーさではないけれど、しなやかな感じ。そのしなやかさが僕は好きです。
構造、和音が美しいことと、サンバに代表されるようなアッパーな感じもいいですよね。ハードロックみたいなアッパーさではないけれど、しなやかな感じ。そのしなやかさが僕は好きです。
コンサートの醍醐味は「空気を作る一員」になれること
―― ららら♪クラブは、クラシック初心者へクラシックの楽しさや魅力を広め、コンサートへ足を運ぶ機会を増やす後押しをしているウェブマガジンです。柏木さんの考える、コンサートの楽しさや魅力を教えてください。
「空気を作る一員」であってほしいと思っています。そのコンサートで生まれた“空気”は自分も作ったんだ、というつもりでコンサートに足を運んでいただけたらうれしいですね。ご自身が聴いているときも、趣味でやるときも、音楽というものは「音楽の中に入る」ことがとても大切だと思うんです。その“入り方”をコンサートで実際に感じてみるのが楽しいのではないでしょうか。
「空気を作る一員」であってほしいと思っています。そのコンサートで生まれた“空気”は自分も作ったんだ、というつもりでコンサートに足を運んでいただけたらうれしいですね。ご自身が聴いているときも、趣味でやるときも、音楽というものは「音楽の中に入る」ことがとても大切だと思うんです。その“入り方”をコンサートで実際に感じてみるのが楽しいのではないでしょうか。
―― これまでにも多くのコンサートに出演、また行かれたと思いますが、強く印象に残ったコンサートについて教えてください。
たくさんありすぎます(笑)。
クラシックの演奏家で印象に残っているのは、僕がまだ小学生のころにNHKホールで聴いた、ウィーン・フィル。コンサートマスターがライナー・キュッヒル、指揮がロリン・マーゼルで、プログラムはリヒャルト・シュトラウスの《英雄の生涯》でした。これはもう一生忘れられない演奏会です。
ウィーンのさまざまなオーケストラからピックアップされたメンバーが約30人集まって、ベートーヴェンの交響曲第7番を指揮者なしで演奏したコンサートを聴きに行ったのですが、あれも本当に感動しました。もう、なんというか、みんなの気持ちや雰囲気、息の合わせ方がロックっぽいんです。クラシックとロックって同じ音楽であって、あまり境界がないなということを教えてくれたコンサートでした。一番後ろの人が身を乗り出して弾いていたりして(笑)、とにかくみんな楽しい。音楽ってすばらしいなと感じました。
あとは学生のころ、上野の東京文化会館で聴いた演奏会。お金が無かったので一番安い席で聴いた、チェロの神様、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチの演奏です。本当にびっくりしました。ものすごく離れた距離なのに、ドカンと目の前で音が鳴っている。どうやったらこんな音を出せるんだろう、なんて考えていたことを覚えています。
たくさんありすぎます(笑)。
クラシックの演奏家で印象に残っているのは、僕がまだ小学生のころにNHKホールで聴いた、ウィーン・フィル。コンサートマスターがライナー・キュッヒル、指揮がロリン・マーゼルで、プログラムはリヒャルト・シュトラウスの《英雄の生涯》でした。これはもう一生忘れられない演奏会です。
ウィーンのさまざまなオーケストラからピックアップされたメンバーが約30人集まって、ベートーヴェンの交響曲第7番を指揮者なしで演奏したコンサートを聴きに行ったのですが、あれも本当に感動しました。もう、なんというか、みんなの気持ちや雰囲気、息の合わせ方がロックっぽいんです。クラシックとロックって同じ音楽であって、あまり境界がないなということを教えてくれたコンサートでした。一番後ろの人が身を乗り出して弾いていたりして(笑)、とにかくみんな楽しい。音楽ってすばらしいなと感じました。
あとは学生のころ、上野の東京文化会館で聴いた演奏会。お金が無かったので一番安い席で聴いた、チェロの神様、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチの演奏です。本当にびっくりしました。ものすごく離れた距離なのに、ドカンと目の前で音が鳴っている。どうやったらこんな音を出せるんだろう、なんて考えていたことを覚えています。
「チェロってこんなこともできます!」をつめこんだコンサート
―― ここからは、2024年7月21日(日)に大阪の松下IMPホール(大阪ビジネスパーク)で行われる、「柏木広樹 チェロ・コンサート “Made in musicasa 2024”」についておうかがいしていきたいと思います。今回はどのような音楽を演奏されるのでしょうか?
オリジナル作品を中心にお送りします。ただ、昨年のツアーと違う点もありまして、音楽プロデューサーである光田健一さんに「新しいアプローチで」とアレンジをお願いしました。今までやっていた曲も違う角度から見ることができますし、「チェロってこんなこともできるんだよ、こんなにおもしろいんだよ」という根幹を、自分の曲でたくさん表現したいと思います。
オリジナル作品を中心にお送りします。ただ、昨年のツアーと違う点もありまして、音楽プロデューサーである光田健一さんに「新しいアプローチで」とアレンジをお願いしました。今までやっていた曲も違う角度から見ることができますし、「チェロってこんなこともできるんだよ、こんなにおもしろいんだよ」という根幹を、自分の曲でたくさん表現したいと思います。
―― 公式サイトにある、立ってチェロを演奏されているお写真が衝撃的です! とても活き活きと楽しそうで、インパクトがありますね。
ありがとうございます。G-CLEF時代からやっておりますので、もう30年以上やっています。チェロってなかなか立奏で弾くことはないのですが、「立ってもいいじゃん、自由でいいじゃん」っていう象徴だと思ってやっています。
ありがとうございます。G-CLEF時代からやっておりますので、もう30年以上やっています。チェロってなかなか立奏で弾くことはないのですが、「立ってもいいじゃん、自由でいいじゃん」っていう象徴だと思ってやっています。
―― 今回のツアーでも多くのミュージシャンと一緒に演奏されますが、それぞれのメンバーのイチオシポイントを教えてください。
まず、音楽監督の光田健一さん。彼とは「二人旅」というユニットもやっていますが、とにかく音楽をファンタジックに仕上げてくれます。頭の中にある音楽が、いつも夢の中にいるような、そんなアレンジもプレイもしてくれる、大切な相棒です。
そしてドラムの齋藤たかしくん。実は藝大出身のドラマーということで非常にめずらしい存在なのですが、なにしろ音が活き活きとしていますね。あと、僕ら年上の人間が多い中では、まだ若手。リハとなどのときに、その場の雰囲気をお祭りにしてくれる天才だと思っています。
ベースのコモブチキイチロウさん。僕にとっては音楽の兄貴。大好きなベーシストはたくさんいるんですけど、その中でもコモちゃんの音が一番好きといえるような音色の持ち主です。そして僕が弱ったときには後ろからつついてくれる、音楽以外でも兄貴みたいな存在です。
ギターの天野清継さん。もうなにも言うことはない、というぐらいお世話になっております。僕よりひと回りくらい年上で、60代後半なのでさまざまなフィジカルが落ちてくる年齢だと思うのですが、20~30年前に出会ったころからプレイの若さが一度も落ちたことがない。そのころから本当に尊敬するミュージシャンです。人間的にも少年のような、いちばん年上なんだけど、いちばん年下のような(笑)、そんなカワイイ一面もあるすばらしいギタリストです。
アンディ・ベヴァンさん、今回久しぶりに共演をお願いしました。フルート、サックス、そしてオーストラリアの先住民の楽器、アボリジニ・ディジュリドゥを担当します。ディジュリドゥという楽器は、ふだんまず聴くことがない楽器と言っていいかと思います。音楽のなかで使われることも一般的には少ないのですが、アンディが演奏するディジュリドゥは、楽器が本来持っているアボリジニが使っていた信号のような音以外にも、テクニックを巧みに操ってリズムを作ることができる、特異な存在です。今回も僕が昔作った《mission-D》という曲を演奏しますが、「ディジュリドゥでこんなことができちゃっていいの!?」という世界を、アンディは広げてくれます。そしてフルートもサックスもストレートな歌心が響く、大好きなすばらしいアーティストです。
まず、音楽監督の光田健一さん。彼とは「二人旅」というユニットもやっていますが、とにかく音楽をファンタジックに仕上げてくれます。頭の中にある音楽が、いつも夢の中にいるような、そんなアレンジもプレイもしてくれる、大切な相棒です。
そしてドラムの齋藤たかしくん。実は藝大出身のドラマーということで非常にめずらしい存在なのですが、なにしろ音が活き活きとしていますね。あと、僕ら年上の人間が多い中では、まだ若手。リハとなどのときに、その場の雰囲気をお祭りにしてくれる天才だと思っています。
ベースのコモブチキイチロウさん。僕にとっては音楽の兄貴。大好きなベーシストはたくさんいるんですけど、その中でもコモちゃんの音が一番好きといえるような音色の持ち主です。そして僕が弱ったときには後ろからつついてくれる、音楽以外でも兄貴みたいな存在です。
ギターの天野清継さん。もうなにも言うことはない、というぐらいお世話になっております。僕よりひと回りくらい年上で、60代後半なのでさまざまなフィジカルが落ちてくる年齢だと思うのですが、20~30年前に出会ったころからプレイの若さが一度も落ちたことがない。そのころから本当に尊敬するミュージシャンです。人間的にも少年のような、いちばん年上なんだけど、いちばん年下のような(笑)、そんなカワイイ一面もあるすばらしいギタリストです。
アンディ・ベヴァンさん、今回久しぶりに共演をお願いしました。フルート、サックス、そしてオーストラリアの先住民の楽器、アボリジニ・ディジュリドゥを担当します。ディジュリドゥという楽器は、ふだんまず聴くことがない楽器と言っていいかと思います。音楽のなかで使われることも一般的には少ないのですが、アンディが演奏するディジュリドゥは、楽器が本来持っているアボリジニが使っていた信号のような音以外にも、テクニックを巧みに操ってリズムを作ることができる、特異な存在です。今回も僕が昔作った《mission-D》という曲を演奏しますが、「ディジュリドゥでこんなことができちゃっていいの!?」という世界を、アンディは広げてくれます。そしてフルートもサックスもストレートな歌心が響く、大好きなすばらしいアーティストです。
―― ディジュリドゥが入ることで一気に民族音楽感が高まりますが、クラシックを学ばれた柏木さんの視点で、民族音楽の良さはどういったところだと思われますか?
ディジュリドゥだけではなく、ブラジル音楽にしてもそうだし、邦楽的な要素を音階で入れたりと、“民族音楽”としてあまり意識していないというのが正直なところです。「音楽」というものは「音楽」であり、それ以上でもそれ以下でもない、という感じでしょうか。
国が違ったり言葉が違ったり、食べ物、風土も違えばもちろん、その民族独特の音楽が生まれていきます。音楽の世界は、共通言語が非常に多いと思っています。それを、日本人の僕がどんなふうに料理して食べても自由じゃないかと。いろんなジャンルの方とコラボレーションさせてもらっていますが、この国だから、この人だからこうしようというのではなくて、その人が持っている音楽と自分が持っている音楽が、どんなふうに融合したら楽しいかな、ということを考えてやっています。
ディジュリドゥだけではなく、ブラジル音楽にしてもそうだし、邦楽的な要素を音階で入れたりと、“民族音楽”としてあまり意識していないというのが正直なところです。「音楽」というものは「音楽」であり、それ以上でもそれ以下でもない、という感じでしょうか。
国が違ったり言葉が違ったり、食べ物、風土も違えばもちろん、その民族独特の音楽が生まれていきます。音楽の世界は、共通言語が非常に多いと思っています。それを、日本人の僕がどんなふうに料理して食べても自由じゃないかと。いろんなジャンルの方とコラボレーションさせてもらっていますが、この国だから、この人だからこうしようというのではなくて、その人が持っている音楽と自分が持っている音楽が、どんなふうに融合したら楽しいかな、ということを考えてやっています。
―― 今回のコンサート「Made in musicasa」のコンセプトをあらためて教えていただけますか?
「musicasa」は造語で“音楽の家”という意味なのですが、チェロを使っていろんな音楽を演奏する、というのがこのコンセプト。
第1部は、そもそも一番大切な部分でもあるのですが、“チェロの音色”がイチオシなので、そこを楽しんでいただきたいですね。第2部は、「チェロはカタい楽器である」と思われがちな部分があるので、「チェロはこんなに楽しいんだよ!」という雰囲気を、ご来場いただくみなさん、スタッフ、メンバーと一緒に作るというのがコンセプトです。
立奏も含めて、ぜひ楽しんでください(笑)。
「musicasa」は造語で“音楽の家”という意味なのですが、チェロを使っていろんな音楽を演奏する、というのがこのコンセプト。
第1部は、そもそも一番大切な部分でもあるのですが、“チェロの音色”がイチオシなので、そこを楽しんでいただきたいですね。第2部は、「チェロはカタい楽器である」と思われがちな部分があるので、「チェロはこんなに楽しいんだよ!」という雰囲気を、ご来場いただくみなさん、スタッフ、メンバーと一緒に作るというのがコンセプトです。
立奏も含めて、ぜひ楽しんでください(笑)。
―― では今回のコンサートの聴きどころや、特に力を入れているポイントなどもぜひ教えてください。
新しいアレンジにももちろんですが、アンディの弾くディジュリドゥを聴いてほしいというのが今回の特別なポイントです。
あと、サンバのときは会場のみなさんが歌ってくれる中で弾きたい、という思いで作っています。コロナ禍を経て、声を出せない時期が長く続きました。「チェロのコンサートでお客さんが歌うの?」と驚かれるかもしれませんが、音楽・ライブというものは、ミュージシャンとスタッフだけが作っているわけではなくて、お客さんと一緒にその場で作るものだと考えています。その“空気”が音楽・ライブだと思うので、聴くだけではなく、会場にいる全員で作り上げる音楽を目指しています。
新しいアレンジにももちろんですが、アンディの弾くディジュリドゥを聴いてほしいというのが今回の特別なポイントです。
あと、サンバのときは会場のみなさんが歌ってくれる中で弾きたい、という思いで作っています。コロナ禍を経て、声を出せない時期が長く続きました。「チェロのコンサートでお客さんが歌うの?」と驚かれるかもしれませんが、音楽・ライブというものは、ミュージシャンとスタッフだけが作っているわけではなくて、お客さんと一緒にその場で作るものだと考えています。その“空気”が音楽・ライブだと思うので、聴くだけではなく、会場にいる全員で作り上げる音楽を目指しています。
―― たくさんのお話をありがとうございました。最後に、コンサートへ足を運ぶ読者へメッセージをお願いします。
僕は少し変わったチェリストなので、僕を基準に考えなくてもいいと思うのですが……(笑)。
やっぱりチェロの魅力をたくさん伝えたいなと思いながら、ライブをやっています。クラシックのコンサートとは雰囲気がかなり違うと思うのですが、ジャンルとして縛るというよりも、チェロの良さ、音色、独特の雰囲気など、そういった部分を楽しんでいただきたいです。どうしてもゆったりしたイメージが強い楽器かと思いますが、チェロでも激しい音楽ができるんですよ。「表現は自由でいいんだ」ということを感じながら今も演奏活動をしているので、そんな雰囲気を味わいつつ、楽しんでいただけたらいいな。
そしてこれは僕のライフワークなのですが、盲導犬を広め、増やす活動をしています。今回もPR犬を連れていくので、ぜひ盲導犬に触れて、一緒に遊んでもらえるとうれしいです。
<取材・文・構成 浅井彩>
僕は少し変わったチェリストなので、僕を基準に考えなくてもいいと思うのですが……(笑)。
やっぱりチェロの魅力をたくさん伝えたいなと思いながら、ライブをやっています。クラシックのコンサートとは雰囲気がかなり違うと思うのですが、ジャンルとして縛るというよりも、チェロの良さ、音色、独特の雰囲気など、そういった部分を楽しんでいただきたいです。どうしてもゆったりしたイメージが強い楽器かと思いますが、チェロでも激しい音楽ができるんですよ。「表現は自由でいいんだ」ということを感じながら今も演奏活動をしているので、そんな雰囲気を味わいつつ、楽しんでいただけたらいいな。
そしてこれは僕のライフワークなのですが、盲導犬を広め、増やす活動をしています。今回もPR犬を連れていくので、ぜひ盲導犬に触れて、一緒に遊んでもらえるとうれしいです。
<取材・文・構成 浅井彩>
今後の公演情報
公演名 | 柏木広樹 チェロ・コンサート “Made in musicasa 2024”【大阪】 |
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日時 | 7月21日(日) 16:30開演(16:00開場) |
会場 | 松下IMPホール |
出演 | [チェロ]柏木広樹 [ピアノ・キーボード]光田健一 [ギター]天野清継 [ベース]コモブチキイチロウ [ドラム]齋藤たかし [ディジュリドゥ・サクソフォン・フルート]アンディ・ベヴァン |
チケット | 全席指定:7,200円 学生4,600円 |
お問い合わせ | キョードーインフォメーション TEL:0570-200-888 |
詳細 | 詳細はこちら |
柏木広樹(Hiroki Kashiwagi)
東京芸術大学在学中“G-CLEF”としてデビュー。 紅白歌合戦に出場するなど、新風を巻き起こす。
2001年より本格的にソロ活動を開始、類まれな豊かな倍音を持ち味に、ブラジル・アフリカ・日本など多国籍なテイストを盛り込んだ独創的な音楽を創り出している。
映画『おくりびと』『冷静と情熱のあいだ』『新世紀エヴァンゲリオン』劇中演奏、『雪の華』劇伴、『きらきら眼鏡』テーマ曲など数々の映像作品を手がけている。
南日本放送「やくしまじかん」北日本放送「いっちゃん☆KNB」 TOKYO MX「宝塚歌劇団 CAFÉ BREAK」などのTV・ラジオ番組、セブン銀行、クロサワバイオリンCM、「羽根屋・富美菊酒造」「トヨタ自動車トヨタ会館」「くすりの福太郎」企業テーマソングなどの楽曲提供、『エミリの小さな包丁』(森沢明夫著)、『ドリトル先生』シリーズ(英児童文学)をはじめ文学を題材にした作品も多数。
ピアニスト光田健一とのデュオ・ユニット“二人旅”として全国ツアーを毎年敢行、これまでに2枚のアルバム『Partiendo』『MAJESTIC』を発表。2023年3月、ヴァイオリニスト葉加瀬太郎、ピアニスト西村由紀江とのトリオ“NH&K TRIO”として1stアルバム『Adagio』をリリース。
押尾コータロー、佐藤竹善(SING LIKE TALKING)らの楽曲アレンジ、藤原道山、木村大、沖仁、塩谷哲、ジェイクシマブクロ、クレモンティーヌなど多数のアーティストと共演するほか、元NHKアナウンサー松平定知、女優・中嶋朋子などの朗読とのコラボレーション、能楽師・梅若実玄祥やタップダンサーHIDEBOHとの共演など、ジャンルの垣根を越えて多彩に活躍。
ソロ・アーティストとして通算10作目のオリジナル・アルバム「VOICE」を発表。自身のコンサート・シリーズ“Made in musicasa(音楽の家)”を軸にライブ活動も積極的に展開、公演会場では盲導犬の支援活動を10年近くにわたって続けるなど、音楽を通じて自然・動物・人へのメッセージを発信している。
人間の声に最も近い音色の楽器といわれるチェロを変幻自在に操り、自らを“チェロ芸人”と称して笑顔があふれる音楽を目指すチェリスト。
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東京芸術大学在学中“G-CLEF”としてデビュー。 紅白歌合戦に出場するなど、新風を巻き起こす。
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映画『おくりびと』『冷静と情熱のあいだ』『新世紀エヴァンゲリオン』劇中演奏、『雪の華』劇伴、『きらきら眼鏡』テーマ曲など数々の映像作品を手がけている。
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ピアニスト光田健一とのデュオ・ユニット“二人旅”として全国ツアーを毎年敢行、これまでに2枚のアルバム『Partiendo』『MAJESTIC』を発表。2023年3月、ヴァイオリニスト葉加瀬太郎、ピアニスト西村由紀江とのトリオ“NH&K TRIO”として1stアルバム『Adagio』をリリース。
押尾コータロー、佐藤竹善(SING LIKE TALKING)らの楽曲アレンジ、藤原道山、木村大、沖仁、塩谷哲、ジェイクシマブクロ、クレモンティーヌなど多数のアーティストと共演するほか、元NHKアナウンサー松平定知、女優・中嶋朋子などの朗読とのコラボレーション、能楽師・梅若実玄祥やタップダンサーHIDEBOHとの共演など、ジャンルの垣根を越えて多彩に活躍。
ソロ・アーティストとして通算10作目のオリジナル・アルバム「VOICE」を発表。自身のコンサート・シリーズ“Made in musicasa(音楽の家)”を軸にライブ活動も積極的に展開、公演会場では盲導犬の支援活動を10年近くにわたって続けるなど、音楽を通じて自然・動物・人へのメッセージを発信している。
人間の声に最も近い音色の楽器といわれるチェロを変幻自在に操り、自らを“チェロ芸人”と称して笑顔があふれる音楽を目指すチェリスト。
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