＜9月22日　東京・ティアラこうとう＞　いわずと知れた、日本を代表するゲームとしておなじみの「ドラゴンクエスト」シリーズ。2012年のCD発売以来、何度も演奏されながら、なおも人気が高い10作目の交響組曲《「ドラゴンクエストX」目覚めし五つの種族》が、海老原光の指揮、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の演奏により、壮大な冒険世界を出現させる。
　物語は、5つの大陸といくつかの島々からなる世界「アストルティナ」が舞台。魔に犯され始めた5つの種族が暮らすアストルティナを救うため、主人公は仲間たちとともに巡り、勇敢に闘いながら旅を続ける。王室に招かれ、村人たちとおしゃべりをし、天空の世界を覗いたかと思うと、炎の民に出会い、暗闇の迷宮をさまよう。そんなわくわくドキドキが止まらない冒険ストーリー、主人公と仲間たちの心の動きや果敢なチャレンジを、東京シティ・フィルの演奏はアグレッシブに、時に繊細に、そして荘厳に描き出すことだろう。
　ファミリーコンサートを大切にし、「青少年を中心に大人まで幅広い層が楽しめる音楽を作っていくのが天職だと思う」と生前に語り、ドラゴンクエストシリーズだけでも11作品500曲を超える音楽を残した作曲家、すぎやまこういち（1931〜2021）。その思いとイズムが込められた世界の懐は深い。交響組曲を道づれに“冒険旅”ができるなんて、ぜいたく過ぎる。

＜文・小畑智恵＞