icon-sns-youtube icon-sns-facebook icon-sns-twitter icon-sns-instagram icon-sns-line icon-sns-tiktok icon-sns-etc
2021年02月26日放送
渋谷慶一郎が語る〜テクノロジーと音楽〜(再)

テクノロジーと音楽

テクノロジーと音楽
 2月26日の『ららら♪クラシック』は、「渋谷慶一郎が語る〜テクノロジーと音楽〜」でした(2020年7月24日の再放送)。コロナ禍において、音楽界においてもコンピューター技術を必要とする機会が増してきました。今回のキーワードは“テクノロジーと音楽”とし、自動作曲のパイオニア的システム「Orpheus」と、最新の音楽教育システム事例をご紹介します。 自動作曲の可能性 ~自動作曲システム Orpheus ~  番組では、「ディープ・バッハ」という、バッハのコラールを模倣するAIモデルが紹介されました。これは、ディープラーニング(機械学習)によってバッハのコラールの傾向等を学習し、それに基づいてコラールを生成します。AIが自分で分析し、もはや人間が模倣する以上の仕事を、はるかに早くやってのけるのです。  ディープ・バッハのような機械学習による“模倣”とはまた違ったアプローチをしている自動作曲システムがあります。今からさかのぼること約15年(!)2007年に、東京大学の嵯峨山茂樹教授のチームが開発した「Orpheus(オルフェウス)」。これはディープ・バッハに比べ、人間の創造の余地を残したシステムとなっています。まず、ユーザーは歌詞を書きます。その後、曲調や楽器や歌声、リズム、調性、音域などの細かい設定を行い、Orpheusはそれらの情報と歌詞の言葉のイントネーションをもとに、曲を生成してくれます。2重唱なども作ることができ、その性能は作曲家顔負けです。
Orpheusを開発した嵯峨山茂樹氏
 このシステムの最大の特徴としては、ユーザーの工夫次第で、自動作成される音楽に無限の可能性が生まれ、ユーザーの“創造性”を刺激してくれるところにあります。ユーザーは、最初に出来上がったものを聴き、歌詞や設定をさらに工夫し、よりよいものを紡ぎだすことができます。Orpheusを開発した嵯峨山氏は、高校時代に、音楽の授業の中で“和声学”の存在を知り、そこに“工学”にも通ずる面白さを感じたといいます。工学少年の和声学体験が、「自動作曲システム」という、まるでドラえもんの道具のような夢のシステムの開発につながったと思うと、感慨深いものがあります。
テクノロジーと音楽教育 ~洗足オンラインスクール~
 コンピューター技術が音楽教育の分野でも幅広く使われている事例として、「洗足オンラインスクール」*をご紹介します。ここでは、コンピューター上で楽しく本格的に学ぶことのできる様々なWeb教材の開発に力を入れ、1年前にリリースした「対位法学修支援システム『地球の旋律線』」では、対位法の課題を自動採点し、アドバイスまでもらえます。また、「和声学学修支援システム『和声の祭典』」では、和声学について同様に自動で採点してくれます。 *洗足学園音楽大学によるWebサイトで、無料で様々な音楽学習をオンライン上で行うことができます。
対位法学修システム『地球の旋律線』
聴音RPG『失われた音問村』戦闘シーン
 他にもRPGゲームとして楽しみながら聴音力を身に着ける「聴音RPG『失われた音問村』」、パソコンのキーボードをたたいてリズム感を鍛える『りずむん』、クイズ形式で作曲家の人生を辿る『音楽史アドベンチャー』など、多種多様なWeb教材を無料で公開しています。これらのコンテンツは、コロナ禍においてさらに利用率が上がり、全国の小中高等学校でも自宅学習の課題等に取り入れられました。「聴音RPG」では、RTA(リアルタイムアタック)※に挑戦する人も出てきています。  洗足オンラインスクールの校長である清水昭夫氏は、世の中の音楽学習の機会を身近にすることを理念とし、オンラインスクールを2007年に立ち上げました。それから約15年、音楽教育においても、テクノロジーを駆使することはもはや必須の時代となっています。 ※RTAとは、ゲームスタートからクリアまでの実時間(時計で計測した現実の所要時間)の短さを競う、コンピューターゲームにおける競技です。 (文・一色萌生)

SHARE

旧Twitter Facebook