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2020年12月18日放送
「オールド・ラング・サイン 〜あなたの知らない“蛍の光”の源流」

イギリス・アイルランド民謡と作曲家

イギリス・アイルランド民謡と作曲家
 12月18日のららら♪クラシックは「オールド・ラング・サイン 〜あなたの知らない“蛍の光”の源流」でした。スコットランド民謡である《オールド・ラング・サイン》は、日本では《蛍の光》の名で知られ、また、ハイドンやベートーベンなど多くの作曲家にも編曲されました。今回のキーワードは「イギリス(イングランド、ウェールズ、スコットランド)・アイルランドの民謡と作曲家」とし、それらの民謡がクラシック音楽に与えた影響をご紹介いたします。
ベートーベンとイギリス・アイルランド民謡
 番組でも紹介があったように、ベートーベンは〈オールド・ラング・サイン〉(《12のスコットランドの歌》より)を編曲していますが、他にも150を超える多くのイギリス・アイルランド民謡の編曲同時期に手掛けています。その中には有名なアイルランド民謡〈夏の名残のばら〉(《20のアイルランドの歌》より)もあります。これらの仕事は、これは、イギリスの出版者がベートーベンに依頼したものですが、ベートーベンはこれを単なる“編曲の仕事”として終わらせず、自分の作品に取り入れました。  その代表例が《交響曲第7番》。その狂喜乱舞の第4楽章は、どこかアイリッシュな雰囲気を感じませんか?この曲の第1主題の原型となったのは、アイルランドの古い民謡〈ノラ・クレイナ〉だと言われています。ベートーベンはその古い民謡を〈Save Me from the Grave and Wise〉(《12のアイルランドの歌》より)として編曲しています。その編曲作品を聴いてみると、〈ノラ・クレイナ〉の歌の旋律というよりは、その間奏部分がそのまま《交響曲第7番》に使われている、といったところです。
民謡の美しさに気づいたイギリスの作曲家たち
 イギリスは、17世紀後半のH.パーセル以来、長く有名な作曲家を生み出していませんでした。待つこと200年、19世紀の後半にエルガーなど多くのすぐれた作曲家を輩出し、その時期を“イギリス音楽のルネサンス”などと言ったりもします。そんな“ルネサンス”に活躍したイギリスの作曲家たちは、自国の民謡の美しさに気付き、民謡を採集する活動をしていました。ヴォーン・ウィリアムズやホルスト、バターワースなどです。彼らは田舎を訪ね歩き、イングランドの民謡を保存する活動をする傍ら、それらを自作にも取り入れました。ヴォーン・ウィリアムズは有名な民謡〈グリーンスリーヴス〉を歌劇《恋するサー・ジョン》の中に取り入れました。のちにそれは再編され、《グリーンスリーヴスによる幻想曲》として知られるようになります。彼の管弦楽作品《富める人とラザロの5つのヴァリアント》もまた美しい作品ですが、古い民謡〈富める人とラザロ〉をもとにしています。 ヴォーン・ウィリアムズ《富める人とラザロの5つのヴァリアント》  吹奏楽の世界では、いくつかのイギリス民謡の旋律を使った《イギリス民謡組曲》もまた有名でしょう。ホルストの《吹奏楽のための組曲第2番》もまた、イギリス民謡や舞踏曲のオンパレードのような作品です。  ヴォーン・ウィリアムズやホルストは、民謡を編曲・引用するだけでなく、それらの要素を自分の作風として取り入れました。ヴォーン・ウィリアムズの《ロンドン交響曲》や《田園交響曲》、《あげひばり》などの名作を聴くと、それらに古い民謡の旋法や5音音階が組み込まれていることに気付きます。またホルストも、組曲《惑星》が有名すぎてその印象が強いのですが、彼のほとんどの曲は、民謡のような素朴なものです。ホルストの作品全般を聴くと、むしろ《惑星》が彼の作品の中で異質なのもだと感じるでしょう。しかし《惑星》の中にも、第2曲〈金星〉を聴くと、確かな民謡の息吹を聞き取ることができます。 (文・一色萌生)

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