＜3月3日　青森・リンクモア平安閣市民ホール＞　意欲的なプログラムを伴うリサイタルをはじめ、作品の背景や魅力を深掘りしていく講座など、多彩な活動を繰り広げるピアニスト・金子三勇士。今回は音楽のおもしろさを改めて発見でき、彼のピアノ演奏を存分に堪能できるスペシャルなリサイタルが開催される。
　今回のリサイタルでは、ショパンやリストの作品を中心にプログラムが組まれている。このふたりは1歳違いで同じ時代に音楽界を大いに盛り上げたピアニスト、作曲家であった。ピアニストとしては繊細さを追求するショパンと、超絶技巧でダイナミックに人々を魅了したリストは対極にいたが、作曲した作品は、どれも繊細さや大胆さなどさまざまな表現を駆使した美しい作品だ。また、演奏会の中ほどでは同じタイトルで違う作曲家が作曲した作品も聴き比べられる。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ《月光》とドビュッシーの《月の光》（※ベートーヴェンの《月光》は本人がつけた名称ではない。）ラフマニノフの前奏曲《鐘》とイタリア語で鐘を表すリストの《ラ・カンパネラ》。同様の名称がつけられても、作曲家や時代が違えば異なる音楽が作られる驚きを、金子のピアノ演奏と共に体験してほしい。
　プログラムのメインには、ベートーヴェンの有名な「第九」をリストがピアノ編曲し、さらに金子が編曲した〈フロイデ〜交響曲「第九」第4楽章〜〉が据えられている。当日会場でしか聴くことができない青森オリジナルバージョンは、必聴のプログラムだ。
　さまざまな作品の対比で、音楽の楽しみ方をさらに見つけたい。そして、音楽史のなかで燦然と輝く「第九」の特別バージョン。ぜひ足を運んでみてはいかがだろう。

＜文・山下実紗＞