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実はこんなに沢山の種類がある「吹奏楽」の世界

〜吹奏楽特集①〜
実はこんなに沢山の種類がある「吹奏楽」の世界
 あなたは「吹奏楽」と聞いて、どんなものを思い浮かべますか? 吹奏楽部に入った経験のない方でも、たとえば学校の吹奏楽部が入学式や卒業式、運動会などで演奏しているのを見ききしたことはあるかもしれません。木管楽器と金管楽器が同じくらいの人数いて、それに打楽器が数人、時にはコントラバスやピアノを加えた編成での演奏を思い浮かべる方が多いと思います。しかし一概に吹奏楽といっても、じつは様々な形態の音楽が存在するのです。

「吹奏楽」って、編成?それともジャンルなの?

 吹奏楽、という言葉は管楽器を主体にした音楽のほとんどに適用できてしまうため、大変広い範囲で使われています。「弦楽四重奏」「ビッグ・バンド」などと並べて、編成を示す語としても、あるいは「クラシック」「ロック」などと並べて1つのジャンルを示す言葉としても、どちらの意味においても使われます。   さらに、同じ吹奏楽の中でも「マーチング・バンド」「軍楽隊」「市民バンド」のように色々な名称が存在します。これらは別々の名前ですが、使用している楽器の種類はほとんど同じです。 こうしたことが起こってしまうのは、一口に「バンド」と言っても、
  • 編成で区別している場合
  • バンドが何の目的で存在しているのかを表した場合
  • があるためです。編成の違いは音楽の内容の違いに如実に現れるため、ここでは編成の違いについて主にお話ししていきます。

    編成の違いで見る、いろいろな「吹奏楽」

    ◆ミリタリー・バンド(軍楽隊)  「吹奏楽」として親しまれているものの大半が、この編成に属します。冒頭で挙げたのと同じ、木管楽器、金管楽器、打楽器が中心です。名前の通り各国の軍で採用されているのはもちろん、学校、職場、地域などさまざまなところで結成されています。  
    Izmir, Turkey - October 29, 2019: Military band playing Republic Day of Turkey. Alsancak Izmir Turkey.
     ミリタリー・バンドの唯一にして最大の特徴が「1パートを何人で演奏してもよい」ということ。軍楽として発展してきた経緯から、たとえ戦場で奏者が散り散りになっても、1パートを複数奏者で担当していれば、残った奏者だけで演奏を続けられる……というところに由来しています。このため、15人のバンドも50人のバンドも、100人超えの大きなバンドも、編成としてはすべてミリタリー・バンドで、人数に関わらず同じ譜面を使うことができます。超大編成の勢いのある強奏は迫力満点、吹奏楽を聴く醍醐味だと言えるでしょう。
     ミリタリー・バンドは初心者でも手軽に参加できることから世界中で親しまれており、国や時代によって使用楽器や人数配分(どのパートにどのように人数を配置するか)が異なります。欧米はもとより中南米、北欧など、編成の違いを聴き比べるのも面白いですよ。ちなみに、ミリタリー・バンドの編成の団体が「ウインド・シンフォニー」「○○ウインドアンサンブル」などの名称を持っていても、Winds=木管楽器のみで構成されている訳ではありません。これは欧米でミリタリー・バンドのことを指して(他の編成と区別して)ウィンズと呼んでいることが由来だと思われます。西ヨーロッパ諸国ではハルモニー(Harmonie)などとも呼ばれます。  マーチング・バンドはほとんどミリタリー・バンドと同じですが、歩いたり走ったりしながら演奏するため、一部の楽器がそれに適した形状のものに置き換わります(テューバ→スーザフォンなど)。 ◆ブリティッシュ・ブラスバンド(英国式ブラスバンド、とも)  「吹奏楽」と混同されることが1番多いのが、間違いなく「ブラスバンド」でしょう。ブラスバンドが最も盛んに行われているのはイギリスで、金管楽器と打楽器のみで構成されますが、英国式の編成の場合はトランペットやフレンチホルンではなく、サクソルン属という別の系統の金管楽器が使われます(でも、金管楽器を演奏したことのある人でないと見分けはつかないでしょう)。サクソルン属の管楽器は柔らかく溶けあう音をしているので、金管楽器だけとは思えないふくよかな音響を体感できます。
     ミリタリー・バンドと異なり、各楽器の人数は決められており、増やしたり減らしたりするのは一般的ではありません。また同じ楽器でも「ソロパート」と「リピエーノ・パート」(総奏)に分かれているのが特徴。日本の小学校でよく見られる金管バンドは、使用楽器にトランペットなども含まれ、パートの人数も流動的なので、厳密には違う編成です。  また、オランダやベルギーなどで盛んに行われているファンファーレ・オルケストは、サクソルン属以外の金管楽器やサクソフォンも入れて構成されます。これらの国々では吹奏楽(Harmonie)とファンファーレ・オルケスト(Fanfare)と金管バンド(Brass)の三形態を合わせて、ハファブラ(HaFaBra)と呼びます。マーチング・バンド同様野外で動きを伴って演奏されるドラム&ビューグル・コーは、その名の通りビューグル(トランペット、コルネットとは異なる)をメインに、打楽器やシンセサイザーも伴う編成です。 ◆ハルモニー・ムジーク  18〜19世紀のヨーロッパで流行した合奏形態です。貴族が食事やイベントで音楽家を雇って演奏させるシーンで生まれました。基本的に同じ楽器は2パート起用され、偶数人数で演奏されます。作品によって含まれる楽器に差がありますが、最も多いのは8名編成(オーボエ2、クラリネット2、ホルン2、ファゴット2)で、それより少ない場合もあれば、もっと楽器を足して十数名の大きな編成になることも。ミリタリー・バンド編成を前提として結成された今の吹奏楽部で演奏するには、メンバーを選抜したり、あるいはミリタリー・バンドの編成に合わせて編曲したりすることが必要です。木管五重奏、金管五重奏なども使用楽器は似通っていますが、こちらはもっとあとに出現した室内楽の編成です。 ◆管楽オーケストラ  オーケストラからヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを抜いた編成で、ハルモニー・ムジーク同様、軍楽隊とはルーツが異なります。19世紀~20世紀にかけて、クラシックの作曲家がこの編成のために美しい作品を多く書いています。オーケストラの標準的な管楽器だけを使うため、サクソフォンは入らず、人数はむやみに増やせません。  ただしオーケストラには倍管の慣習(管楽器を時と状況に応じて増員すること)がありますので、管楽オーケストラも時折倍管になることがあります。 ◆ウィンド・アンサンブル  先程、ミリタリー・バンドは1パートの人数に制限がないと述べました。この弊害は、作曲者が本来意図したサウンドが、場合によっては実現しない可能性があることです。それを解消するために、20世紀アメリカを代表するバンド・ディレクターのフレデリック・フェネルが提唱したのがウィンド・アンサンブル。(一部の楽器を除いて)1パートに奏者ひとりと厳密に定めるこの編成は、一見理想的に思えますが、しかしあまり浸透しませんでした。日本で最も多く盛んな活動を行っている、学校での吹奏楽は、教育活動の一環でもあります。そのため編成で不要だからといって演奏に参加できないメンバーを決めるのは至難の業ですし、楽器初心者に重要なパートを1人で演奏させるのは酷だ、などの理由があるでしょう。ただし、ウィンド・アンサンブルのために書かれた作品には、素晴らしいサウンドを有するものがたくさんあるのも事実です。  東京佼成ウインドオーケストラ、シエナ・ウインド・オーケストラをはじめとする日本のプロ吹奏楽団の多くは、ミリタリー・バンドの編成を基本にしていますが、人数をしぼってウィンド・アンサンブルなどの楽曲を演奏することもあります。編成の違いや、その編成ができた経緯を知ることで、より深く吹奏楽を味わうことができるのではないでしょうか。 (文・内田夏殻)
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