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第18回ショパン国際ピアノコンクール特集<2次予選>

第18回ショパン国際ピアノコンクール特集<2次予選>
 10月3日からポーランドのワルシャワで開催中の第18回ショパン国際ピアノコンクール。1次予選予選が終了し、次の日本人コンテスタント8名を含む45名が2次予選に進みます。(詳細はこちら)今回の特集では、2次予選の課題曲をご紹介するとともに、ショパンの作曲した各ジャンルについての解説もお届けします。 <1次予選通過者(日本人)> 牛田智大 京増修史 小林愛実 沢田蒼梧 進藤実優 角野隼斗 反田恭平 古海行子 (五十音順)  開催中、全ての演奏はライブ配信され、アーカイブされます。ぜひ、チェックしてみてください。
大会スケジュール
2021年10月3日(日)~ 23日(土) 1次予選 1次予選 2021年10月3日(日)~7日(木) ◎2次予選 2021年10月9日(土)~12日(火) 3次予選 2021年10月14日(木)~16日(土) ファイナル 2021年10月18日(月)~20日(水) ※2021年10月21日(木)~10月23日(土)受賞者コンサート

課題曲

 ショパン国際ピアノコンクールの2次予選の課題曲は以下のように定められています。ちなみに、7月12日から23日まで行われていた予備予選では《バラード 第4番》が最も多く演奏されたそうです。ショパンコンクールでは課題曲が定められている分、同じ曲を別の人が演奏する機会が他のコンクールより起きやすくなります。曲順も演奏者自身が決定するため、同じ曲でも演奏者による演奏の違いに加えて前後にどんな曲を演奏しているのか、プログラム構成にも注目してみるのも面白いかも知れません。 以下の(1)~(3)は必ず含むこと。演奏時間内(30~40分)であれば(1)~(3)以外のショパンの作品を追加してもよい。 (1)以下の作品から1曲 バラード 第1番 ト短調 op.23 バラード 第2番 ヘ長調 op.38 バラード 第3番 変イ長調 op.47 バラード 第4番 ヘ短調 op.52 舟歌 嬰ヘ長調 op.60 幻想曲 ヘ短調 op.49 スケルツォ 第1番 ロ短調 op.20 スケルツォ 第2番 変ロ短調 op.31 スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 op.39 スケルツォ 第4番 ホ長調 op.54 ポロネーズ 第7番 変イ長調 op.61 「幻想ポロネーズ」 ※第1次予選でスケルツォを演奏した場合は別のジャンルから選択すること。 (2)以下のワルツから1曲 変ホ長調 op.18 「華麗なる大円舞曲」 変イ長調 op.34-1 ヘ長調 op.34-3 変イ長調 op.42 変イ長調 op.64-3 (3)以下のポロネーズから1曲 アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22 2つのポロネーズ op.26(2曲とも演奏のこと) ポロネーズ 第5番 嬰ヘ短調 op.44 ポロネーズ 第6番 変イ長調 op.53 「英雄ポロネーズ」

ショパン-その作品の即興性と民族性

 ショパンの生きていた19世紀半ばは、同時代人としてリストやメンデルスゾーン、シューマン、パガニーニ、ベルリオーズなどがいましたが、前時代に比べて《ピアノ・ソナタ》のようなかっちりとした形式のものはあまり作曲されていません。それよりは、キャラクター・ピース※のような小品が好まれる傾向にあったようです。ショパンは3曲の《ピアノ・ソナタ》を残しています。実際に当時から彼のソナタについて、4つの楽章が計画的に作曲されたというよりは4つの別々の曲の寄せ集め、つまりどこか無理やりソナタの形に当てはめたような印象をもつ人もいたようです。確かに《ピアノ・ソナタ》の中でも、ソナタ形式の楽章より、スケルツォなど自由の利く軽快な楽章の方がのびのびと作られているように感じられます。  やはりショパンの主戦場とするところは、キャラクター・ピース作品。以下のようなジャンルで様々な作品を作っています。 前奏曲(プレリュード) 24の調で作られています。別の曲への導入ではなく、それぞれが独立したごく短い作品となっています。CMなどによく使われている《第7番イ長調》や、《第15番変ニ長調「雨だれ」》が良く知られるところでしょう。 バラード もともとは歌曲の形式を表す言葉で、ショパンがピアノ曲として初めてタイトルに使いました。同郷の詩人、ミツキエヴィチの詩に霊感を得て作られたとも言われています。歌謡的な繰り返しを思わせる表現が多く見られます。 ノクターン “夜想曲”と訳される通り、夜の静寂を思わせる作品です。アイルランドの作曲家、ジョン・フィールドを継承したジャンルです。 練習曲(エチュード) 練習曲は普通、演奏技術の向上のために作られるものですが、演奏会で名人芸を披露する、技巧的作品として作曲されることもありました。どれもが細やかな速い曲というわけでもなく、《作品10第3番ホ長調「別れの曲」》のようなしんみりとした静かな曲もあります。 即興曲 もともとは、その場の雰囲気で、前もって準備されたものではないものを演奏する“即興演奏”で生まれた曲のことをこう呼びますが、ショパンにおいては、決まった形式のない自由なものにこの題名が付けられているようです。流れるような曲想が特徴と言えるでしょう。 マズルカ、ポロネーズ、ワルツ ともに舞曲の形式です。マズルカ、ポロネーズは、ショパンの祖国ポーランドの踊りです。この3つはともに3拍子ですが、リズムやアクセントにそれぞれ特色があります。  その他に、スケルツォや舟歌などがあります。これらの作品を見たとき、実に自由気ままに、感情のおもむくままに作曲していることがわかります。まるで詩や物語を紡ぐような即興的な作曲法から、“ピアノの詩人”と呼ばれるに至ったのでしょう。これには、若き日のショパンを育てた、ヨゼフ・エルスネルのおかげもありました。エルスネルは、弟子の良いところを伸ばし、自由に教育するという方針を持っており、ショパンはポーランドの民族舞踊の即興演奏をするなど、のびのびと教えられたようです。  その後、ウィーンなどを経てパリへ行った後、そのまま祖国へ戻ることはなかったショパンですが、その一方で、マズルカやポロネーズなど、故郷への憧憬とも思えるような作品を多く残しています。心のどこかでは、祖国ポーランドを想っていたのかもしれませんね。 ※キャラクター・ピース 性格的小品と訳される。特定の気分や情景を呼び起こす、自由な発想で書かれたピアノ小品のこと。 (文・一色萌生)

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