＜12月13日　高崎芸術劇場　ほか＞　1953年、ハンガリーのブダペストに生まれ、今や現代最高のピアニストのひとりとして知られるアンドラーシュ・シフは、1977年の初来日以来、日本のピアノ・ファンを魅了し続けてきた。 2008年12月から、2009年3月にかけて、NHK『スーパーピアノレッスン』の講師を務めたことでも知られている。1987年にオーストリアの、2001年にはイギリスの市民権を取得し、2014年にはエリザベス女王から「ナイト」の爵位を授与され、デトモルト音楽大学、ミュンヘン音楽大学などで後進の指導にもあたっている。
　近年のシフは、リサイタルで演奏する曲目を当日ステージ上でトークを交えながら発表するという独特のスタイルを採っている。穏やかな語り口と、美しいサウンドとで、この型破りにも見えるスタイルは多くのクラシック音楽ファンの支持を集めるにいたっている。
　もちろん本稿執筆時点での曲目は未発表だ。モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、ブラームスといった古典派・ロマン派の王道か、はたまたJ.S.バッハをはじめとするバロックか、あるいはバルトークといったハンガリーの作曲家の作品か……どんな作品が演奏されるかというワクワク感、そしてシフの紡ぎ出す美しい響きは唯一無二のものだろう。

＜文・加藤新平＞