＜2024年1月4日　兵庫県立芸術文化センター＞　ヴィルトゥオーゾとは音楽演奏において、特別な技巧や能力を発揮し、名人・達人の域に達した人物のことを意味するイタリア語。そんな卓越した演奏家たちを集めたら、一体どんな音楽が生まれるのか？ 日本のオーケストラが今、どれだけの音を作り出せるのかという可能性を求めて、日本中からコンサートマスターや首席奏者を集結させたのがジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラだ。
　1991年に作曲家・三枝成彰と指揮者・大友直人によって試演が行われ、翌年から本格的に活動を開始。以降、東京・名古屋・大阪で定期的に公演を重ねてきた。
　兵庫県では2013年から毎年、1月4日にニューイヤーコンサートとして演奏会を開催し、恒例行事として定着している。2024年は仕掛け人のひとり、三枝成彰作曲の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の《メインタイトル》で幕を開ける。アニメファンには嬉しいお年玉だ。指揮はもちろん、もうひとりの仕掛け人・大友直人。
　続いては繊細さと力強さを兼ね備え、若手とは思えない安定感を見せる服部百音をソリストに迎えてのサン＝サーンスの《ヴァイオリン協奏曲 第3番》。時のヴィルトゥオーゾ、サラサーテに献呈された作品だけに、服部の熱演が楽しみだ。　最後はベートーベンの《交響曲第7番》。各楽章ごとの表情の違いが際立つ作品だが、浮き立つようなリズムの饗宴、第4楽章は、年の初めにふさわしい。
　演奏前には三枝のプレトークもあり、この稀有なオーケストラの興味深いエピソードも聞けそうだ。

＜文・小出和明＞