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番組ファンから~ピアニスト 清塚信也さん<前編>

©hijika
クラシック・ピアニストの枠にとどまらず、映画やドラマの劇伴音楽を手がけ、俳優としても活躍するなど、いくつもの顔を持つ清塚信也さん。Eテレ「ららら♪クラシック」では、独自の視点で名作曲家たちの内面に迫り、知られざる一面を紹介。番組に初登場し、ショパンとリストのライバル関係をドラマティックに紐解いた「ショパンとリスト~清塚信也が語るライバル物語~」(2018年8月10日放送)は大きな反響を呼んだ。

偉大な作曲家たちの人間味を伝えたい

「企画を詰める段階で、メンデルスゾーンやシューマンも含めた19世紀ロマン派の作曲家たちの関係性についてお話しさせていただく中で、ディレクターさんがショパンとリストのライバル関係に照準をしぼってくださった。“ライバル”という、やりようによってはネガティブに映るかもしれない話題を代えがたい友情の物語として昇華させ、非常に面白いところを突いてきたな、と感じましたね」 11月23日放送の「清塚信也のピアノ名曲集 愛を奏でて」では、ベートーベン、ショパン、メンデルスゾーンの名曲に秘められた愛の形を解明。 「誰のどんな愛を取り上げるかは、僕の知っているクラシックラブストーリーの中から選びたいということで、また一段とクセのある愛の回になりました。司会の高橋克典さんが、『“ららら♪クラシック”じゃなくて、“あらら♪クラシック”なんじゃない?』とおっしゃっていましたが(笑)、それぐらいウィットに富む回になったのではないかと思います」 いずれの回も、クラシックへの愛情を土台に新たな発見を散りばめた清塚さんの人間味あふれるトークにひきこまれる。 「歴史が深いクラシックにまつわる物語は、作曲者への尊敬と“大切に伝えなくては”という思いから神格化したり美談になったりしがちです。でもそうすると、クラシックにあまり馴染みのない人は、クラシックを恐れ多いものに感じたり、敷居があがってしまったりすることがあると思うんです。彼らがすごいことは曲を聞いてもらえば十分わかるので、僕はあえて“意外と人間的なんだよ”、という親しみのわくエピソードを話すようにしてるんです。その場で気付いたこともたくさん話しましたし、何をどうピックアップして番組を構成するかなど、僕にとってもすごく勉強になっています」

音楽のせいでつらかったけれど、救ってくれたのも音楽だった

幼い頃、弾き手のいない古いアップライトピアノがおもちゃ代わりだった清塚さんが、本格的に音楽に触れ始めたのは3歳のとき。母に連れられ、2歳上の姉が通う音楽教室の授業を見るうち、いつの間にか音楽の基礎を身につけてしまったそうだ。 「ある日、僕がみんなを真似て、音を聞いて五線紙に書き取る聴音をしていたら、完璧に正解だったらしくて。『これはモーツァルト以来の才能か!?』と勘違いした母が(笑)、5歳の僕にピアノの英才教育を受けさせることにしたんです。姉に定まっていた照準が自分にも向いてしまい、当時の僕にとって不幸な日々が始まりました」 ユーモラスに振り返るものの、遊びの時間はもちろん、学校の勉強や睡眠時間をも削り、ピアノの上達を最優先とするスパルタ教育は、遊びたい盛りの少年にとって酷だったことは想像に難くない。14歳にして第50回全日本学生音楽コンクール全国大会中学校の部で1位になるなど輝かしい経歴の裏で、青春のすべてを音楽に捧げる日々は苦悩と背中合わせだったようだ。 「ピアニストとして生きていくためにはこのコンクールに出て、ああしてこうして…という親や先生が敷いたレールに僕の意思が入る余地はありませんでした。僕自身、それ以外にやってきたこともできることもなく、ピアノ以外に何かをやるという想像すらつかなかった。環境的要因からくる消去法で、これをやっていかなきゃなっていう思いがあったと思います」 名門高校の音楽科を首席で卒業した後は、モスクワ音楽院に留学。ピアニストを目指す道のりに「自分自身の意思としてのアイデンティティが重なったのはそのとき」と明言する。 「何ごとも“突き詰める”というのは難しく、非常に悩んだ時期もあったんですが、何かの道でプロになるというのはこういうことなんだなと思ったら、今さら下山して別の山を登る気にはなれなかった。音楽のせいですごくつらかったけれど、それを救ってくれたのも音楽でしたしね。ならば自分で自分のために、自分を慰めるような曲を作曲しようと決意してやり始めたら、音楽が本当に楽しくなりました」

真剣な音楽を届けるには、演奏する人がポップでなくては

そんな清塚さんが感じる、クラシック音楽の魅力とはなんだろう? 「ホントにたくさんあるんですけど、一番に言えるのは、クラシックはとても真剣な音楽であることです。クラシックが生まれた100年前、200年前は戦争や病気で人間の寿命も長くなく、今のように快適な時代ではありませんでした。そういう時代の音楽だからこそ表現も真剣で、現代に生きる僕らが人生で真剣に悩んだり落ち込んだりしたときに、同じくらい、もしくはそれ以上の真剣さで語りかけてくれる。そんな音楽がそばにあるというのは、僕らにとって大きな強みだと思うんです。だからどんなにつらいときでも、最終ラインには必ずクラシックが心のよりどころとしてあるんだと思っていてほしいですね」 ただし、と清塚さんは続ける。 「それには、演奏する人がポップにならないといけないと僕は思うんです。音楽が真剣で、演奏する人も真剣すぎるとそれは今の時代に合っていなくて、『マジメか!』って言われるので(笑)。今、真剣な音楽をポップにお届けできるコンサートがとても増えているし、『ららら♪クラシック』もそんなエッセンスのある番組ですよね。もちろん、僕自身もそういうコンサートづくりを心がけています。そんな番組やコンサートでクラシックの魅力に触れて、より親しみを持って聞いていただければと思います」 インタビュー後編では、人気ドラマの劇伴音楽を手がけた背景や、クラシック・ピアニストとしての清塚さんの意外な一面、最新アルバムにまつわるディープな解説をお届けする。(文・浜野雪江)
ニューアルバム『connect』(12月12日発売)
■清塚信也(きよづか・しんや) 5歳よりクラシックピアノの英才教育を受ける。中村紘子、加藤伸佳、セルゲイ・ドレンスキーに師事。桐朋女子高等学校音楽科(共学)を首席で卒業後、モスクワ音楽院に留学。2000年第1回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 第1位、2004年第1回イタリアピアノコンコルソ金賞、2005年日本ショパン協会主催ショパンピアノコンクール第1位など、数々の賞を受賞。人気ドラマ「のだめカンタービレ」にて玉木宏演じる「千秋真一」の吹き替え演奏を担当し、脚光を浴びる。ポーランド国立放送交響楽団など国内外の数多くのオーケストラとの協演する傍ら、知識とユーモアを交えた話術と繊細かつダイナミックな演奏で全国の聴衆を魅了し、年間100本以上の演奏活動を展開。2018年のコンサートツアー(全国8ヶ所11公演)では全国完売となり大盛況のうちに終わる。 2013年には映画『さよならドビュッシー』で岬洋介役として俳優デビューし、2015年9月公開映画「ポプラの秋」ではメインテーマおよび劇伴音楽の作曲&演奏を手掛け、TBS系 金曜ドラマ『コウノドリ』(2015)(2017)ではピアノテーマおよび監修を手掛けるほか、役者として出演も果たす。2017年1月公開映画「新宿スワンⅡ」、2018年5月に東京・日生劇場ほかで開催した舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」で劇中音楽を担当するなど作曲家としても活動の幅を広げ、『Fantasy on Ice』(2017)(2018)では、世界的なフィギュアスケーターと共演するなどマルチピアニストとして活躍。 2016年発売のアルバム『KIYOZUKA』がBillboard Japan「クラシック部門1位」を獲得。2017年発売のアルバム『For Tomorrow』もオリコン・ウィークリー・ランキング「クラシック部門1位」を獲得。2018年12月12日ニューアルバム「connect」を発売。 オフィシャルサイト 清塚信也コンサートツアー2019 connect ニューアルバム『connect』  

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