11月13日の放送は、「ハチャトゥリヤンの魅力」でした。ハチャトゥリヤンは20世紀に旧ソ連で活躍した作曲家です。今回は番組の中で紹介されたハチャトゥリヤンの『ヴァイオリン協奏曲第1楽章』と『仮面舞踏会』から「吟遊詩人」をキーワードとして選んでみました。
「吟遊詩人アシュグ」
サズ
ハチャトゥリヤンのルーツ、アルメニアを含む多民族の交差点・コーカサス地方にはアシュグと呼ばれる吟遊詩人がいました。諸国を旅し、ネックの長い弦楽器サズやタール、カマンチャイを弾きながら詩を即興的に歌いあげる彼らの姿は、ハチャトゥリヤンの原風景だと言われています。生命力溢れる民族のリズムはもちろん、幼年時代に受けたアシュグの強い印象から、作風に民族調を色濃く残したハチャトゥリヤンは、ピアノとヴァイオリンのための「ソング=ポエム」や「ピアノ協奏曲」、そして「ヴァイオリン協奏曲」を残しました。アシュグの原風景は『仮面舞踏会』の中にも現れます。管弦楽組曲の第4曲「ロマンス」は劇中で毒殺される妻ニーナの歌ですが、不安定なメロディーで失われた愛を歌いあげる様子はアシュグさながらと言えます。