9月25日の放送は、2019年5月10日に放送した「Road to ベートーベン(1) 楽聖を育てた街 ウィーン」の再登場でした。その中で紹介されたベートーヴェンのウィーン生活エピソードから「ベートーヴェンの暮らし」をキーワードとして選んでみました。
引越し
ウィーンでの引越し回数が多いのは、創作活動ゆえ、騒音で隣人トラブルを引き起こしたり、部屋を極めて不衛生な状態にして大家から退居させられたといった事情からと伝えられています。生涯で引越し回数79回とのことですが、同時にそれは創作した作品総数を考えれば納得できる数字でしょう。Opus番号が付与されているものだけでも138曲、未完成作品に付与されたWoO番号やHess番号の作品を含めれば400曲にのぼります。精力的な創作活動は、当時の楽器にない音域まで追求し、楽器の発展にまで影響を及ぼしたほどですから、創作できる環境をその折々で選んでいっただけだったのかもしれませんね。
ワイン
温泉療法、飲泉療法による体調回復を医者に薦められたことから始まったベートーヴェンの保養地滞在。難聴、腹痛、痛風、肝硬変、そしてリュウマチ。大作曲家の身体は、さながらアルコール接種に起因する病気のデパートのようでした。当時のワインに甘味料として用いられていた酢酸鉛、川魚に含まれる水銀、飲泉療法で服用した鉱泉水、鉛成分を含む肺炎治療薬。こうした鉛成分が体内に蓄積されると、けいれん性の腹痛、嘔吐、関節炎、白内障などの中毒症状を引き起こすのだとか。27歳頃から始まった聴覚障害が鉛中毒に関わりがあるとは言い切れませんが、甘口ワインの大小ボトルを168本も注文していたという逸話を振り返ると、作品を完成するため体調不良と痛みを飲酒でごまかしていたとしても、頷くほかありません。
典拠:
レファレンス協同データベース
(文・武谷あい子)