9月11日の放送は「チャールダーシュ〜哀愁と情熱の不思議〜」でした。チャールダーシュの起源や音楽作品との関わりをまとめました。
居酒屋憩いのダンスミュージック
ららら♪クラシックでは、“芸術音楽”に焦点を当てることが多いですが、このチャールダーシュは、もともとは酒場などで演奏される、大衆音楽が起源となっています。19世紀、当時はオーストリア=ハンガリー帝国の一部だったハンガリーですが、民族意識の高まりから自分たちの国の歌と踊りに対する愛情も芽生えました。国の兵士を集めるための行事で踊られた踊り“ヴェルブンコシュ”は若者たちを魅了し、志願兵も多くなったとか。今でいうストリートダンスのような位置づけだったのでしょう。もともと男性の躍りであったヴェルブンコシュは、居酒屋(チャールダ)で多く踊られ、農民や男女問わず浸透し派生していきました。こうして、チャールダーシュが生まれました。
チャールダーシュに魅了された作曲家たち
チャールダーシュには、独特の緩急の付け方があります。はじめに哀愁を帯びた緩やかな部分があり、そしてそこから徐々に情熱がほとばしり急速になっていく。まさに人間の感情に訴えかけ、テンションの上がる音楽なのです。
かっちりとしたテンポで堂々と演奏されることの多いクラシック音楽ですが、その作曲家たちも、チャールダーシュに刺激されました。一番有名な“チャールダーシュ”は、イタリアの作曲家、モンティのものでしょう。技巧を凝らしたヴァイオリンは、演奏会はもちろん、結婚式やパーティなどでも場を盛り上げるのに最適。同じくヴァイオリンの技巧を存分に魅せるフバイ《チャールダーシュの風景》も番組で紹介されました。チャイコフスキーの《白鳥の湖》やヨハン・シュトラウスの《騎士パスマン》の中にもチャールダーシュは取り入れられています。ブラームスの《ハンガリー舞曲集》もチャールダーシュのエッセンスをそのままクラシック音楽にしたもの。特に有名な第5番も、もともとあった“チャールダーシュ”を編曲したものです。ハンガリー出身の作曲家、リストもまた《ハンガリー狂詩曲》でチャールダーシュの要素を多く取り入れています。
クラシックの音楽家が大衆音楽や民謡を取り入れた例というのは、チャールダーシュに限らず世界に多く見られることです。そういった音楽を探して、そのもとになった音楽とともに聴いてみるのも面白いかもしれませんね。
(文・一色萌生)