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生まれついてのピアニスト 實川風の流儀

 「人はみんなピアノを弾いているのだと思っていた」という生まれついてのピアニスト、實川風(じつかわ・かおる)さん。難易度は東京大学をも超えると言われている国内最高峰の音楽教育機関、東京藝術大学附属高校および東京藝術大学を首席で卒業後、2015年には国際コンクールの代表格であるロン=ティボー=クレスパン国際コンクールにおいて第3位(1位なし)、最優秀リサイタル賞、最優秀新曲演奏賞を受賞。他に類を見ない輝かしい経歴を持つ實川さんですが、その人柄は自然体。クラシック音楽やピアノの魅力から“ピアニスト”の普段考えていることまで、さまざまな角度からお話を伺いました。
©T.Tairadate

憧れの音色を自分のものに

――どんな世界のプロフェショナルでも「初めての時」はあるものですが、實川さんとピアノとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。 楽器を弾く人は身近にはいなかったのですが、父親がクラシック音楽好きで、オーディオ関係やレコード収集に凝る人でした。そんな環境だったので、両親は子供が小さいうちに何か楽器を始めさせたいと考えていたようで、最初はヴァイオリンの先生を探していたらしいです。ただ、なかなか先生を見つけることができず、まずはピアノを始めることになりました。3歳の時にピアノの先生の教室に連れて行かれたのが始まりです。当時のことはよく覚えていないのですが、最初は全く落ち着きがなく、ピアノの前に30秒座っていることもできないような子供だったらしいです。
 
©T.Tairadate
――それは意外です、最初からピアノに夢中だったわけではなかったのですね。そうすると、物心がついた時にはいつの間にかピアノをやっているという状態だったのでしょうか。 そうですね、両親に上手いこと刷り込まれたと言いますか、毎日歯を磨くのと同じように、ピアノの練習も毎日行う生活習慣の一つのようになっていました。自分だけではなく、周りの子たちもピアノをやっているのだと思っていたらしく、友達とバイバイするときには「〇〇君も練習頑張って!」と言っていたとか。「人は皆ピアノを練習しているのだ」と本気で思っていたみたいです(笑)。 ――全員がやっていると思っていたとは、ご両親の作戦勝ちですね(笑)。そんな實川少年がピアニストを目指そうと思ったのはいつだったのでしょうか? 小学校の卒業文集には「将来の夢:ピアニスト」とは書いていました。もちろんまだまだ漠然とした夢の世界でしたが、その頃からステージでピアノを弾きたいという思いはありましたね。 ――その頃はどんな曲を弾いていましたか? ショパンのスケルツォ第2番に憧れて、最初にトライしたのが小学校5年生くらいの時でした。ちゃんと弾けてはいなかったのですが、挑戦してみました。 ――その年齢で“スケ2”とは恐れ入ります……。憧れというのは、誰かの演奏を聴いてとか好きだったCDとかがあったのでしょうか? ちょうどその頃、2000年のショパンコンクールがあったんです。ユンディ・リが第1位、第2位にイングリット・フリッター、第3位にアレクサンデル・コブリンという回でした。音楽雑誌に掲載されているコンクールのレポートを読んだり、入賞者のCDを家で聴いたりしていました。今思うと若気の至り全開ですが(笑)、スケルツォ第2番のようなかっこいい曲への憧れが強かったです。いわゆるテンポが速い、技術的に難しい曲です。
©Hiromi Nagatomo
――ピアニストになれる、と確信が持てたのはいつだったのでしょうか? 藝大の附属高校には入りましたが、どうすればピアニストになれるのかは、いまいちよく分かっていませんでした。毎週先生のところにレッスンに行って、コンクールを受けて試験を受けて……という生活だったので、ピアニストになれる実感はなかったですね。 そのうちにコンクールで賞をいただくようになり、演奏会というものが少しずつ増えきました。それに伴って、大学に入ってからでしょうか、ピアニストを目指すという覚悟を徐々に持つようになってきました。その頃には「引き返すことのできない世界に足を踏み入れたぞ」とも気づきました。まだまだ確信は持てませんでしたが、日々の練習を自覚を持ってできるようにはなってきました。 ――背水の陣だったのですね。身近にピアニストはいなかったとのことですが、憧れていた方はいらっしゃいますか? 初めて直接お会いして影響を受けたピアニストが、ショパンコンクールの優勝者でもあるダン・タイ・ソン先生です。小学校4年生の時に公開レッスンを受ける機会がありました。それから家族でダン・タイ・ソン先生のリサイタルにも行きました。プログラミングがとても凝っていて、武満徹の作品やドビュッシーの前奏曲集第2巻などで構成されていたのを今でも覚えています。当時は作品自体はあまり理解できていませんでしたが、厳かで透明感のある音色作りが、印象深い記憶として残っています。 ――その音色には影響を受けていますか? そうですね。ダン・タイ・ソン先生の音色はもちろん、音楽への接し方にも大きな影響を受けました。年齢が上がるにつれて、いわゆるロシアンピアニズムに見られる重厚で立体的な音作りに心惹かれるようになり、ネイガウス、リヒテル、ギレリス、ニコラーエワなどの録音をよく聴くようになりました。そんな簡単に真似できるものではないのですが、どうやったら立体感のある音作りができるのか、と憧れを持ってトライしています。

ピアニストもトレーニング!?

――10月に出演される「ららら♪クラシックコンサート Vol.14」ではちょうどロシア作品であるチャイコフスキーの「ドゥムカ」を演奏しますね。ロシア的な音を出すためのタッチはどのように工夫されていたり学ばれたりするのでしょうか。
©T.Tairadate
ロシア的な音、というのを一括りに考えるのは難しいのですが、共通しているのはピアノの大きな響板を震わせきっているイメージがあります。すばらしいピアニストは「楽器と身体が一体化している」ように思います。腕や指の先に、直接ピアノのハンマーがあるのでは? と思ってしまうくらい、楽器と一体化していますよね。そういったピアニストの映像を見て真似をしてみることはもちろんしますが、やはり真似だけではなく、自分の身体をどう使ったらいいのか、色々と試しています。「腕の重さで弾きなさい」とはよく言われることですが、腕のみならず、身体の大きな部分である背中や腰からの体重をうまく乗せたり引いたりすることで、同じフォルテでもさまざまな種類の違う音色を出せると思います。指先だけの浅いタッチと、腰からゆったりとした重さをかけた深いタッチまで、色々と重ね合わせるようにしています。 ピアノという楽器は、演奏者によって音色がまるで変わるのが不思議ですよね。なかなか説明の難しいことではあるのですが、その人がどのように身体を使っているか? ということが音色の多彩さに反映されると思っています。音色の種類への欲求を持ち始めてから、だんだんと音色の引き出しが増えている感じはします。 ――身体の使い方というと、椅子の種類や高さにもこだわりが出てきますか? 種類はある程度ふかふかでお尻が痛くならなければ大丈夫なのですが(笑)、高さに関しては試行錯誤している時期がありました。すごく高くしてみたり低くしてみたり。それでも、最近はほぼ同じ高さに安定してきました。多少高低が合っていなくても、自分の身体の位置をピアノに対していいポジションにもっていくこともできるようになりました。前より神経質にはならなくなってきたような気がしますね。 ――トレーニングは何かしていますか? この数年、バッティングセンターにはまってしまっています。野球はもともとすごく好きなスポーツで少年野球チームに入りたかったくらいでしたが、指も危ないし時間も取られるし……ということでできませんでした。大人になってから始めてみると、バットを振る動作ってなかなか筋力がいるんですよ。先端が重いバットを力強く振るには、想像以上に力が必要でした。バッティングセンターに行くと、毎日通い詰めているような、ものすごくうまい人がいるんですよね。スイングも打球も速くて安定している。そういう人にとにかく憧れてしまって(笑)、いろいろと筋トレを試しました。 その結果、バッティングでたくさん使う下半身や腰回りの体幹に筋肉がついたようで、ピアノを弾くときにも姿勢が安定してきて、以前よりもどっしりと構えて弾くことができるようになったんです。コンチェルトを演奏する時にも、大きな力強い音が楽に出るようになりました。バッティングである必要はないと思うのですが、演奏家も運動をするのはとても良いことだと思います。

コンクールの意味

――「ドゥムカ」とはずいぶん長い付き合いなのだとか。どんな曲なのでしょうか? ドゥムカは「哀歌」という意味なのですが、さらにサブタイトルに「ロシアの農村風景」とあります。僕のイメージでは厳しい冬の農村から物語が始まります。極寒の季節に家の中でウォッカを飲むおじさんの歌……悲しさや、やるせなさがそこはかとなく広がっていきます。中間部はテンポを上げて、お酒の力で元気になった人々が無骨なダンスを踊り始める。外を見ると、しんしんと降り注ぐ雪であったり、地鳴りのような猛吹雪が吹いたりと、さまざまな冬の情景が広がっています。オペラやバレエ音楽を切り取ったような世界が、8分くらいの間に次々と展開していく。コンクールだったりコンサートだったり、演奏するたびに新しい風景が見える曲です。
©Hiromi Nagatomo
――ロン=ティボーでも演奏されていましたが、ご自身のレパートリーのレギュラーでしょうか。 ロン=ティボーでは他のプログラムとの兼ね合いもあったのですが、本当に大好きな作品で、これまでに色々な場所で弾いてきました。 ――「ドゥムカ」を入れたプログラムで見事第3位入賞されましたね。当時の感想を教えてください。 ロン=ティボー・コンクールは、ファイナルが2ステージあって、まずは60分のリサイタル、中1日開けてコンチェルト1曲という構成だったんです。それで、初日のリサイタルはある程度は満足に弾けて、リサイタルステージでは1位をいただきました。 コンチェルトは2曲を提出し、セミファイナル終了時に1曲を審査員が指定するという形式だったんです。僕はベートーヴェンの第3番とプロコフィエフの第1番を提出していたのですが、1次予選からの膨大な曲の準備にかかりきりで、プロコフィエフだけは、まるで準備が足りていない状態だったんです。そんな状態だったので、審査員が曲目を発表する際には「ベートーヴェンよ、来い!!」と心からのお祈りをしていたのですが(笑)、そういう時こそ神さまが見ていると言いますか、プロコフィエフに決まりました。コンチェルトまでの2日間を猛練習に費やしたのを覚えています。 ――勝負の世界は厳しいですね。ロン=ティボーの前後でご自身に変化はありますか? また、ピアニストにとってコンクールを受けるということにはどんな意味合いがあるのでしょうか。 自分が大学生の時にはコンクールの意味はそんなに理解できていなかったと思います。「賞を取ったらどういう世界が待っているのか」ということは、意外とコンクールを受けている人はあまりイメージできていないかもしれません。まずは賞をいただくことを目標にしていると言いますか。取った先のことにまで想像を巡らすのはなかなか難しいことだと思うのですが、コンクールは皆さんに聴いていただくためのスタートラインの一つ、ということをよく理解してないと、燃え尽きてしまいそうでちょっと怖いですよね。 その先の長い人生では、コンクールという判断基準が無い中での演奏が続いていきますし、人と比べてどうこう、という性質のものではなくなるからです。これは、むしろコンクールが異質なのかもしれないです。 僕が師事していた多美智子先生は、コンクールや賞とは関係なく、一生をかけてどのように目の前の楽譜や作曲家に向き合い続けるかという姿勢の大切さを、口を酸っぱくして教えてくださいました。「自分が自分の一番の先生でなければならない」や、「品格を大事にしなさい」などなど、生涯にわたる大事なことを先生はおっしゃってくださったんだなぁ……といつも思います。それもあって、コンクールで賞を取った後でも、特に何かが変わったとは感じずに済んだように思います。続けてきたことを評価していただいて、まだまだそれを続けていくだけだな、というイメージですね。

コンサートの楽しみ

©T.Tairadate
――ここからはクラシックのコンサートについてお話を伺っていきます。まずそもそもの疑問として、クラシック音楽の世界では何百年も昔の作品を演奏し続けるのはなぜなのでしょうか? そこが他の音楽ジャンルとの大きな違いだと思いますが。 それは悩ましいところではあって、最近はYouTubeなどもこれだけ流行ってきましたし、一個のコンテンツやイベントに割く時間がどんどん短く、スピード感が上がっているように感じています。これは僕もそうなのですが、動画が15分も続くと「ちょっと長いな……」と思って、つい飛ばしてしまいますし、スピーディに新しいものを追い求めることが習慣になっている時代に、果たして昔の音楽を30分かけて演奏したとしても、その時間を一緒に共有してもらえるだろうか、と心配になってくることもあります。 ただ、その心配とは逆の楽天的な気持ちもあるんですよね。例えば、ベートーヴェンが怒りや喜びなどの感情を、とことん煮詰めて煮詰めて叩きつけたような音楽、そういった根本的な人間の気持ちを描いているというのは、今の音楽も昔の音楽も変わらないと思うので、その中身が届かなくなることはないんじゃないか? とも感じますし、それが時代のスピード感と必ずしも同じではなくても、心が震える体験を生むことはできるのではないか、と思っています。 ベートーヴェンやラフマニノフを聴いていても、いわゆるグルーヴ感というか、原始的な快感や快楽がありますし、長い年月を演奏されてきた作品というのは、例えばベートーヴェンの《熱情ソナタ》にしても、ショパンの《葬送ソナタ》にしても「演奏家も聴衆も、心震える最高のドラマである!」というお墨付きが既にある曲ということでもあるんですよね。なので、それらの魂に近づきながら演奏をしていくことは、十分価値があることだと思います。 ――“レシピ通りに作ったら美味しい”とわかっていれば食べた方がいいですよね。 そうですね。あとはちゃんとそのレシピを、細かなところまで継承していくことが大事かなと。大作曲家が残した秘伝のレシピを、これからも残していけたらと思いながら続けています。 ――コンサートに行かなくてもそれこそYouTubeで聴けると思う方もいるかもしれませんが、録音されたものと生のコンサートとの違いはどのあたりにあるとお考えですか? まず全く違うのは音響の面ですね。会場で聴くというのは、楽器の振動が空気を伝わって、ホールの壁も共鳴して、倍音や演奏者の息遣いなどの色々な音が空気を振動させて、最後にお客さんの全身を震わせる体験だと思うのですが、録音物はどうしてもマイクを通して収録した音を、もう一度スピーカーの振動に置き換えて聴くことになるので、体験としてはかなり変わるんじゃないでしょうか。もちろん、演奏者の音楽の運びやタイミングは分かるので、録音を聴くのも楽しいことではありますが、やはり楽器の振動がダイレクトに身体に届くのは、より強い体験だと思います。 それに、コンサートって良くも悪くも、何が起こるのかわからないというスリルがありますよね(笑)。演奏家もそうですが、お客さんの側にとっても一度きりの代え難い経験ではないかと思います。僕自身も、聴く立場の時はそのあたりも楽しみの一つです。 ――初めて行った生のコンサートのことは覚えていますか? 初めてチケットを買ったコンサートか定かではないのですが……印象に強く残っているのは、高校生の時にプロコフィエフばかり聴いていた時期があって、どうしても彼のシンフォニーを聴きたくて、学生券を買って第5番の交響曲を聴きに行きました。その頃はオーケストラを聴くことも多くはなかったので、パーカッションや金管楽器の厚みに圧倒されて、ピアノ一台とはまるで違う、オーケストラのサウンドの情報量に衝撃を受けました。 ――普段からコンサートに備えて練習をされていると思いますが、本番との違いはありますか? 練習はどこまで行っても練習と言いますか……、例えばいくら淀みなく弾けるように工夫して準備をしていたとしても、やはり本番が来ないと何も完結しない。練習でどれだけ上手くコントロールできていても、「本番の演奏では何ができたのか?」という部分が完了しない限り、最後のピースがはまった感覚がありません。練習は、表現のパレットを増やすために準備をする時間とでも言いましょうか。練習自体が喜びになる部分も無いことはないですが、コンサートが控えている状態での練習は、大きな喜びには繋がらないですね。逆にいうと、特にコンサートで弾く予定のない作品をパラパラ練習しているのは、ただただ楽しいです(笑)。 そんなわけで、うまく歯車が噛み合って良い状態で演奏ができたらそれは代えられない喜びですし、あまり噛み合わなかった日は、何か練習に難があったのか、体調管理がまずかったのかなど、反省もしながら続けていくという日々です。無意識のプレッシャーはありつつも、お客さんがいる時にしか出てこないインスピレーションというものもたくさんあって、本番が終わってみると弾いてよかったな、と思います。 ――孤独な戦いが伝わって来ました。演奏する時に大切にしていることは何ですか? まずは作品のすばらしさを、聴いてくださる方と共有できる演奏が一番だと思っています。その先に、その世界を伝達してくれた實川さんもいいね! と思っていただけたら、なお嬉しいですね。この曲を知っていたけどもっと好きになりました、知らない曲だったけどすごい曲ですね、なんて感じていただけたら最高です。 僕が弾きたい曲は、なんといっても敬意を持って大好きだと感じられる曲。それを皆さんに共有して、お客さんの心も動かして、一緒に一つの空間で同じ音楽の世界に浸る体験ができたらいいなと思っています。作曲家の音楽を、理屈だけではなく、体感や体験として良かったな、と思ってもらえたら理想です。
©林喜代種
――コロナ禍で本番がなかなかない状況だとジレンマがあったのではと思います。 2年前の影響が深刻だった頃、3~4か月間はコンサートが全て中止になりました。本番に向けてエネルギーを溜めていたのがスパッと絶たれてしまったので、なんとも空虚な、寂しい気持ちだったのを覚えています。あまり練習する気持ちも湧かなかったので、好きな曲を時々弾きながら過ごしていたように思います。 ――溜めて溜めての最初のコンサートは嬉しかったでしょうね。 舞台に立った嬉しさもありましたし、なんだか不思議な感覚がしました。人前にいる状態が久しぶりだったので。 ――ピアノの良さはどんなところだと思いますか? 一人で、同時に様々な要素を表現できるところでしょうか。メロディーを弾きつつベースのラインも作り、内声のタイミングや呼吸もコントロールしながら、一人で音楽の世界を描き出せるのが魅力ですね。反面、そこがこの楽器の難しいところでもあるのですが……。僕はオーケストラがとても好きで、一人では到底表現しきれない音楽への憧れも強いのですが、ピアノソロのすばらしさは「この人はどういう人で何をしてくれるのか」という、個人のパーソナリティが浮き出て、個人の能力の限界を試すようなところにあるのではないかな、と最近思います。“ピアニストが一人だけで到達した音の世界”も魅力的ですよね。 また、これはいろんな楽器の人とアンサンブルをするようになってから気付いたのですが、ピアノソロのコンサートって、一人で黙々と部屋にこもって練習して、一人で2時間の本番を体力勝負で弾いて、終わった後も演奏の喜びを分かち合えるのは一人、ずっと一人という(笑)。 ――そうやって積み重ねて、本番が終わった後に必ずすることはありますか? 必ずではないですけど、ビールは抜群に美味しいです(笑)。 ――長い時間ありがとうございました。最後に、「ららら♪クラシックコンサート Vol.14 クラシック界 期待のヴィルトゥオーソ~国際コンクールの受賞者たち~」に興味を持ってくれた方へ、会場周辺のお話もお伺いできれば。東京文化会館は実川さんが10年間過ごした東京藝術大学と同じ上野公園にありますが……。 学生の頃は、美術館や博物館も集まっているという立地を、そこまで恵まれていると感じられていなかったのですが、今にして思えばとても素敵で貴重な場所に通っていたんだなあと思います。この先も大事に守っていってほしい場所です。 僕が高校生の頃はベンチもあまりなく、ほとんどが森といいますか、今みたいには整備されていなかったんですよ。その後公園に傾斜がついたり立体的に植物を植えたりして、すごく綺麗に整備されたんですよね。ただ歩いていても気持ちいいです。上野公園を抜けて不忍池まで足を伸ばすのもおすすめです。弁天堂にお参りして、ボーっと池を眺めるのもいいですよ。このコンサートの頃は散歩にいい時季ですので、上野の街も楽しみながらぜひいらしてください。 (取材・文 坂井孝著)

今後の公演情報

■ららら♪クラシックコンサート vol.14 出演決定!

クラシック・キャラバン2022
クラシック音楽が世界をつなぐ ~輝く未来に向けて~
「煌めくガラコンサート」 Save The Young Artists

日時 9月18日(日) 15:00開演(14:15開場)
会場 静岡市清水文化会館 マリナート
出演 [ヴァイオリン]村田夏帆 [ピアノ]實川風 [チェロ]水野優也 [管弦楽]堀正文&N響スペシャル・アンサンブル [管弦楽]原田幸一郎&STYAアンサンブル [合唱]東京混声合唱団 [司会]松村雄基
プログラム ビゼー(ワックスマン編):カルメン幻想曲   ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調 《ます》より第4楽章、第5楽章 ヴィヴァルディ《四季 ヴァイオリン協奏曲》より〈春〉〈秋〉 オルフ:《カルミナ・ブラーナ》より〈おお、運命の女神よ〉 モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス 他
チケット 全席指定 S席3,500円 A席2,000円 B席1,500円 学生1,000円 小中高生500円
詳細 こちらから
お問い合わせ 株式会社アスペン TEL:03-5467-0081

實川風ピアノリサイタル

日時 11月23日(水・祝) 13:30開演(12:45開場)
会場 熊本県立劇場
チケット 全席指定 SS席4,000円 S席3,500円 音大生/高校生以下 各1,000円割引 ※当日500円増
詳細 こちらから
お問い合わせ 大谷楽器 TEL:096-355-2248

ワンコインマチネvol.46~實川 風(ピアノ)~

日時 12月9日(金) 11:30開演(11:00開場)
会場 上田市交流文化芸術センター サントミューゼ
チケット 全席指定 500円 ※10月17日(月)10:00~発売
詳細 こちらから
お問い合わせ 交流文化芸術センター TEL:0268-27-2000(9:00~17:00)

名曲リサイタル・サロン 第22回 上野通明

日時 2023年1月25日(水) 11:00開演(10:30開場)
会場 東京芸術劇場 コンサートホール
チケット 全席指定 2,400円
詳細 こちらから
お問い合わせ サンライズプロモーション東京 TEL:0570―00―3337(平日12:00~15:00)
實川 風(Kaoru Jitsukawa) 2015年、パリのシャンゼリゼ劇場で行われたロン=ティボー=クレスパン国際コンクールにて、第3位(1位なし)、最優秀リサイタル賞、最優秀新曲演奏賞を受賞。2016年、イタリアで行われたカラーリョ国際ピアノコンクールにて第1位・聴衆賞を受賞。現在、日本の若手を代表するピアニストの一人として、国内外での演奏活動を広げる。 ソリストとしてベートーヴェンを核とした本格的なレパートリーに取り組む一方、邦人作品の新作初演などでも作曲家より信頼を寄せられている。 海外の音楽祭への招待には、上海音楽祭、ソウル国際音楽祭、ノアン・ショパンナイト(フランス)・アルソノーレ(オーストリア)などがある。 東京藝術大学附属高校・東京藝術大学を首席で卒業し、同大学大学院(修士課程)修了。山田千代子、御木本澄子、多 美智子、江口玲の各氏に師事。グラーツ国立音楽大学ポストグラデュエート課程を修了。マルクス・シルマー氏に学ぶ。 實川風オフィシャル・HP 實川風オフィシャル・Twitter

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