<7月23日 北海道・札幌コンサートホールKitaraほか>パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(以下、PMF)は1990年にレナード・バーンスタインによって創設された国際教育音楽祭である。例年11月ごろからオーケストラ奏者のオーディションが始まり、夏のあいだ札幌を中心に数々のコンサートが繰り広げられる。
世界を代表する音楽家を教授に迎えた教育プログラムがこの音楽祭の核となっていて、選りすぐられたPMFオーケストラのメンバーが札幌に集い、切磋琢磨しあい、一体となって演奏を作り上げていく。世界トップレベルのユースオーケストラとも評され、若者らしいエネルギーに満ちた演奏は30年以上にわたって毎年人々に感動を与えてきた。今年は残念ながら海外から教授陣とオーケストラメンバーが札幌に来ることはできないが、国内で活躍するPMF修了生と昨年のオーディションに合格した国内在住のメンバーでPMFオーケストラJAPANが編成される。
今年も多彩なプログラムが組まれているが、特に注目すべき二人の若手指揮者をご紹介しよう。
1人目は原田慶太楼。先日東京交響楽団の正指揮者に就任したことで大きな話題となった。アメリカとロシアで学び、アメリカ、ヨーロッパ、アジアと幅広く活躍を続けている俊英である。
本サイトのインタビューでも "自分は音楽家としてボーダーレス" と語っているように、オーケストラ、オペラに留まらず、室内楽、バレエ、ポップス、ジャズなど、手がけるジャンルの幅広さも魅力のひとつである。また、YouTubeでの配信も積極的に行い、音楽家を招いて演奏動画を見ながら語らう
「MUSIC TODAY」ではその気さくな人柄と優れたインタビュアーぶりに惹きつけられたファンも多いはずだ。今回、原田が登壇するPMFのオープニング・コンサートでは、バーンスタイン、ガーシュウィン、コープランドとアメリカの作曲家がずらりと顔を揃える。いずれも眩く光を放つようなエネルギッシュな作品で、原田とPMFオーケストラJAPANの化学反応が楽しみである。
2人目は沖澤のどか。2019年ブザンソン指揮者コンクールでの鮮やかな優勝を飾り、一躍世界の表舞台に躍り出た。東京藝術大学とベルリンのハンス・アイスラー音楽大学で学び、カラヤン・アカデミーに奨学金を得て在籍しながら、日本とヨーロッパを中心に着実に活躍の場を広げている(インタビューは
こちらから)。PMFで彼女が振るのは、芥川也寸志の《トリプティーク》、プロコフィエフの《ヴァイオリン協奏曲第2番》(ソリスト:三浦文彰)、ストラヴィンスキーの《ペトルーシュカ》の3作品。3曲目のペトルーシュカには1911年版と1947年版が存在する。今回取り上げられる1947年版は作曲者が新古典主義に転じたのちに編曲したもので、1911年版より編成は小さいものの、華やかで非常に刺激的な作品である。ここでいう「新古典主義」とはバロックや古典主義のようなシンプルで簡明な和声を持つ作風に傾倒することを指すが、当時ストラヴィンスキーがこのスタイルを好んだ背景には1918年から流行したスペイン風邪パンデミックの影響が少なくないとされている。複雑で大きな編成の演目は上演が難しくなったため、という非常に現実的な理由をきっかけに生まれた1947年版。コロナ禍の今にこそ、自然体ながら表情豊かと評される沖澤の伸びやかな音楽とともに、先人の叡智を噛みしめたい。
なお、本音楽祭は
デジタルコンテンツも充実しており、コンサートの有料配信や、海外在住アーティストから届いたPMF2021限定公開映像が見られる「オン・デマンド」、他にも無料で公開される動画まで、自宅からでも音楽祭の盛り上がりを感じることができるだろう。
(文・尾崎羽奈)
PMF2021 オープニング・コンサート
日時 |
2021年7月23日(金)15:00開演
(14:00開場) |
会場 |
札幌コンサートホールKitara |
出演 |
[指揮]原田慶太楼
[ピアノ]三舩優子
[管弦楽]PMFオーケストラJAPAN
[コンサートマスター]郷古 廉 |
プログラム |
バーンスタイン:「キャンディード」序曲
ガーシュウィン:ピアノ協奏曲 へ長調*
コープランド:「ロデオ」から4つのダンスエピソード
1. カウボーイの休日
2. 畜舎の夜想曲
3. 土曜の夜のワルツ
4. ホーダウン
ガーシュウィン(ベネット編):交響的絵画「ポーギーとベス」 |
料金 |
S席:6,000円
A席:5,000円
B席:4,000円
C席:3,000円
U25(B, C席)2,000円 |
詳細 |
こちら |
お問い合わせ |
PMF組織委員会
TEL:011-242-2211 |
PMF GALAコンサート
日時 |
2021年8月1日(日)15:00開演
(14:00開場) |
会場 |
札幌コンサートホールKitara |
出演 |
【第1部】
[メゾ・ソプラノ]林 美智子
[ピアノ]鎌倉亮太
[ヴァイオリン]三浦文彰
[ピアノ]田島ゆみ
[クラリネット]アレッサンドロ・ベヴェラリ
[ヴァイオリンI]永峰高志
[ヴァイオリンII]佐々木絵理子
[ヴィオラ]物部憲一
[チェロ]向井 航
【第2部】
[指揮]沖澤のどか
[ヴァイオリン]三浦文彰
[管弦楽]PMFオーケストラJAPAN
[コンサートマスター]永峰高志
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プログラム |
【第1部】
三善 晃:貝がらのうた
小林秀雄:落葉松 ほか
シューマン:3つのロマンス 作品94
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581 から
【第2部】17:00~(予定)
PMFオーケストラJAPAN演奏会
[プログラムB]
芥川也寸志:弦楽のための三楽章「トリプティーク」
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ(1947年版) |
料金 |
S席:6,000円
A席:5,000円
B席:4,000円
C席:3,000円
U25(B, C席)2,000円
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詳細 |
こちら |
お問い合わせ |
PMF組織委員会
TEL:011-242-2211 |