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HOMEインタビューアクセル全開で駆け上がる、サクソフォン奏者 上野耕平
インタビュー2023.11.8

アクセル全開で駆け上がる、サクソフォン奏者 上野耕平

引用
 2014年のアドルフ・サックス国際コンクール入賞……そしてCDデビューから来年2024年で10周年。圧倒的なパワーを持って、アクセル全開で前に進むサクソフォン奏者、上野耕平。9月27日に5枚目のCDをリリースするタイミングで、”過去”“現在”“未来”と、上野さんと音楽にまつわるさまざまなお話を伺いました。
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©Yuji Ueno

さまざまな方法で、サックスの楽しさを広める

―― 現在の上野さんの演奏家として活動の柱を教えてください。一番はピアノとデュオの演奏が多いです。あとはオーケストラとの協奏曲。いろんな作品に取り組んできました。そして、カルテット。「The Rev Saxophone Quartet」といって、これは東京藝術大学の在籍時から藝大時代の仲間たちと続けています。サクソフォンカルテットのために作曲された作品はもちろんこと、クラシックだとオーケストラの曲やピアノの曲や弦楽器の曲、それ以外にもQUEENの曲とか、とにかく色々なことにチャレンジしています。そして、吹奏楽では「ぱんだウインドオーケストラ」。こちらも藝大時代の仲間たちと共に、吹奏楽のグローバルな音楽の魅力を深く広げていくことを目標にやっています。 ―― レヴは積極的にSNSを活用して発信されていますよね。 そうですね。ファンクラブ用のアプリを作ったりもしています。コロナ禍以前にも少しずつやっていましたが、コロナ禍になってからはより積極的にやりました。それまではコンサートが終わった後に必ずサイン会があって、お客さまの生の声に触れる機会がありましたけれど、リアルでお客さまに会えなくなってしまったので。コロナ禍になって早い段階で始めました。 最初はInstagramで毎日ライブ配信をして、その後YouTube Liveに移行しました。これまでの演奏会などでは出なかった話題を話したり、この機会にむしろ密なコミュニケーションを皆さんと取ろうと思いました。 ―― どのような方が視聴されていますか? 若い方からベテランの方のまで男女問わず、ですね。サックスを演奏されている方もいれば、まったく楽器を触ったことのない方も結構いらっしゃるみたいで、すごく嬉しいです。
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恩師の直感! サックスとの出会い

―― 楽器をはじめたきっかけを教えてもらえますか?小学校2年生に進級するタイミングで引っ越しをしたんですが、その時の始業式で吹奏楽部が演奏していて、それがすごく印象に残っていて。最初のきっかけはそこでした。その後、9月頃に体験入部があって、第一希望はトランペットで出したんです。バンドの後ろで「バーン」ってかっこいいじゃないですか! サックスは第二希望でした。当時はどの楽器がどの音が鳴るとかわからなかったのと、サックスの見た目のメカニックさがかっこよくて。 ―― なぜ第二希望のサックスになったのでしょうか? 決めたのは顧問の先生です。トランペットが人数的に多いとかでもなくて、当時はなぜ自分がサックスになったのかわかりませんでした。実は数年前、当時の顧問の先生に理由を聞いてみたことがありまして。 「上野くんのキャラクターや生活態度をみていたら、サックスで正解だったでしょう!」 って。小学生の生活態度って、どういうことだって話ですよね(笑)。 ただ、その先生は子どもたちの音楽の才能を見抜くことにとても秀でた方で、「この子はこの楽器が向いている」ってわかるんだそうです。東京交響楽団を経て読売日本交響楽団で活躍している荒木奏美さんはひとつ下の後輩なんですが、彼女もクラリネットからオーボエへと途中で楽器を変えたのですが、先生が決めました。 ―― 大人になった上野さんが考えるサックスの魅力は? 人間臭いとこでしょうか。人間って怒ったり笑ったり、感情の起伏が豊かじゃないですか。サックスは楽器を通して感情の起伏をダイレクトに伝えることができる。それが一番の魅力ですね。 ―― そんな上野さんがプロを目指そうと思ったきっかけは?
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幼少期、サックスを始めたころ
小学4年生の時に、のちに僕の師匠となる須川展也先生のリサイタルを聴いたのがきっかけです。正直、異次元でした。自分もとにかく上手くなりたいと思って、練習する理由ができましたね。 その後プロになろうと思ったのは小学6年生ぐらいです。オーケストラを聴くようになって、クラシックにめちゃくちゃハマりました。その時代はYouTubeなんて知らないし、CDを買うお金もないので、図書館でCDを借りてオーケストラをよく聴いてまいたね。―― ジャズではなかったんですね? 楽器をはじめてから、親父が地元のCDとかゲームを売っているお店で、グレン・ミラー・オーケストラのCDを買ってきたんですよ。「サックスをやるならこれくらい聴いとけ」って、親父は別に音楽をやっている人ではないんですが。ただ、当時はクラシックしか興味がなくて。もちろん今はジャズも大好きですよ。 ―― 当時好きだったクラシックの曲は覚えていますか? ボロディンの《ダッタン人の踊り》やリムスキー=コルサコフとか、ロシアものとかが好きでした。 ―― 少し話は脱線しますが、クラシック音楽初心者の方に上野さんがおススメする曲はありますか? ベートーヴェンの交響曲第6番《田園》や、ムソルグスキーの《展覧会の絵》など、曲のイメージを表現す題名や説明文が付いた「標題音楽」はどうでしょうか。曲のイメージが湧くタイトルがあるから、聴きやすいと思いますよ。あとは「バレエ音楽」なんかもいいですよね。物語に音楽が付いているので、標題音楽と同じように音楽が表現するイメージがわかりやすいと思います。 ―― プロの音楽家になるためのきっかけをお伺いしましたが、もし音楽家になっていなかったら、目指していた職業はありますか? あります! あります! あります! 電車の運転手、F1のドライバー、あとは野球選手も。野球は小学校の時にやっていて、当時は巨人が好きでしたね。今でも昼間など家にいる時には、BSでメジャーリーグを見たりしていますよ。

20代から30代へ――10年間の成長

―― デビュー前から今でも変わらず大切にしていることは?絶対に最後まで自分のこだわりを妥協しないことですね。 ―― この約10年間で20代から30代となりました。何か変化したことは? いろいろと全然違いますね。例えば、自分のフィーリングもそうだし、楽器から出ている音も、デビューCDと今回発売するCDでは別人かと思うくらい違います。どんな音が出ているのか、ぜひ聴き比べていただいてもおもしろいかと思います。 ―― 30代を迎えてすぐにコロナ禍となりました。コロナ禍はどのように過ごしましたか? 皆さんの前でこれまでのように演奏ができなくってしまったので、最初の方にお話したInstagram LiveやYouTube Liveでの配信を積極的に行いました。 あとは指揮の勉強を始めたことでしょうか。ずっと指揮の勉強をしたいという願望はあって。コロナ禍が始まって、自分が指揮を習いたいと思った先生がしばらく日本にいることになったのも理由のひとつです。この時期に何回か集中的に教わりました。演奏家としての自分にとってもすごく大きなできごとで、とにかく音楽を深く広くとらえられるようになりました。 ―― 私生活ではいかがでしょうか? これまではほとんどしなかった料理をするようになりました。それまではずっと外食中心の生活だったんですが。得意料理というほどでもないのですが、僕ほとんど和食しか食べないので、お浸しとか煮物とか、ちょっとおじいちゃんっぽい(笑)感じのものを作ったりします。

アクセル全開でサックスの魅力を未来へ

―― 9月27日に5枚目のアルバム「Eau Rouge(オールージュ)」をリリースされましたが、今回のコンセプトは?
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サクソフォンのオリジナル楽曲を、先入観なく老若男女問わず聴いてほしいと思って選びました。今回選んだ曲もそうだし、CDジャケットにもそのコンセプトはつながっています。 今回収録をした楽曲たちは、これまでの先人たちがこのサックスという楽器の発展のために、さまざまな努力やかかわり方をしてきたことで生まれてきた作品たちばかりです。でも、それがまだサクソフォン奏者たちの中だけで留まってしまっていると僕は思うんです。たからこそ、あらためてサックスを親しむ方だけではなく、そうじゃない方にもどんどんこの作品たちの魅力を広げていきたいと思っています。―― 音源を聴かせてもらいましたが、けっこう聴きやすい曲が多いですよね。 そうなんですよ。ディメルスマンとかも、譜面だけ見たら正直大変なことになっているんですが(笑)、先入観なしで知らないまま聴いてみると、なんだかコミカルでオシャレ、そして親しみやすい作品なんですよね。アルバムの最後に収録されているデザンクロは、なかなか難しいところもあると思うのですが、これまで聴いたことのない、新しくかっこいい世界をぜひ知ってほしいです。 ―― 収録されているプラネルやボノーは入学試験やコンクールでも取り上げられる曲ですが、若い音楽家たちの参考音源になるのではないでしょうか。 どうでしょうか。学校ではたぶん教わらないだろうと思う吹き方をしているので……。そういう意味では参考音源になるかはわからないですが、ひとつの解釈としてはアリだと思います。いまの僕が考えている正解が今回の音源にはあって、それがほかのサクソフォン奏者の方が考える正解と同じとは限らないからです。こういう解釈もあるんだと思ってもらえるといいかなと思います。そして、これは30代前半の“いま”の上野耕平が考える正解です。 ―― タイトル「Eau Rouge(オールージュ)」に込められた意味を教えてください。
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これはですね……完全に僕の趣味から考えられたタイトルです。サクソフォンの生誕地、ベルギーにあるF1サーキット「スパ・フランコルシャン」の有名な難所の名前が「オー・ルージュ」というのです。この「オー・ルージュ」はとんでもない急な登り坂で、アクセル全開で駆け上がっていくのですが、ドライバーの視界には空しか映らない。 今回のアルバムの演奏では、F1ドライバーがオー・ルージュをアクセル全開で駆け上がっていくように、今を生きるサクソフォン奏者として、自分自身の持つエネルギーでこの楽器の未来や作品たちの未来を背負って、アクセル全開で登っていく。そんな願いを込めて、このタイトルをつけました。

将来に残したい曲

実は12月以降に世界初演が3曲立て続けにあるんです。最初は12月2日(土)に東京で、東京都交響楽団の皆さんとデュビュニョンのアルトサクソフォン協奏曲《英雄的》を演奏します。この曲は僕の委嘱作品です。 次に12月22日(金)に同じく東京で、こちらはレヴの10周年アニバーサリーコンサートでの初演。そして最後に、12月31日(日)には札幌で、札幌交響楽団の皆さんとのジルベスターコンサートです。まだ、楽曲の全容ができ上がっていない曲もあるのですが、どの楽曲も絶対にこれから先も残る曲で、本当にすばらしい作品です。 世界初演は当たり前に1回しかないので、そこに立ち会えるのはこの瞬間しかありません。同じ時代を生きている作曲家の作品を生演奏で聴けるのは、今の我々にしかできないことなのです。 コンサートは演奏家だけがいて成立するものではありませんので、多くのお客さまに世界初演へ足を運んでいただき、その音楽や演奏する姿を見届けていただきたいですね。―― 次の10年。40代に向けて何かやりたいこと。 まず、YouTubeへの投稿ですね。今はもともと音楽に親しみのある方が楽しんでいらっしゃる印象があるので、もっと幅広い方が楽しめる窓口を作っていきたいと思っています。 そして、指揮者としての活動でしょうか。もちろん、まだまだ勉強はしなきゃいけませんが、トライし続けて皆さんにもっと見てもらえるような機会を作れるように頑張ろうと思います。今年は8月に、東京混声合唱団さんとの共演機会をいただきました。 ―― ありがとうございました。最後にららら♪クラブの読者へ向けてメッセージをお願いします。 ぜひ生涯にわたって音楽と付き合っていただきたいなと思います。 知っている曲はもちろん、知らない曲にも出会って、それが良い曲だと思うかもしれないし、違うなと思うかもしれないけれど、それでいいんですよね。そんな時間を楽しんでもらいたいなと。これまでになかった新たな音楽の世界に出会って、いろいろな機会を逃がさないでほしいです。 (取材・文 鈴木智之)

インフォメーション

『Eau Rouge』

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曲目 ミヨー:スカラムーシュ

デュボワ:ディヴェルティスマン
ボザ:アリア
プラネル : プレリュードとサルタレロ
ボノー:ワルツ形式によるカプリス
デザンクロ:プレリュード、カデンツァとフィナーレ
2023年6月20,21日 秩父ミューズパーク音楽堂にて録音
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タイトル
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CD情報
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発売日
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   2023年9月27日(水)
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演奏
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[サクソフォン]上野耕平 [ピアノ]高橋優介

上野 耕平(Kohei Ueno)
茨城県東海村出身。8歳から吹奏楽部でサクソフォンを始め、東京藝術大学器楽科を卒業。
指揮者山田和樹氏には「耕平は、1音を聴いただけで、ただ者ではないと思った!」、ボストンポップスオーケストラの音楽監督であり指揮者であるKeith Lockhartには「サクソフォンのこんな音聴いた事がない。目が飛び出るほど驚いた!」と言わしめた。
第28回日本管打楽器コンクールサクソフォン部門において、史上最年少で第1位ならびに特別大賞を受賞。2014年第6回アドルフ・サックス国際コンクールにおいて、第2位を受賞。現地メディアを通じて日本でもそのニュースが話題になる。
また、スコットランドにて行われた第16回世界サクソフォンコングレスでは、ソリストとして出場し、世界の大御所たちから大喝采を浴びた。2016年のB→C公演では、全曲無伴奏で挑戦し高評価を得ている。
デビュー以来、常に新たなプログラムにも挑戦し、サクソフォンの可能性を最大限に伝えている。
現在、国内若手アーティストの中でもトップの位置をしめ演奏活動のみならず、NHK-FM「×(かける)クラシック」のMCやテレビ「題名のない音楽会」「情熱大陸」など、メディアへの出演も多い。
サックスカルテット「The Rev Saxophone Quartet」、吹奏楽「ぱんだウインドオーケストラ」のコンサートマスターとしても活躍中。
CDデビューは2014年「アドルフに告ぐ」、2015年にはコンサートマスターを務めるぱんだウインドオーケストラを、2017年にはThe Rev Saxophone QuartetのデビューCDをリリース。2017年12月には3枚目のソロアルバム無伴奏バッハ「BREATH」をリリース。2018年11月にThe Rev Saxophone Quartetのセカンドアルバム「FUN!」を、2019年12月には「アドルフに告ぐⅡ」。をリリース。
音楽以外にも鉄道と車をこよなく愛し、深く追求し続けている。
2017年度第28回出光音楽賞受賞。2018年第9回岩谷時子賞 奨励賞受賞。

【使用楽器】
楽器:YAMAHA YAS-875EXG /マウスピース:SELMER S90 180
リガチャー:HARRISON 復刻GP/リード:VANDOREN TRADITIONAL3.5
上野耕平 OfficialHP:
上野耕平 公式X(旧Twitter)/@KoheiUeno710
上野耕平 公式Facebook
上野耕平 公式Instagram/@koheiueno_sax

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