中野翔太(ピアノ)、成田達輝(ヴァイオリン)は、クラシック界での輝かしいキャリアにとどまらず、現代音楽やジャズなどオールマイティに活躍の幅を広げる実力派のふたり。彼らは2022年には坂本の指名により録音を行いました。また、成田が作曲家の山根明季子、梅本佑利とともに結成した音楽ユニット「mumyo」は、坂本によって命名されたもの。特別出演のLEO(箏)は全国邦楽コンクールで史上最年少の優勝を果たし、クラシック、ジャズ、ポピュラーなどジャンルを問わず精力的にコラボレーションを行い、各メディアで注目が集まっています。
クラシックをルーツに持ちながらテクノユニットYMOで一世を風靡して以降、キャッチーでありながら繊細な詩情に満ちた音楽性が世界で賞賛されるとともに、電子メディアを活用しながら音に対する鋭い感性と深い知性で時代を牽引し続けた坂本。そんな越境的な彼の創作に共鳴して、ボーダレスに活躍する若き俊英たちが、清冽な音楽を奏でてくれるでしょう。
<文・高河誠太郎>
公演によせて
私は15歳からニューヨークにあるジュリアード音楽院へ留学したのですが、10年間留学生活を送る中、自分が日本人であるということを強く意識するようになりました。自分は何故西洋音楽を演奏しているのか?思春期真っ只中ということもあり、今まで意識したことのない疑問が湧いてきて負のスパイラルに陥りました。そんな時坂本龍一さんの音楽がすっと耳に入ってきました。「ああ、音楽ってこういうものだ」と思いました。それから坂本さんの音楽を聴き漁る日々。そのような中でそれまでの悩みも吹っ切れていました。そんな尊敬する坂本さんの目の前で、ご本人の作品を、坂本さん愛用のピアノで演奏、収録する機会が突然訪れた昨年9月。まるで夢の中にいるような一日でした。坂本さんの71年間の生涯の中での一日、その時間を、音楽を通して共有させていただけたこと、この日のことは一生忘れません。ご冥福をお祈りいたします。
中野翔太
坂本龍一さんとYMOのファンである母の影響で、幼い頃から私は坂本さんの音楽に親しんできました。そんな私が初めて坂本さんにお会いしたのは、昨年9月に彼のレコーディングに参加した時です。血気盛んで自由な学生時代に作曲したという作品を演奏しました。本当に楽しかったです。
それから私は、何度も坂本さんへ、音楽家としての思いの丈をお伝えしてきました。「私にとって坂本さんはもう一人のお父さんのようです」「光栄です」そんなやり取りをしたのはつい最近のこと。私が取り組む音楽ユニットに「mumyo」と命名していただいたり、坂本さんの存在がより身近になりました。このアフタヌーン・コンサートが企画され、ようやく詳細も決まり、坂本さんに演奏のアドバイスをいただこうと思っていた矢先の訃報…
—今、私たちの心の中に、坂本さんが溶けてゆきました。彼の魂を感じながら、この公演を坂本龍一さんに捧げます。成田達輝
公演名 | アフタヌーン・コンサート・シリーズ2023-2024 若き俊英たちによる “戦場のメリークリスマス” |
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日時 | 8月29日(火) 13:30開演(12:50開場) |
会場 | 東京オペラシティ コンサートホール | 出演 | [ピアノ]中野翔太 [ヴァイオリン]成田達輝 [箏]LEO ※特別出演 |
プログラム | 坂本龍一: 戦場のメリークリスマス ラストエンペラー Peace for Illia ソナタ Parolibre The Sheltering Sky M.A.Y in the backyard Flower is not a flower ほか |
チケット | 全席指定:5,500円 |
お問い合わせ |
ジャパン・アーツぴあ TEL:0570-00-1212 |