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番組ファンから〜作曲家 宮川彬良さん

自宅スタジオで
このページでは、NHK Eテレ「ららら♪クラシック」にゲスト出演した演奏家、評論家、タレントをはじめ、著名な方々から番組ファンを見つけだして(勝手に見なして?)、番組に対する思いやクラシックライブの独自の楽しみ方などを語っていただきます。サイトリニューアルのオープニングを飾るのは作曲家の宮川彬良さん!

深掘りしたり、音を見たり、自分の感覚を育んできた

「アキラさん」の愛称で親しまれている作曲家・宮川彬良さん。Eテレ「ららら♪クラシック」では、ユーモアを交えた分かりやすい音楽解説でおなじみ。音楽を楽しく分かりやすく伝える演奏会も精力的に開いている。 「僕の音楽解説は、作曲家の目線によるものです。音や曲のしくみとか構成とかね。研究家の人は、曲が書かれた当時の社会情勢や作家の人生などに視点を置いて語ることが多いですけど。勉強を積んできた西洋音楽の和声学や対位法は、大作曲家のベートーヴェンもモーツァルトもみんな学んでいて、作曲の基礎になってるから、楽譜を読むと彼らがやりたかったことがリアルに分かる。僕の解釈が絶対かどうかは別にして」 学理を真剣に学び始めたのは東京藝術大学受験を決めた高校時代だが、楽曲を深掘りする原点は、小学校3、4年の頃に、母と行ったミュージカル映画『ウエスト・サイド物語』だという。米国・ニューヨークのスラム街を舞台に、若者の恋や人種対立などを描いた大作で、1961年度のアカデミー賞10部門授賞。音楽はレナード・バーンスタイン、劇中歌の「トウナイト」は世界中で愛唱されている。 「とにかくカッコよくて! こんな音楽があるんだって感動して、母に買ってもらった、映画の音楽レコードをすり切れるほど聴きました」 今も大切にしているそのLPレコードは、ジャケットのとじがちぎれ、表紙と本体がバラバラ。いかに繰り返し聴いていたか一目瞭然である。後に、劇団四季の公演も見に行ったりして「心を奪われるのはなぜだろう」と、目と耳の両方で考え続けたそうだ。

これが『ウエスト・サイド物語』のLPレコード。愛犬チワワのサニーちゃんを抱いて

「それがやがて仕事に結びつくのだから不思議なものですね。僕は、コンサートを『聴きに行く』より『作る』方が断然多いですが、ホールでは『音を見る』ような感覚だなあ。『今、光ったな、金色だ』とか『うす紫だ』とか。歌詞のない音楽なら、ストーリーを勝手に考えて聴いたりね」 ニコラウス・アーノンクール(1929~2016)の来日演奏会をサントリーホールで聴いたときは「音の渦を感じた」という。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の「ニューイヤーコンサート」も指揮した世界的マエストロだ。 「妻がファンで、一緒に出かけたんです。オーケストラは、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが指揮者の左右に向き合って座る対向配置。第1ヴァイオリンのボディーは1階の客席に向いていて、第2ヴァイオリンは舞台後ろのパイプオルガンに向いているから、最初に飛んでいく音の方向が違うし、席によって聞こえ方も違いますが、とにかくオケの音が渦巻いて響いて、竜巻が起こってるみたいに見えた、そう聞こえたんです。アーノンクールさんはうねりで捉えるんだ、これが彼の音楽の届け方なんだなあって思った。ホント、音を見てたなあ」 コンサートをプロデュースするときは、自分が「見たい、聴きたい」と思える感覚を大切にしている。 「僕は、コンサートと言わずショーと言ってるんですが、作曲と同じで『ショー=1曲』の感覚で考えるんです。次の展開やおしゃべりも含めて、上手にいざなうというのかな。例えば、映画『ひまわり』を知らなくてもテーマ曲に浸れるように『朝、妻とやり合ったことでもいいから、何か思い出しながら聴いてみて』とか、ちょっと話すと楽しめるようになる。オケだって『このメロディーとベースがジンとくる』とか言うと一気に演奏がよくなる。なるほどと思うからでしょうね」 難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを楽しく…に尽きるという。 「『ららら♪クラシック』では、楽譜が読めない人や楽器ができない人に音楽がどうなっているか伝わるよう、『例えるなら××』といった感覚的に分かる表現も大切にしています。ストラヴィンスキーの『春の祭典』のとき、秋田のなまはげを例えにしたら、スタッフに予想以上にウケて、僕の方が驚きましたけど(笑)。本質を捉えているから、うなずいてくれるんだと思います。収録で、司会の高橋克典さんやアナウンサーの牛田茉友さんがノッてきて、台本と違う言い回しで盛り上がったりも。収録後に二人から『楽しくて分かりやすかったです!』と言われたり、今まで僕を知らなかった人が見てくれてて、行く先々で声をかけてくれたりするのもうれしいですね」 あなたもコンサートを聴きながらチャレンジ! この曲は、例えるなら・・・、え~っと・・・。 (文・写真 原納 暢子) ■宮川彬良(みやがわ・あきら) 東京出身。劇団四季、東京ディズニーランドなどのショーの音楽で作曲家デビュー後、数多くのミュージカル、舞台音楽を手掛ける。「身毒丸」「ミラクル」「ハムレット」「ムサシ」など、代表作多数。一方で、大阪フィル・ポップス・コンサートの音楽監督・常任指揮者('95~2010)、「宮川彬良&アンサンブル・ベガ」の音楽監督('98~)をはじめ数多のアーティストと演奏活動。04年には、松平健のショーに作曲した「マツケンサンバⅡ」が大ブレイク。また「クインテット」('03~'10、NHK教育)での親しみやすい音楽演奏やNHK木曜時代劇「ちかえもん」('16)、連続テレビ小説「ひよっこ」('17)の音楽なども。Eテレ「ららら♪クラシック」では、独自の視点で音楽を分析! http://akira-miyagawa.com/ http://office-vega.net/  

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