共演のかたち
何かを記念して行われる特別企画の音楽会「ガラコンサート」。大晦日から新年に向けて催される「ジルベスター・ガラ」や「ニューイヤー・ガラ」、コンクール入賞者たちによる記念公演「ウィナーズ・ガラ」、オペラやバレエのソリストたちを集めた華やかな特別公演「オペラ・ガラ」「バレエ・ガラ」など、キーワードとして目にする機会も少なくありません。「ガラ(gala)」はフランス語で「特別な催し」とか「社交界のお祭り」を意味し、来場時は正装でといったドレスコードが設けられる場合があることからもその特別感が漂います。「3大テノール」のように知名度の高い国際的スターが大勢出演したり、クラシック以外のジャンルの曲を特別アレンジで共演するステージは豪華の一言につきますが、何より特別なのは、客席にドレスアップした観客、ステージにスター、ステージ裏にスタッフ、それぞれがこの特別な空間にいることで共演(コラボレーション)する場となっているところでしょう。
コンサートのかたち
今あるコンサートのかたちはウィーンのブルク劇場アカデミーから始まりました。オペラやコンサートといった催しは異なるジャンルの交流(コラボレーション)を1750年ごろから約300年にわたって続けてきたそうです。例えば、歌曲(リート)とオペラアリアを取り混ぜたコンサート、オペラ上演幕間に小協奏曲(間奏曲)の演奏挿入、舞台美術を取り払ったコンサート形式でのオペラ上演、その他バレエやオペラの公演前座に名手によるソロ演奏を披露する機会を設けたりと、企画は多種多様。劇場ではオペラや演劇をメインに上演していましたが、音楽のコンサートはサロンや使われていない邸宅のほか、上演予定のない四旬節の劇場を有効に利用し催されていたのだとか。
教会暦における劇場公演中断の期間中の、普段はコンサートを催さない劇場で、事実上失業中の音楽の名手たちによって、オペラを抜粋し次から次へとメドレー形式で披露したことが、ガラコンサートの原点のようですね。ウィーン宮廷歌劇場として1869年に開場したウィーン国立歌劇場では1883年から継続的に催され、今日では世界中のオペラハウス、コンサートホールで人気のコンサートとして開かれるようになりました。
参考文献:
「コンサートの文化史」ヴァルター・ザルメン著, 上尾信也, 網野公一訳,(ポテンティア叢書, 33)柏書房, 1994
(文・武谷あい子)