<11月27日 広島文化学園HBGホール> 2024年春、広島交響楽団の音楽監督のバトンが、下野竜也からクリスティアン・アルミンクへと渡された。このとき、下野からアルミンクへ、ある「申し送り」が行われた。ひとつは、COVID-19大流行の影響で果たせなかった、広響と、ドイツの巨匠ゲルハルト・オピッツとの共演。そしてもうひとつは、下野が未達成のままとなっていた、チェコの作曲家、ボフスラフ・マルティヌーの交響曲の全曲演奏である。チェコといえば、オーストリア出身のアルミンクが、ヤナーチェク・フィルの指揮者としてのキャリアの第一歩を踏み出した、いわば彼にとって特別な場所である。
ふたつの「申し送り」がようやく形になる本公演は、下野からアルミンクと広響、そして広島のクラシック音楽ファンへの「贈り物」というべきものであろう。念願の、ゲルハルト・オピッツとの共演にアルミンクが選んだ作品は、ブラームスの名曲、ピアノ協奏曲第2番。ピアノとオーケストラの緻密なアンサンブルと、親しみやすく美しい旋律が特徴の本作を通して、ヴィルヘルム・ケンプの流れをくむドイツの正統派ピアニズムの継承者であるオピッツのすばらしさを体感してほしい。
チェコ出身のマルティヌーは、その生涯において400曲を超す作品を書き上げており、20世紀の作曲家としては異例の多作家である。交響曲は1942年から1953年にかけて6曲を書いている。ボストン交響楽団の委嘱によって書かれ、1955年にシャルル・ミュンシュの指揮で初演された交響曲第6番は、エクトル・ベルリオーズへの敬意をこめて《交響的幻想曲》の副題がつけられている。
「緩-急-緩」の3楽章構成をもつ本作は、オーケストラの扱いに長けたマルティヌーならではの繊細なオーケストレーションが特徴で、少し暗くミステリアスな音楽の狭間に、親しみやすい旋律が顔を出す作品である。油彩画のような激しいタッチと、パステル画のような淡いグラデーションをあわせもつ《交響的幻想曲》は、広島のクラシック音楽ファンにとって新たな音体験となるはずだ。
<文・加藤新平>
- ■ 公演名
広島交響楽団 第446回定期演奏会
■ 日時
11月27日(水) 18:45開演(17:45開場)
■ 会場
広島文化学園HBGホール
■ 出演
[指揮]クリスティアン・アルミンク
[ピアノ]ゲルハルト・オピッツ
[管弦楽]広島交響楽団
■ プログラム
ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83
マルティヌー:交響曲第6番 H.343 《交響的幻想曲》
■ チケット
全席指定:S席5,800円 A席5,200円 B席4,500円 学生1,500円
■ お問い合わせ
広響事務局
TEL:082-532-3080
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