
<2026年2月20日 兵庫県立芸術文化センター> 「ものがたりの音楽」と題された興味深いコンサートをご紹介したい。今回取り上げられるのは、いずれも演劇や舞台芸術と深い関わりをもつ作品ばかりである。
冒頭を飾るのは、コルンゴルト14歳のときの作品《劇的序曲》。すでに“神童”として名を馳せていた彼は、ベルリン・フィルの指揮者アルトゥール・ニキシュの委嘱に応えて、この輝かしくドラマティックな音楽を書き上げた。映画の幕開けを思わせる高揚感は、のちに彼がハリウッドで活躍する未来を予兆しているかのようだ。ウィーンでオペラ作曲家として成功を収めたのち、ハリウッドへ進出。しかしオーストリアのナチス・ドイツ併合に伴い、ユダヤ人であった彼はアメリカへ亡命する。このできごとは彼にオペラ作曲の道を断念させたが、才能は映画音楽の世界で大きく花開くこととなった。
続く演目は、そんなコルンゴルトの映画音楽のエッセンスが凝縮された《ヴァイオリン協奏曲》。複数の映画音楽素材を再構成して書かれたこの協奏曲は、彼の代表作として知られる。今回ソリストを務めるのはレイ・チェン。デジタル時代に新たな音楽家像を切り拓くレイ・チェンと、時代の荒波に翻弄されつつも普遍的な魅力を放ったコルンゴルト── ふたりの“時空を超えた響きの対話”は聴き逃せない。
後半は、映画音楽でも存在感を放った武満徹の作品から幕を開ける。こちらも映画音楽を素材に構成されたものだ。そしてフィナーレを飾るのはプロコフィエフの《ロメオとジュリエット》。バレエ音楽として生まれ、のちに演奏会用組曲としても編まれた壮麗な音楽からの抜粋が披露される。
今回のプログラムに名を連ねる作曲家たちは、いずれも第二次世界大戦という激動の20世紀を生きた。国家の動向に翻弄されながらも、彼らは時代を越えて息づく豊かな音楽を生み出した。そこにこそ、このコンサートを貫くもうひとつの「ものがたり」が潜んでいるのかもしれない。
<文・尾崎羽奈>
| 公演名 | 兵庫芸術文化センター管弦楽団 2025-26シーズン 第167回定期演奏会 原田慶太楼×レイ・チェン ものがたりの音楽 |
|---|---|
| 日時 | 2026年2月20日(金)、21日(土)、22日(日) 15:00開演(14:15開場) |
| 会場 |
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール |
| 出演 |
[指揮]原田慶太楼 [ヴァイオリン]レイ・チェン [管弦楽]兵庫芸術文化センター管弦楽団 |
| プログラム |
コルンゴルト:劇的序曲、ヴァイオリン協奏曲 武満徹:弦楽オーケストラのための3つの映画音楽 プロコフィエフ:組曲《ロメオとジュリエット》より(抜粋) |
| チケット | 全席指定:A席5,000円 ※B席以下完売 |
| お問い合わせ |
芸術文化センターチケットオフィス TEL:0798-68-0255 |




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