
<4月18日 東京・浜離宮朝日ホール> 2010年のショパン国際コンクール、2015年のチャイコフスキー国際コンクールの両方で第2位に輝いたピアニストがいる。彼の名は、ルーカス・ゲニューシャス。モスクワ音楽院の名教師、ヴェーラ・ゴルノスターエワの孫として1990年にモスクワで生まれたゲニューシャスは、パリ管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ロシア・ナショナル管弦楽団、NHK交響楽団など、世界各地の著名なオーケストラと共演を重ねるほか、室内楽の分野でも着実に実績を積み重ねている。 浜離宮朝日ホールへの初登場となる今回、ゲニューシャスが日本の音楽ファンへ唯一無二の贈りものを運んできてくれる。それは、ラフマニノフのピアノ・ソナタ第1番の「未出版手稿譜」の日本初演だ。 ラフマニノフのピアノ・ソナタ……といえば、第2番を思い浮かべる人が多いことだろう。何を隠そう、筆者もそのひとりである。この曲が書き始められた1907年、ラフマニノフは交響曲第1番の初演の大失敗から逃れるようにモスクワを離れ、ドイツのドレスデンに家族とともに転居していた。交響曲第2番と同時期に書かれた本作は、どっしりとした3楽章形式で、1908年に初演された際には45分を超す大曲であった。しかし、現在出版されている楽譜による演奏は33分~35分程度である。「10分」はどこへ消えた? 出版にあたり、ラフマニノフは作品に大ナタを振るう改訂を施した。その過程でそぎ落とされた「10分」を、手稿譜から解き明かしていくことこそが、現在のゲニューシャスのライフワークである。 日本のラフマニノフの演奏史に、新たな1ページが刻まれる。その瞬間をぜひ聴いてほしい。もちろん、彼の弾くシューベルトもまた絶品だ。時代も様式も異なるふたりの作曲家を、ゲニューシャスがどう解釈し聴かせてくれるか、大いに期待したい。
<文・加藤新平>
公演名 | ルーカス・ゲニューシャス ピアノ・リサイタル |
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日時 | 4月18日(金) 19:00(18:30開場) |
会場 | 浜離宮朝日ホール |
出演 | [ピアノ]ルーカス・ゲニュ―シャス |
プログラム |
シューベルト:即興曲集 D935 第1番 ヘ短調、D899 第2番 変ホ長調、D899 第3番 変ト長調、D935 第4番 ヘ短調 メヌエット 嬰ハ短調 D600 ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第1番 ニ短調 Op.28《オリジナル版/日本初演》 |
チケット | 全席指定:6,500円、U30(30歳以下)2,000円 |
お問い合わせ | 朝日ホール・チケットセンター TEL:03-3267-9990(日・祝のぞく10:00~18:00) |