
<11月20日 東京文化会館> 1999年、ウクライナのハルキウで生まれたドミトロ・ウドヴィチェンコは、6歳でハルキウ音楽学校に入学してルドミラ・ヴァレーニナのもとで学び、14歳からドイツ・エッセンのフォルクヴァング芸術大学のボリス・ガルリツキー教授のもとで研鑽を積んできた。2018年にハノーファー・ヨーゼフ・ヨアヒム国際ヴァイオリンコンクールにおいて第2位に入賞を果たし、2023年にはシベリウス国際ヴァイオリン・コンクールにて第3位に入賞、2023年にはモントリオール国際音楽コンクールで優勝を果たした。そして、2024年には、ショパン国際ピアノコンクール、チャイコフスキー国際コンクールと並ぶ、世界3大コンクールのひとつであるエリザベート王妃国際音楽コンクール ヴァイオリン部門において優勝を成し遂げた。
いま、世界で最も波に乗るヴァイオリニストであるウドヴィチェンコが、今秋、日本でデュオリサイタルを開催する。本公演では、フィンランド出身のピアニスト兼指揮者で若手のホープ、ミカエル・ロポネンを伴奏者に迎える。2022年にレーヴィ・マデトヤ・ピアノ・コンクールで第1位、2023年にハンス・フォン・ビューロー国際ピアノコンクールでは「ピアノによる指揮」部門で第3位に輝くなど、その実力は折り紙付きだ。2026年7月25日(土)の東京都交響楽団「プロムナードコンサートNo.418」で、指揮者としても日本デビューを果たす予定である。
本公演のプログラムは、ウドヴィチェンコ、ロポネン、そして主催者が考え抜いたものだ。その根底にあるテーマは「平和」である。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番《雨の歌》は、第2楽章が葬送行進曲的な性格をもっており、すべての紛争で犠牲となった人々への弔いの気持ちが込められている。ヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタは、1914年、第一次世界大戦の開戦と同時期に作曲されたもので、作曲者自身、戦争の混乱の中で聞こえた「鋼鉄のぶつかり合う音」が影響した……と、のちに回想している。ショスタコーヴィチのヴァイオリン・ソナタは、ウクライナ出身のウドヴィチェンコが、あえてロシアの作曲家の作品を取り上げることで「彼らの言葉」で反戦を表現したいという思いを込めて選曲したもの。1968年に書かれた本作では、ミステリアスな響きと推進力にあふれる音楽とが交錯する。
なんといっても、本公演の最大の聴きどころは、ウクライナを代表する作曲家のひとり、ヴァレンティン・シルヴェストロフが作曲した《J.S.Bに捧ぐ》だろう。ヨハン・セバスティアン・バッハへのオマージュであり、ウトヴィチェンコにとっても大切なレパートリーだ。
21世紀が「戦争の時代」となることを、誰が予想しただろうか。戦火を乗り越えて、ウクライナから日本に届けられる音楽を通して、いま一度「反戦平和」への思いを新たにしたい。
<文・加藤新平>
| 公演名 | ドミトロ・ウドヴィチェンコ&ミカエル・ロポネン デュオコンサート |
|---|---|
| 日時 | 11月20日(木) 19:00開演(18:30開場) |
| 会場 | 東京文化会館 小ホール |
| 出演 |
[ヴァイオリン]ドミトロ・ウドヴィチェンコ [ピアノ]ミカエル・ロポネン |
| プログラム |
ヴァレンティン・シルヴェストロフ:J.S.B.に捧ぐ ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Op.78《雨の歌》 ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ JW VII/7 ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 Op.134 |
| チケット | 全席指定:4,500円 学生または23歳以下2,525円 |
| お問い合わせ |
一般社団法人MCSヤングアーティスツ TEL:080-3154-9880 |
















