若手ヴァイオリニストとしていまもっとも注目を集め、数多の人気をかっさらっていく辻彩奈さん。幼少期から頭角を現し、11歳で名古屋フィルハーモニー交響楽団と共演、さらには2009年全日本学生音楽コンクール小学校の部にて全国第1位、東儀賞、兎束賞を受賞して以来、ヴァイオリニストとしての実力・人気ともにトップアーティストとして走り続けています。
「みんなの前で演奏するのが本当に好き」という辻さん。幼少期のレッスンからコロナ渦での留学と共演、そして2年に1度の自主企画公演、趣味や息抜きまで、等身大の20代として気さくに話していただきました。
音楽とのなれそめ
―― 辻さんと音楽のなれそめについておうかがいします。3歳からスズキ・メソードでヴァイオリンを始められたとのことですが、ヴァイオリンに関する最初の記憶はどんなものでしょうか?
父方の祖父母はクラシック音楽がとても好きな人たちで、レコードを集めたりしていたのだそうです。そして息子にヴァイオリンを習わせた―― つまりわたしの父というわけですが、父は3歳からスズキ・メソードでヴァイオリンを習っていたので、家に小さな子ども用の楽器があって、私も自然に楽器を手に取り始めました。それがヴァイオリンを始めたきっかけです。
岐阜県出身なので、県のスズキ・メソード教室のレッスンに通いはじめました。小学校4年生のときに、スズキ・メソードで習っている子どもたちが全国から長野県の松本市に集まるイベントに参加して、そこで小林健次先生を紹介していただいて、それから健次先生のレッスンを受けるようになりました。
―― それからは東京にレッスンに通われていたのですか?
そうですね、月1回くらい東京に通っていました。健次先生は名古屋にも定期的に教えにきていらっしゃったので、東京には月1回、それと先生が名古屋にいらっしゃるときにも見てもらっていました。
いまは名古屋フィルハーモニー交響楽団のアシスタント・コンサートマスターを務めていらっしゃる矢口十詩子先生が健次先生の門下生だったので、「名古屋でなら彼女に見てもらうといいよ」と名古屋での先生として矢口先生を紹介していただきました。
ふだんは矢口先生に見ていただいて、月1回、健次先生のレッスンを受ける、そんなサイクルで過ごしていました。
―― 当時、心を動かされたコンサートなどはありましたか?
名古屋の宗次ホールで、竹澤恭子さんがブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会をされたときに聴きに行きまして、それは本当に印象に残っています。
当時ブラームスのヴァイオリン・ソナタなんて曲すらほとんど知らなかったですし、そもそもヴァイオリン・ソナタを勉強したことすらなかったのですが、「あぁ、いつかこんな本格的なリサイタルがやってみたいな、ブラームスのヴァイオリン・ソナタを全曲いつか弾いてみたいな」と子ども心に思ったことを覚えています。
竹澤恭子さんは健次先生の門下生でもありましたし、父がスズキ・メソードでヴァイオリンを始めたとき、竹澤さんは同じクラスにいたのだそうです。わたしもスズキ・メソードの縁で、竹澤さんが名古屋でマスタークラスをされたときに受講しました。そんなご縁もあって竹澤恭子さんは身近な存在でもあり、あこがれの方でもありました。
―― 当時一番好きな演奏家は誰でしたか?
いまでもそうなんですけれど、一番好きなヴァイオリニストはギル・シャハムです! DVDやCDもいっぱい持っていて、全日本学生音楽コンクールを受けていた時期などは、ギルのDVDやYouTubeをめちゃめちゃ見ていました。
人柄もすばらしくて、なによりすごく楽しそうに演奏しているのがまたすてきです。おととし来日されたときに初めてリサイタルを聴きに行って、生で会うことができました。
―― ヴァイオリニストを目指そう、これを仕事にしようと思ったきっかけというのはありましたか?
小学生のころ、健次先生の門下生は年上の方が多くて、同世代がほとんどいなかったんです。それで同世代のレヴェルというものを知らなかったんですね。
小学5年生のときに全日本学生音楽コンクールの名古屋大会で優勝して、全国大会に出場したときに、ほかの出場者が弾いている作品やその演奏に驚きました。みんなこんなに上手なんだなって。そのときは入賞できなかったのですが、そこで初めてヴァイオリンで挫折を味わいました。次の年には絶対優勝しよう、6年生のときに頑張ろうと目標にしたんです。
それで6年生で優勝できたんですが、名古屋から優勝者が出るのは久しぶりだったということもあって、中学生くらいから名フィルと共演させていただいたりとか、リサイタルのお話をいただくようになってきて、「あぁ、こうやって音楽を仕事にしていくんだな」ってことが実感としてわかってきました。
子どものころはテレビで誰かが演奏しているのをみていても、これが職業ということはいまいちピンときていなかったのですが、自分がお仕事のお話をいただき始めてから、それが現実味を帯びてきたというか、実感を得ていきます。そして、中学生くらいから「ヴァイオリニストになりたいな」と思い始めました。
―― その当時、こういうことを意識して練習しようとか、こういうことを積み重ねようとか、意識されていたことはありましたか?
練習は大嫌いでした(笑)。でもスズキ・メソードのときは、年に1回の発表会でみんなの前で演奏するのが本当に好きでした。ヴァイオリンを弾くことでほめてもらえる、それがうれしくて、楽しくて、続けていたというところです。
中学生になると原田先生のもとでお世話になりながらいろんな曲を練習していましたが、中学校でもふつうに学校生活を楽しんでいましたね。もちろん音楽は一生懸命やっていたんですが、音楽漬けの毎日というよりは同級生と同じように学校に通って、楽しく過ごしていた思い出が残っています。
数々の出会いと、得た音楽
―― その後、留学されてレジス・パスキエ先生に師事されていますね。先生との出会いはどんなものでしたか?
出会いはいしかわミュージックアカデミーでした。
中学1年生から8年間毎年参加していたのですが、毎回パスキエ先生にもレッスンしていただいていました。自分がレッスンを受けるだけではなく、ほかの方のレッスンも聴講させていただいたりもしましたね。
パスキエ先生は音楽の引き出しが多くて、同じ曲でもみんなに同じことを言うことはなく、その人その人の個性を伸ばそうとしてくださる、そしてそれがすごく上手な先生だなという印象がありました。
健次先生にしても原田先生にしても、細かく指導するというよりは生徒自身に考えさせる先生だったんです。それはそれで非常に難しいところもありまして、自分で考えないと上手くはなれません。でもそういうタイプの先生方に育てていただいたので、留学先で師事する先生も自由にさせてくれる先生がいいなと思っていました。
パスキエ先生は音楽的なヒントやアイデアを示してくださる先生でしたし、先生の音楽性もすごく好きで共感できます。先生と一緒に勉強することは、自分にとって新しいものがまた見えてくるんじゃないかなと思いました。
―― 先生から受けた教えで心に残っていることはありますか?
パスキエ先生は肯定してくれる一方で考えさせようと導いてくださる先生なんですが、「練習では考えるけど、本番は自由に弾きなさい」と言われたことがありました。わたしは緊張しやすいタイプなんですが、そのひと言で自由に弾ける気がして、本番でも解放されたような気持ちになったことがありました。
―― 留学はどのくらいの期間だったんですか?
コロナ禍で途中で切り上げざるを得ませんでした。2020年の2月に日本での演奏会のために帰国したら、パリに戻れなくなってしまって……。コロナ中はビデオミーティングアプリのZoomでレッスンをしていただいたこともあり、いまでも先生が日本にいらしたときや、わたしがヨーロッパにいったときにレッスンを受けることもあります。
―― 国内外で数々のオーケストラや指揮者と共演を重ねてこられたと思いますが、特に感銘を受けたアーティストを教えてください。
これまでいただいた機会は、どれもすばらしいものばかりで選べませんね。ただ“圧倒的な経験”というと、マルタ・アルゲリッチさんとの共演です。一緒にフランクのヴァイオリン・ソナタを弾かせていただきました。2022年に「アルゲリッチ&フレンズ イヴリー・ギトリスへのオマージュ」というコンサートで、すみだトリフォニーホールで2回、高崎芸術劇場で1回の合計3回弾かせていただきました。
「アルゲリッチって本当に実在するんだ」という感じで、最初は圧倒されてしまいました。存在感がすごかったです。あまりに存在感の大きさに、初共演となった2022年6月の公演では、自分を出しきれなくて。
なんだか遠慮してしまって、すごく後悔が残りました……。遠慮した自分の弱さをあとで本当に悔いました。その後、11月にもう一度共演の機会をいただけると決まったときに、もう失敗してもいいから、音楽的に彼女にぶつかって行こう、遠慮せずぶつかっていこう、と決心したんです。
弾き終えたあと、アルゲリッチさんが舞台上で「すごく良かったじゃない、楽しかったよ」って言ってくださったんです。その言葉に救われました。一緒の時間を過ごせた、同じ時間を共有して、彼女の音を一番近くで聴けた、そういう経験だけでもすばらしい時間を過ごせたなと思います。
アルゲリッチさんとのリハーサルは、6月のときは1回すべて通す程度のものがありましたが、11月はもうゲネプロもしないほうがいいかなと思って、ぶっつけ本番です。またビビっちゃったりするよりは、もうぶつかろう! みたいな。でもそれが逆に良かったように思います。
2年に一度の自主企画―― わたしヴァイオリンを聴いて!
―― 2025年3月18日(火)に東京・紀尾井ホールでリサイタルをなさいますね。
実はこれ、自主企画なんです。
2017年にピアニストの江口玲さんと紀尾井ホールでデビュー・リサイタルを開催したのですが、それが第1回目の自主企画でした。そのときはデビューということもあり“自分が弾きたいものを、江口さんの胸を借りて”という感じだったんです。やはり紀尾井ホールは演奏者にとって特別な舞台なので、そこで弾けるということだけでも自分にとって大きなできことでした。
こうした活動を2年に1回やっていけたらいいなと思って、次の2019年の時はバッハの無伴奏ヴァイオリン作品全曲をやりました。その次の2021年は、本当は今回共演するシュトロッセさんと演奏する予定だったんですが、当時はコロナ禍で入国制限が一番厳しい時期だったので、彼が来日できなかったんです。急遽、阪田知樹さんが引き受けてくださったので、阪田さんとリサイタルをしました。そして2023年は、辻彩奈の〈8シーズンズ〉として室内楽を組み、ヴィヴァルディの《四季》とピアソラの《ブエノスアイレスの四季》を演奏しました。
この自主企画はこれまでに、無伴奏・リサイタル・アンサンブルとやってきたのですが、今年はリサイタルです。
シュトロッセさんと初めてお会いしたのは、2019年のフランス・ナントでのラ・フォル・ジュルネでした。そのとき初めてフランクのヴァイオリン・ソナタを一緒に弾いたんですが、もう最初の一音からすばらしくて、感動しました。「こんなすばらしい音を出してくれるのか」ってぞわぞわしたというか、「またこの方と一緒に弾いていけたらいいな」と思ったんです。
翌年2020年2月にも彼とリサイタルをすることができて、今回はそれ以来の共演となります。
―― コロナを乗り越えてやっと実現するんですね。
そうですね。2020年に共演したときに「いつか日本で一緒に弾いてくれませんか?」と聞いたら、「ぜひ! いつでも一緒に弾こう」って言ってくださったんです。
でも2021年は来日できずじまいだったので、今回のリサイタルではやっと、みなさんにもシュトロッセさんと一緒の音楽を聴いていただけます。なので、彼と最初に共演したフランクをプログラムにいれました。わたしもいろんな経験をさせてもらったので、2019年といまでは自分の中でもフランクが変化してきていると思うし、2年に1回の機会でみなさんに自分自身の成長を見ていただきたいという思いもあります。
―― ルクーのヴァイオリン・ソナタがプログラムに入っていますね。非常に魅力的なプログラムだと感じます。
自主企画なので、自分がいま挑戦してみたい作品に取り組める機会でもあります。ルクーのヴァイオリン・ソナタはずっと弾いてみたかった作品ですし、シュトロッセさんと共演できるせっかくのチャンスなので選びました。ただ、ルクーはまだ一般にはなじみのない作品なので、これをきっかけに知ってもらえたらいいなと思います。
ルクーもフランクも、ベルギーの大ヴァイオリニスト、ウジューヌ・イザイに捧げられているので、イザイの作品も入れてプログラムを組みました。
―― キラキラしたプログラムですね。とっても楽しみです。そしてこのリサイタルの4日後にあたる3月22日(土)、東京フィルハーモニー交響楽団との共演でグラズノフのヴァイオリン協奏曲をお弾きになるんですね。グラズノフの協奏曲はこれまでも演奏されたことはありましたか?
2024年5月に、中国の蘇州交響楽団と演奏したのが最初でした。そして同年10月に九州交響楽団との共演でもこの作品を演奏したのですが、指揮がシャルル・デュトワさんで、それは私の中で昨年のハイライトでした。デュトワさんと共演して彼の音楽を間近で感じられたということは、これからの私の音楽人生にとってものすごく大きな経験だったと思います。
デュトワさんは音楽的に非常に厳しくて、まったく妥協がないんです。交響曲のリハーサルを見学していたのですが、本当に「この音」と思った音が出るまで、何度も何度もやり直すんですよね。そのくらい、こういう音楽をやりたい、こうしたいってものが明確にある。彼の言葉にオーケストラが反応して、驚くほど音が変わっていく瞬間がすごくおもしろいなと思いました。
だからといって、奇をてらったりすることはまったくないんですよね。楽譜に書いてあることしか言っていないのですが、音楽に真摯に向き合って、忠実にスコアを読んでいくデュトワさんの姿勢は学びになりました。
よく“慣例化されて楽譜に書いてないことを演奏していること”がありますが、もう一度楽譜を見直してみると、当たり前だけどそんなことは書いていない。見落としている部分もたくさんあることに気付かされて、本当に勉強になりました。
―― 4月8日(火)には「東京・春・音楽祭」の人気企画「東博でバッハ」に登場されますね。バッハは辻さんにとってどんな作曲家ですか?
ヴァイオリンを弾くうえで、バッハの6曲ある《無伴奏ヴァイオリンのための作品》は切っても切り離せない存在だと思います。2019年に全曲演奏したことは、自分にとってもすごく大きなできごとでした。それからまた時間が経ってわたし自身もだいぶ変化してきたので、バッハの弾き方や感じ方もまた変わってきています。
こうやってまとめてすべて弾くのは2019年の全曲演奏以来ですが、あのときは結構いっぱいいっぱいだったところもありました。いまはもう少し余裕も出てきて、バッハの音楽を楽しみながら弾けるんじゃないかなと思っているところです。少し即興的なこともやってみたいと思ってるんですよ、ほんの少しですけれど。
―― ここまでいろいろお話をおうかがいしてきて、大変お忙しい毎日を過ごされていると思うのですが、リフレッシュ方法などありますか?
長い休みの時期などはしばらくヴァイオリンを弾かないときもありますね。いろんなタイプの方がいると思いますが、わたしは離れるときは楽器から離れるタイプです。温泉が好きなので、お休みのときは温泉に行ったりしています。
料理をするのも好きなので、毎日ご飯を作ることで気分がリセットされますね。
―― 得意料理はなんですか?
何だろう……。この前、初めてビーフシチューを作ったんですよ。ホーローの鍋が家にあって、ずっと煮込み料理を作ってみたいと思っていたんですけれど、めちゃめちゃおいしかったです。
練習しなくてもいい日に1日かけて作って、3時間くらいかかりました。前夜からお肉をワインにつけこんで、小麦粉炒めて、結構本格的なやつです。
―― すごい、すごい! おいしそうですね
ファン、共演者との交流が原動力に
―― 演奏にあたっていつも大切にされていること、ヴァイオリンという楽器に感じている魅力を教えてください。
ヴァイオリンって、無伴奏を弾くとき以外は必ず共演者がいる楽器です。その相手がオーケストラでも、ピアノであっても、また室内楽の場合もそうですが、相手に寄り添うような姿勢を大切にしています。例えばヴァイオリン・ソナタだったら、ピアノが音楽的な部分の多くを担ってくれています。全体を構成する役割はピアニストが担ってくれているんです。 ピアニストがどういう音楽を作ってきてくれたかによって、自分の音楽も変わりますし、相手がこうしてくれたから自分はこういうふうに弾こうかなとか、相手がどういうふうに弾きたいのかなとか、共演者に柔軟に寄り添って、一緒に音楽を作っていくということをいつも大切に考えています。
―― 使用楽器についても聞かせてください。イエロー・エンジェル(※宗次徳二氏が代表をつとめるNPO法人)から貸与されたグァダニーニを使われていますね。
宗次ホールの宗次徳二さんと初めてお会いしたのが小学5年生のときだったと記憶しています。わたしが東海地方出身ということもあって本当に温かく見守ってくださって、ご支援していただいているのですが、初めて楽器をお借りしたのは中学1年生のときでプレッセンダという楽器でした(※19世紀イタリア・トリノの名工プレッセンダはストラディヴァリウス、デルジェスに代わる存在になるといわれている)。
いまのグァダニーニをお借りするようになったのは2017年で、今年でもう8年目になります。本当に長く使わせていただいているのですが、この楽器をわたしの前に使っていたのが男性だったので、最初は鳴らし方が難しく、わたしじゃぜんぜん太刀打ちできませんでした。きちんと楽器を鳴らすことができるようになるまですごく時間がかかりましたし、長く試行錯誤していましたが、最近やっと思うような音が出るようになってきています。自分の分身になってくれているな、という感じがあります。
―― ららら♪クラブの読者はクラシック音楽初心者の方が多いのですが、おすすめの音楽の楽しみ方を教えてください。
クラシック音楽やコンサートホールって入りにくいというイメージをお持ちの方も多いと思うんですが、実はぜんぜんそんなことはないんですよね。ジーンズで来場してもいいですし。静かに聴いていなければいけないコンサートもありますが、しちゃいけないことがたくさんあるわけではないんですよ。だから、ちょっといいレストランに行くくらいの気持ちで、コンサートホールにたくさん足を運んでいただきたいなと思っています。
いまはYouTubeなどのSNSでなんでも聴けちゃう時代ですが、やっぱり生の音を聴くというのは、その音の迫力ひとつとっても特別な体験です。ホールの雰囲気とか、本番の集中した空気感だったり、そういうものも含めてひとつの音楽だと思うので、やっぱり生の演奏会に来ていただきたいなという思いがあります。
クラシック音楽は想像するほど難しくはないですし、意外と聴いたことあるなって曲も多いと思うので、肩ひじ張らずに気軽に、自分へのご褒美みたいな感じで足を運んでもらえたらと思います。
―― 最後に辻さんのコンサートに足を運んでくださるファンの方々へひとことお願いいたします。
コロナ禍での無観客公演や配信公演を経験してとくに感じたことなのですが、弾いている演奏者だけじゃなくて、お客さまも一緒にコンサートの空気感を作ってくださっているんだな、と。お客さまがいてこその演奏者なのだというのを、あらためて思いました。反応が返ってくることが当たり前だと思っていましたが、当たり前じゃないんだということをあの期間に知ったので、毎回足を運んでくださる方や、遠方からもコンサートに駆けつけてくださる方々には本当に感謝しています。SNSなどでも温かいメッセージをいただいて、とてもうれしく思っています。
3月18日(火)のコンサートは自主企画のコンサートなので、自分自身でも2年間の成長を感じられる場でもありますし、いつも応援してくださる方や、成長を見てくださる方へ感謝の気持ちを演奏を通して伝える場でもあります。みなさんとそういった時間を一緒に過ごせたらいいなと思っているので、ぜひ聴きにきてください。
2年に1回の自主企画を必ず聴きに来てくださる方、いつも「2年後は何をやるの?」って聞いてくださる方……そういった存在がすごくうれしいです。
―― 常連さんがいらっしゃるんですね。
そうですね、いつもわたしのことを覚えてくださっていることがありがたいですし、うれしいですね。
<文・取材 尾崎羽奈>
今後の公演情報

公演名 | 辻 彩奈ヴァイオリン・リサイタル |
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日時 | 3月18日(火) 19:00開演(18:30開場) |
会場 | 紀尾井ホール |
出演 |
[ヴァイオリン]辻彩奈 [ピアノ]エマニュエル・シュトロッセ | プログラム |
イザイ:悲劇的な詩 Op.12 フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 ルクー:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 |
チケット | 全席指定:S席5,000円 A席3,000円 |
詳細 | 詳細はこちらから |
お問い合わせ |
カジモト・イープラス TEL:050-3185-6728 |

公演名 | 辻 彩奈ヴァイオリン・リサイタル |
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日時 | 3月16日(日) 14:00開演(13:30開場) |
会場 | 日本昭和音楽村 江口夜詩記念館 水嶺湖ホール |
出演 |
[ヴァイオリン]辻彩奈 [ピアノ]エマニュエル・シュトロッセ | プログラム |
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第17番 ハ長調 K.296 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調《春》 Op.24 イザイ:悲劇的な詩 Op.12 フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 |
チケット | 全席自由:3,000円 |
詳細 | 詳細はこちらから |
お問い合わせ |
日本昭和音楽村 TEL:0584-45-3344 |

公演名 | 響きの森クラシック・シリーズ vol.83 |
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日時 | 3月22日(土) 15:00開演(14:15開場) |
場所 | 文京シビックホール 大ホール |
出演 |
[指揮]ケンショウ・ワタナベ [ヴァイオリン]辻󠄀彩奈 [管弦楽]東京フィルハーモニー交響楽団 | プログラム |
ベルリオーズ:序曲《海賊》 Op.21 グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 Op.82 ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調《田園》 Op.68 |
チケット | 全席指定:S席6,000円 A席5,000円 B席4,000円 |
詳細 | 詳細はこちらから |
お問い合わせ |
東京フィルチケットサービス TEL:03-5353-9522(平日10:00~18:00) |

公演名 | 東京・春・音楽祭 ミュージアムコンサート東博でバッハ vol.73 辻彩奈(ヴァイオリン) |
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日時 | 4月8日(火) 19:00開演(18:30開場) |
場所 | 東京国立博物館 法隆寺宝物館エントランスホール |
出演 | [ヴァイオリン]辻󠄀彩奈 | プログラム |
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 ホ長調 BWV1006、第1番 ロ短調 BWV1002、第2番 ニ短調 BWV1004 権代敦彦:《ポスト・フェストゥム》ヴァイオリンのための |
チケット | 全席自由:4,000円 |
詳細 | 詳細はこちらから |
お問い合わせ |
東京・春・音楽祭サポートデスク TEL:050-3496-0202 |
辻彩奈(Ayana Tsuji)
1997年岐阜県生まれ。18歳にて2016年モントリオール国際音楽コンクール第1位、併せて5つの特別賞(バッハ賞、パガニーニ賞、カナダ人作品賞、ソナタ賞、セミファイナルベストリサイタル賞)を受賞。3歳よりスズキメソードにてヴァイオリンを始め、10歳時にスズキテンチルドレンに選ばれ、東京、名古屋、松本にて独奏を実施。2009年には全日本学生音楽コンクール小学校の部にて全国第1位、東儀賞、兎束賞を受賞。その他国内外のコンクールで優勝や入賞の実績を持つ。
11歳にて名古屋フィルハーモニー交響楽団と共演後、多くの国内外のオーケストラと共演。これまでにモントリオール交響楽団、スイス・ロマンド管弦楽団、トゥールーズ・キャピトル管弦楽団、コンチェルト・ブタペスト、チェコフィルハーモニー室内合奏団、ベトナム国立交響楽団、札幌交響楽団、山形交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、群馬交響楽団、NHK交響楽団、読売日本交響楽団、東京都交響楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、横浜シンフォニエッタ、中部フィルハーモニー交響楽団、セントラル愛知交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢、京都市交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、日本センチュリー交響楽団、、関西フィルハーモニー管弦楽団、大阪交響楽団、広島交響楽団、九州交響楽団と共演している。
また室内楽においては、12歳にて初リサイタルを行って以降、宗次ホール、サラマンカホール、紀尾井ホール、ザ・シンフォニーホールにてリサイタルを実施。これまでにチェロの堤剛、佐藤晴真、ピアノの江口玲、伊藤恵、佐藤卓史、萩原麻未、田村響、阪田知樹、藤田真央、マルタ・アルゲリッチ、エマニュエル・シュトロッセの各氏らとの共演を行っている。
2017年「岐阜県芸術文化奨励」、2018年「第28回出光音楽賞」、2023年「ホテルオークラ音楽賞」を受賞。
ヴァイオリンを小林健次、矢口十詩子、中澤きみ子、小栗まち絵、原田幸一郎、レジス・パスキエの各氏に師事。
2019年4月、ジョナサン・ノット指揮/スイス・ロマンド管弦楽団とジュネーヴおよび日本にてツアーを実施し、その艶やかな音色と表現によって各方面から高い評価を得た。2020年、自らが権代敦彦に委嘱した「Post Festum」を世界初演。コロナ禍にあって国内公演の代役で幅広く活躍したことは、レパートリーを広く拡充すると共に、経験を深く積むことにつながった。2022年7月、辻彩奈&阪田知樹デュオ・リサイタルツアーを全国10か所で実施。表情豊かで鮮度の高いデュオを聴かせ、深化著しい二人が触発し合って生み出す音楽は、各方面よりとても熱狂的な称賛を受ける。使用楽器は、NPO法人イエローエンジェルより貸与のJoannes Baptista Guadagnini 1748である。