<5月15日 東京・三鷹市芸術文化センター ほか>箏アーティストのLEOが全国を巡るツアーを敢行! さまざまなアーティストとのコラボレーションを通じて、また音楽のジャンルを横断することで箏という楽器の魅力を拡張し続けてきたLEO。そんな彼の演奏を生で聴くことができるチャンス、お近くの方はぜひチェックしてみてください。公演に向けて今の思いを伺ったインタビュー付き!
<文・ららら♪クラブ編集部>
公演に寄せて
――Q. 今回は「LEO (箏) × CLASSIC ~箏リサイタル~」というタイトルで、プログラムには古典作品と現代作品が並んでいます。こうした、作品が作られた時代をクロスオーバーするようなスタンスというのは筝アーティストLEOさんの真骨頂だと思いますが、今回のプログラムを組むにあたって意識したこと、あるいはコンセプトがあれば教えてください。
音楽を学んだり、理解する上で、歴史的背景や作曲者、またその音楽のジャンルについて考える事は大切です。ただ、僕がプログラムを考えたり演奏する時には、あまりそういった点を意識しすぎず、シンプルな「音のつながり」を重視するようにしています。少し背伸びをした考えかもしれませんが、「今までにない箏の音楽を作りたい」という信念を持って、あえてジャンルの垣根を曖昧にした活動をしています。
持論ではありますが、和楽器の中でも箏は特に、色々なジャンルの音楽との相性がいい楽器だと感じています。箏はくり抜いた木に弦を張っている、という単純な構造だからこそ、ハープやギター、時にはピアノやヴァイオリンなど、様々な楽器の音色に寄せて弾く事ができるんです。
2、3年前までは、実は箏という楽器にコンプレックスを感じていました。三味線、琵琶、尺八といった、一音聴いたらすぐに分かるような特徴のある和楽器に比べて、箏の音色はアンサンブルの中でも馴染んでしまうので….。でも最近では様々なジャンルの演奏家の方とコラボを重ねていく中で、その “馴染みやすさ” こそが最大の武器であると気がついたんです。同時に、音色以外にも、間や弱音など、箏ならではの表現を使うことで、アンサンブルの中で「箏の存在感を際立たせる」技が少しずつ身についてきたように思います。
日本は長く鎖国状態にあったので、西洋の音楽知識を用いて日本の伝統楽器を演奏するという歴史は、まだ100年ちょっとしかありません。箏という楽器も、その歴史の中で目まぐるしい発展を遂げてきましたが、まだまだ見落とされている新しい表現の可能性が眠っている、と僕は信じています。僕が、日本の伝統的なレパートリーを演奏する一方、バッハをはじめとしたクラシックのレパートリーにも挑戦を始めたのは、日本とは異なる発展を遂げてきた西洋音楽から、今までなかった音楽性を吸収したい、という思いからでした。
今回のツアーのプログラムでは、そんな今の僕自身が考える「箏の伝統的な表現」と、「新しい表現」をたっぷりと聴いていただければ、という願いを込めて選曲しました。
――特に注目して欲しい曲などはありますか?「聴きどころ」を教えてください。
今回のプログラムは、精神的に、そして何よりも身体的にも、今の自分自身のキャパシティのギリギリを攻めた内容です。どの曲も聴きどころ、と言いたいところですが、まずソロの曲で特に意識しているのは宮城道雄作曲の「手事」です。この曲は宮城道雄作品の中でも、特に技術的な要求の高い曲で、僕がこの曲をコンサートで演奏するのは、実はプロになってから今回が初めてです。箏の世界ではあまりにも有名な曲なのですが、今の自分にどういった演奏ができるか、是非聴いていただきたいです。
そしてもう一曲、ピアノとのデュオでの演奏する、伊福部昭作曲の「日本組曲」も思い入れの強い曲です。伊福部昭先生が20歳の時にピアノソロ曲として書かれた曲で、日本人に刺さるメロディーと熱のあるリズムが特徴の曲でもありますが、無駄な音が一切書かれていない “引き算の美学” も、箏で弾くことの意義を感じています。去年もコンサートで弾いていましたが、本番を重ねてようやく今の自分のできるベストな演奏に近づけてきたので、お客さまに生で聴いていただけるのが楽しみです。
また、秋にはヴァイオリンを加えたトリオ編成で、プログラムも少し変えてお届けする予定です。こちらでも楽器や自分自身の可能性のギリギリに挑戦したいと思っているので、ご期待ください!
――Q.今回はピアノとのデュオやピアノとヴァイオリンとのトリオという編成でツアーを回れられますが、共演者の方々とはどんな風に音楽作りをされますか?
箏とピアノのデュオ、そしてヴァイオリンが加わったトリオ編成には、僕自身とても魅力を感じています。といいますのも、箏はピアノやヴァイオリン、双方の楽器と構造的に共通点があるので、音の重なりがとても自然なんです。また、それぞれの楽器ならではの個性がミックスすることで、2つないしは3つの楽器とは思えないほどに、広がりのある世界観と響きが生まれてくるように感じています。
今回共演するピアノのロー磨秀さん、ヴァイオリンのビルマン聡平さんとは既に何度か共演経験がありますが、お二人ともクラシックを土台に他のジャンルの音楽にも挑戦し続けているアーティスト、というところにシンパシーを感じています。例えばリズムの取り方一つを取っても、多様なアプローチができる方々なので、アンサンブルをしていても、この上なくいつも楽しいのです。リハーサルでも、それぞれがざっくばらんに意見を出し合い、同じ曲の再演であっても常に新しいアイデアが生まれてきます。
――Q. ツアーを通じての目標や、このツアー中に新たに挑戦することはありますか?また、ツアーで楽しみにしていることがあれば教えてください。
今回のツアーでは初挑戦する楽曲がいくつかあるのですが、新しい曲に挑戦する時はいつも、その楽曲が持つ魅力はどんなところか、曲を通してどんな音楽を届けたいか、ということを意識しています。初披露ということで緊張感もありますが、皆様にお届けできるのを楽しみにしています。
また、プログラムには「この曲を箏で、この編成で演奏すると面白いのではないか」と想像を巡らせながら選曲しましたが、今後に向けて蓄えている、新しい編成や新しいレパートリーの構想がたくさんあります。いつも僕は、お客様の前で演奏することで、その経験から新しいアイディアが湧いてくる事が多いので、今回のツアーでの演奏やお客様との音楽を通じたコミュケーションを経て、どんどんと進化した音楽を届けられればと考えています!
――Q. ご来場いただく方へのメッセージをお願いいたします。
今回箏を初めて生でお聴きいただく方も、そうでない方も、まだ聴いた事のない音世界をお届けできると思っております!進化し続ける箏の音楽を是非生で聴いてきただければと思います。皆様と会場でお会いできるのを楽しみにしております!
公演名 | LEO (箏) ×CLASSIC ~箏リサイタル~ |
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日程 |
5月15日(日) 14:00開演 東京・三鷹市芸術文化センター 出演者:[箏]LEO [ピアノ]高橋優介 5月22日(日) 14:00開演 6月12日(日) 14:00開演 9月18日(日) 14:00開演 9月24日(土) 14:00開演 |