<2025年1月4日 兵庫県立芸術文化センター> 年が改まり、目の前に開ける年を、日本を代表するヴィルトゥオーゾたちが奏でる世界を共有できるとは、なんと幸せなことか。2025年は阪神・淡路大震災から30年の節目でもあるだけに、ここで体感できる音楽と言葉は、慈しみにあふれ、深く染み入るものになるだろう。
作曲家 三枝成彰が、日本全国のプロオーケストラからコンサートマスター、主席奏者など、日本を代表する名手=「ヴィルトゥオーゾ」たちが集結したらどれだけの音を創り出せるか、という可能性を求めたことから生まれた、ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラ。指揮者の大友直人との1991年9月の試演を経て、翌年に第1回の公演をスタートさせてから30年以上も、息の長い公演が続いている。当日の三枝のプレトークにも、耳を傾けたい。
2013年1月から「ニューイヤーコンサート」となってからも、その核のひとつとなっている曲目が、鎮魂の思いをこめた《震災のためのレクイエム》だ。神戸・西宮出身の三枝にとって、1995年1月に起きた震災では友人知人にも思いを馳せ、自分ごととして受け止めたことだろう。98年には震災で亡くなられた方々を追悼する目的で「1000人のチェロ・コンサート」を開催し、国内外から集まったプロ・アマチュアのチェロ奏者1,000人が《チェロのためのレクイエム》を初演した。2013年にチェコで指揮者の小林研一郎とチェコ・フィルハーモニー管弦楽団が共演した際、オーケストラ作品として改訂したのが《震災のためのレクイエム》だ。この30年の間に、東日本大震災はじめ、世界各国で大きな震災が起こり、2024年元日の能登半島地震の記憶もまだ新しい。失われた命を、そして今を生きる人々の心を慰めるレクイエムを、大友直人の指揮の下、ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラが歌い上げる。
《さくらさくら》《リンゴの唄》《上を向いて歩こう》 などの「日本の歌」は、小林沙羅(ソプラノ)、村松稔之(カウンターテナー)、ジョン・健・ヌッツォ(テノール)、樋口達哉(テノール)が歌う。世代を超えて歌い継がれてきた、美しく、郷愁を誘うメロディー、歌詞は新たな年が穏やかに明るいものであるよう、祈るような気持ちにさせてくれるだろう。
舞台を締めくくるJ.ブラームスの交響曲第1番 ハ短調 Op.68は、ベートーヴェンの9つの交響曲を意識するあまり厳しく推敲を重ね、着想から完成まで21年という歳月を要したという。ベートーヴェンの交響曲の系譜を正当的に受け継いだ名作として「ベートーヴェンの交響曲第10番」とも呼ばれる、「暗から明へ」という明快な構成にして厳かで美しいオーケストレーションに浸ってみてほしい。過去から未来へと思いを馳せつつ、コンサート全体から“大切な何か”を受け取る。そんな時間になるに違いない。
<文・小畑智恵>
公演名 | ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラ 第13回兵庫公演 名手たちの交響楽団 ニューイヤーコンサート ~阪神・淡路大震災30年メモリアルコンサート~ |
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日時 | 2025年1月4日(土) 16:30開演(15:45開場) |
会場 | 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール |
出演 | [指揮]大友直人 [ソプラノ]小林沙羅 [カウンターテナー]村松稔之 [テノール]ジョン・健・ヌッツォ、樋口達哉 [管弦楽]ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラ [プレトーク」三枝成彰 |
プログラム | 三枝成彰:震災のためのレクイエム 三枝成彰、黒田賢一編曲:日本の歌 《さくらさくら》《リンゴの唄》《宵待草》《赤とんぼ》《月の沙漠》《赤い靴》《雪の降る街を》《上を向いて歩こう》 ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68 |
チケット | 全席指定:S席6,000円 A席5,000円 B席4,000円 C席3,000円 D席1,000円 |
お問い合わせ | メイ・コーポレーション TEL:03-3584-1951(平日10:00~18:00) |