＜5月15日　所沢市民文化センター ミューズ　ほか＞　世界の第一線で活躍するヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーン。かくいう筆者も彼女の大ファンである。ハーンのすばらしさは鉄壁の演奏テクニック、幅広いレパートリー、多彩な表現力、そして音楽への非常に深い造詣に裏付けされた解釈、と枚挙にいとまがない。
　王道プログラムから隠れた名曲まで、そしてバロック作品から現代曲まで、彼女が紡ぎだす音楽は説得力を持って迫ってくる。音楽に対する飽くなき追求とたゆまぬ鍛錬……彼女の演奏からあふれ出る音楽愛は聴く者の心をつかんで離さない。
　昨年に引き続き、今年もヒラリー・ハーンの日本ツアーが予定されている。今年はブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会である。ブラームスはその作風が円熟を迎えた時期に3曲のヴァイオリン・ソナタを残した。繊細で優しく、しかしある面では気難しかったブラームス。3曲のヴァイオリン・ソナタはいずれもそんな彼の心の奥底をそっと吐露するような珠玉の作品である。この美しく、繊細で、しかし力強く、時には涙をもにじませるソナタを彼女はどう描き出すのだろうか。ぜひ一聴されたい。

＜文・尾崎羽奈＞