デュオ

 11月20日の放送は「三浦文彰×辻󠄀井伸行 “デュオ”の秘密」と題して、ヴァイオリニスト三浦文彰とピアニスト辻井伸行のデュオをゲストに、作品としての“デュオ”の魅力を語られていました。今回のキーワードも“デュオ”とし、その特徴について、また番組で演奏された作品についてもご紹介します。

クラシックにおけるデュオ

 デュオとは二重奏、つまり2人の奏者で演奏できる曲、もしくは2人の奏者のグループを指します。津軽三味線の吉田兄弟、ピアノ連弾のレ・フレールなど、兄弟による同じ楽器でのデュオも人気ですね。そして今回のゲストの2人や、オイストラフとリヒテルのように、“ヴァイオリンとピアノ”といった別々の楽器のデュオ・アーティストももちろん多くいます。
 また、“二重奏曲”と曲名を表すのにもデュオという言葉は使われます。たとえばモーツァルトの《ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲》は《Duo for Violin and Viola》となるわけです。

2つのパートの対等性

 番組でも取り上げられていたように、一般的に2つのパートが対等であることが“デュオ”と呼ばれる基準になっているようです。例えば、ピアノ伴奏つきの歌曲をあまりデュオとは呼びません。一方で、“ヴァイオリン・ソナタ”など、略題の中には一つの楽器名しかありませんが、実際にはヴァイオリンとピアノが対等に演奏をする楽曲も多くあります。三浦さんも語られていましたが、それらの原題の多くは“ピアノとヴァイオリンのためのソナタ”となっており、どちらに主従関係の重きが置かれているということはありません。
 ベートーベンが作曲した《ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」》は、作曲者自身による「ほとんど協奏曲のように」というコメントが残っています。きわめて協奏的(コンチェルタント)に書かれており、まさにこの“協奏的”という言葉が示すように、時に協調し合い、時に競い合うように描かれているのです。
 この、デュオにおける2つのパートの対等な関係性を筆者の作品、オーボエとピアノのデュオの演奏で確かめてみてください。作曲時は、できるだけどちらのパートにも見せ場を作ることを意識しました。

一色萌生《心象スケッチ-イーハトーヴに寄せて》より「カッコウのソナチネ」
オーボエ:戸田智子
ピアノ:箭野純子

フランク《ヴァイオリン・ソナタ》について

 番組の最後では、ゲストの2人がフランクの《ヴァイオリン・ソナタ》を熱演しました。もちろんこの曲も、2つのパートが協調し、競い合う傑作です。このソナタは、偉大なヴァイオリニストであるウジェーヌ・イザイの結婚祝いとして作曲されました。イザイと妻でピアニストのボルド・ペーヌはこの曲を結婚式で初演したといいます。
 第1楽章は、夢見心地なピアノの和音により始まり、ヴァイオリンが甘い第1主題を奏でます。第2主題はピアノの独奏で、どちらのパートも主役なのだと感じさせられます。第2楽章は激しく技巧的な楽章。ここで紡ぎだされたモチーフは、以降の楽章でも使われ、フランク流の“循環形式”が垣間見えます。第3楽章は、冒頭はヴァイオリンのカデンツァ的な独奏が目立ちますが、後半は、はかなくも美しい音楽が徐々に“形”を表します。番組でゲストのお二人が演奏した第4楽章は、2つのパートがカノンの形で主題を奏でる美しい曲。互いに絡み合い、やがて熱量を伴いクライマックスへと誘います。
 甘美さと激しさとはかなさ、優しさを兼ね備えたこの作品はまるで人生のよう。こんな曲を結婚式で初演とは、本当にロマンチックですね。

(文・一色萌生)

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