ヴァイオリン協奏曲

作曲家珠玉の1曲、ヴァイオリン協奏曲

 ヴァイオリン協奏曲は、古くはバロック時代から現代にいたるまで、多くの作曲家が手掛けてきました。ヴィヴァルディ(有名な《四季》など)、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキー、シベリウス、ベルク・・・。こうしてみると、優れたヴァイオリン協奏曲は、作曲家がその一生のうちに1曲のみ残したものであることが多いように思います。一般に4大ヴァイオリン協奏曲といわれるベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキー。それらの作曲家はピアノ協奏曲を複数作曲していますが、ヴァイオリン協奏曲は1曲しか作曲していません。その1曲のなかに作曲家は、ソロ・ヴァイオリンの魅力を余すところなく詰め込んでいます。

ヴァイオリンのソロとしての役割

 さて、皆さんはこう思ったことはないでしょうか?「ヴァイオリンをなぜわざわざソロ楽器にするの?オーケストラの中にもともとたくさんいるじゃないか」と。その答えは、ソロのヴァイオリンとトゥッティ(総奏)のヴァイオリンとでは、まったく別の楽器といっていいほど“音色が違う” からです。トランペットなどの管楽器は、音量を上げるために、時に倍管(人数を倍に増やす)といったことをします。一方で、ヴァイオリンなどの擦弦楽器(弓で擦って音を出す弦楽器)は、倍音の関係で、演奏人数によって音量が大きく変わるということはなく、ソロとトゥッティではむしろ音色に大きな違いがでてきます。ソロのヴァイオリンの音色のほうが、複数のヴァイオリンの音色よりもソリッドに響き、時に突出して聴こえます。例えばヴァイオリン協奏曲でなくても、交響曲などで弦楽器をソロで指定する、ということはよくあります(ブラームス《交響曲第1番》など)。ヴァイオリン協奏曲は、まさにソロ・ヴァイオリンのみずみずしい音色と、トゥッティの温かく重厚な音色、その両方が存分に味わえる、贅沢な楽曲ジャンルなのです。
(文・一色萌生)

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