●アルヴァマー序曲(J.バーンズ)
アレグロ部分の華やかさ、雄大さと、アダージョ部分の高貴で美しい旋律が見事な対比を成している。クライマックスの立体的なサウンドは、まさにバーンズの真骨頂。ちなみに、日本では作曲者指定のテンポより速めで演奏されているんだとか。
●アルセナール(J.ヴァン・デル・ロースト)
ヴァン・デル・ローストの作曲したコンサート・マーチの中でも抜群の人気を誇る作品。英国風の堂々としたマーチと、流麗なトリオで構成されている。マーチ部分では、様々な楽器に旋律が受け渡されていく様子に注目してほしい。
●アルメニアン・ダンス パート1(A.リード)
アルフレッド・リードの代表作であり、全日本吹奏楽コンクールの自由曲としても長年人気を博している。5つのアルメニア民謡をメドレー形式でまとめ上げた作品で、吹奏楽という編成をフルに生かした、色彩的なサウンドが特徴。
●ウィークエンド・イン・ニューヨーク(P.スパーク)
イギリス人である作曲者が、初めてニューヨークの街を歩いたときに出会ったジャズの響きをふんだんに取り入れて作曲した作品で、《パリのアメリカ人》ならぬ《ニューヨークのイギリス人》ともいうべき、カッコよくてオシャレな1曲。
●エル・カミーノ・レアル(A.リード)
日本では「エルカミ」の愛称で親しまれてきた、《アルメニアン・ダンス》と並ぶリードの代表作。ラテン的な響きに満ちた本作のタイトルはスペイン語で「王の道」という意味で、スペイン植民地時代のカリフォルニアに建設された長い街道を指す。
●大阪俗謡による幻想曲(大栗裕)
神秘的な序奏に続いて、天神祭りの地車(だんじり)囃子や、生國魂神社の獅子舞に着想を得た主題が次々に現れる。オーボエやフルートが切々と唄う中間部を経て、祭りの情景が再現される。大阪の祭りの熱気を肌で感じられる作品。
●オリエント急行(P.スパーク)
豪華寝台列車の代表格とも言われるオリエント急行。出発駅のにぎわいや、機関車の車輪が徐々に動き出し、汽笛を鳴らして列車が走り出す様子から、優雅な旅のひととき、そして到着駅のホームにゆっくりと列車が入ってゆく姿までを克明に描写している。
●音楽祭のプレリュード(A.リード)
1957年にアメリカの大学の委嘱で作曲された作品。日本では1970年の全日本吹奏楽コンクールの課題曲に選ばれて一躍人気となった。印象的な和音の響きをもつファンファーレは、音楽祭の開幕を告げるにふさわしい。
●交響的断章(V.ネリベル)
チェコ出身の作曲家、ネリベルの代表作。ユニゾンを多用しつつ、楽器の重ね方を変化させて音色を細やかに変化させる書法と、きらめく響きをもつ鍵盤打楽器の多用によって、吹奏楽のオーケストレーションに大きな転換点をもたらした。
●呪文と踊り(J.B.チャンス)
息の長い旋律による「呪文」の主題と、リズミカルな「踊り」の主題が様々に姿かたちを変えながら交互に現れ、やがて強烈なクライマックスへとなだれ込む。「踊り」の主題を支える、打楽器セクションの活躍が光る作品である。
●吹奏楽のための第一組曲(G.ホルスト)
吹奏楽というジャンルにおける不朽の古典。〈シャコンヌ〉〈インテルメッツォ〉〈マーチ〉の3曲からなり、〈シャコンヌ〉の主題のモチーフが全曲にわたって様々な形で登場する。叙情的な作品でありながら、対位法を駆使して緻密に書かれている。
●吹奏楽のための第二組曲(G.ホルスト)
さまざまなイングランド民謡を引用した組曲。軽快な〈マーチ〉、もの悲しい〈無言歌〉、リズムが愉快な〈鍛冶屋の歌〉と続き、終曲〈ダーガソンによる幻想曲〉では滔々と流れる旋律と《グリーンスリーヴス》が立体的に折り重なる。
●吹奏楽のための民話(J.コーディル)
吹奏楽部経験者にとっては「なつかしの名曲」ともいうべき作品であり、哀愁漂う民謡風の主題は、日本人の琴線に触れるものがある。物語性のある変化に富んだ曲調で、比較的演奏が易しい作品であることから、長きにわたり親しまれている。
●センチュリア序曲(J.スウェアリンジェン)
スウェアリンジェンの作品も多数出版しているバーンハウス社の創立100周年を記念して書かれた作品。スピード感のあるキャッチーなアレグロと、高貴なコラールとの対比が美しく、日本の吹奏楽ファンの青春を彩り続けている。
●たなばた(酒井格)
まるで織姫と彦星が歌っているかのような、ロマンティックなアルトサックスとユーフォニアムのソロが印象的。爽快感あふれるアレグロのテーマは、星々のきらめきを思わせる。なんといってもこの曲、作曲者17歳のときの作品というから驚き。
●朝鮮民謡の主題による変奏曲(J.B.チャンス)
アメリカ陸軍の一員として朝鮮戦争に従軍した作曲者が韓国で耳にした、《京畿アリラン》の旋律を主題とする変奏曲。5つの変奏それぞれに特色があるが、とりわけ、軽快な第一変奏と主題旋律を重ね合わせる、第五変奏のクライマックスは圧巻。
●ドラゴンの年〈2017年版〉(P.スパーク)
1984年に英国式ブラスバンドのための作品として発表されたのち、吹奏楽編曲版も制作され、2017年にはシエナ・ウインド・オーケストラの委嘱で新たに吹奏楽版が書かれた。ウェールズのシンボル「赤い竜」をイメージした壮大な作品。
●春の猟犬(A.リード)
イギリスの詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーンの詩『キャリドンのアタランタ』の一節から着想を得て作曲された。春の到来を告げる快活なファンファーレと、ロマンティックな旋律で吹奏楽ファンの心をつかんでいる。
●陽はまた昇る(P.スパーク)
世界中の吹奏楽の作曲家に東日本大震災への復興支援を呼びかけた指揮者、西田裕氏の委嘱に応えて作曲された作品であり、2011年4月に日本で世界初演が行われた。祈りに満ちた、柔らかく暖かい響きの美しいコラール。
●マゼランの未知なる大陸への挑戦(樽屋雅徳)
吹き渡る風、沸き立つ海流、港町のにぎわい、白い帆を輝かせながら進む艦隊…大航海時代の冒険とロマンが詰まった作品。フィリピンで戦死したマゼランの遺志を継いで世界周航を成し遂げた、マゼラン艦隊への讃歌である。
<文・加藤新平>