ららら♪の「Vol.5 リポート」

令和元年6月13日(木)、東京は久々の梅雨の晴れ間となり、新緑がつやつやと輝く上野公園・東京文化会館大ホールにて「ららら♪クラシックコンサート」第5弾「オーケストラ特集」が開催されました。「炎のマエストロ小林研一郎と千住真理子の競演」と題して、1911年に創立され日本で最も長い歴史をもつオーケストラ「東京フィルハーモニー交響楽団」の熱演が繰り広げられました。

ららら♪クラシックコンサートVol.5
2019年6月13日(木)18:30開演 東京文化会館大ホール

 オーケストラの語源は古代ギリシャの円形劇場の舞台と観客席の間の半円形のスペースを指す「オルケーストラ」に由来します。現在のような弦楽合奏に管楽器が加わった管弦楽の起源としては、16世紀末あたり。大規模な教会音楽や古代ギリシャ劇の復活とされるオペラの登場から発展してきたと言われています。そこでまず1曲目はロッシーニのオペラ「セビリアの理髪師」序曲。軽快で親しみやすいメロディが次から次へと展開され、オーケストラ演奏の定番としても親しまれている名曲です。曲の冒頭は大きな音の連打、やがて囁くような弦楽器の調べ、そして終盤は徐々に音量を増し、心が引き込まれ高揚するひと時でした。

 続く2曲目は千住真理子さんの登場でチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」。1878年チャイコフスキーが38歳の時に旅先のスイスで書き上げた作品です。第1楽章はソリストの奏でるメロディをオーケストラが追いかける「対位法」という西ヨーロッパの伝統的な技法が特徴。第2・3楽章はロシアのスラブ民族音楽を独自の手法で協奏曲にあてはめた躍動的なリズムが特徴です。

 「素晴らしい演奏でした。言葉で表現するのが難しいのですが、音楽の真ん中にある情熱とロマンを感じ、本当に圧倒されました。今まで味わった事がないくらい、感動しました」と興奮冷めやらぬ司会の高橋さんに、「サラリーマン金太郎の頃から高橋さんのファンです。金太郎にスイッチが入った時の変貌する鋭い目がとても良いですよね」と穏やかな声の小林さん。演奏中の炎のオーラのスイッチは一旦OFFとなったようです。

 12歳でデビューした千住真理子さんとの初共演について「小さなかわいい女の子がとてつもない音を奏でた事をいまでも鮮明に覚えていますよ」との言葉に、千住さんは「私もよく覚えています。その時、音楽をそのまま人間にしたような小林先生と一生一緒に音楽をやりたいと思いました。“炎のマエストロ”という言葉は今や世界中で使われています。今日も演奏中は小林先生という人間を創リ出した細胞が、音楽と一体化して私に憑依した様な不思議な感じを受けました。終わった後の拍手で我に戻った感じです」。

 「オーケストラと千住さんのオーラと、作曲家の想いを観客に伝えていく事を求めています。いつもの事ですが、リハーサルと同じような演奏になるわけでなく、本番のこの瞬間に生まれる音楽・・・まさに“生きている”という感じですね。ひとつのコンサートとは一期一会。もう2度と同じものは生まれないのです。そして今日はとても幸せな時間でした」と小林さんは演奏を振り返る。

 後半は、冒頭の有名な「ジャジャジャジャーン」で皆様ご存知のベートーベンの交響曲第5番「運命」。1808年、先に演奏したチャイコフスキーと同じく、ベートーベンも“38歳(素晴らしい名曲がそれぞれの作曲家の人生の同じ年齢で生み出されていたわけです)”の時に書いた作品です。演奏前に小林さんのベートーベンとの出逢いのエピソードが披露されました。

 「ベートーベンとの出逢いは小学4年生の時、ラジオから流れてきた『第9』シンフォニー。聴いている内に畳の上に涙が落ちた事を覚えています。僕が作曲家になりたいと強く思ったきっかけです。当時、教員だった母に手書きの五線紙を作ってもらって、どう音を作ればいいのかを考えたりしていました」。

 「今日演奏する『交響曲第5番・運命』はボイジャーに乗せて宇宙人への贈り物に選ばれた地球人の宝物の1曲です。メロディには哀しみ・苦しみ・慟哭・挫折など人間の本質が詰まっています。第1楽章では、運命はかくのごとし・・・第2楽章では、英雄交響曲と同じように人々の心の中にある悲しみ・・・いわゆる葬送行進曲が流れています。第3楽章はほとばしる情熱と美しさと激しさ、それから第4楽章では地獄落ちという瞬間があり、その後、歓喜への光が見えてきます。地獄落ちの時、チェロとコントラバスの方が弾きながら楽器を叩く所があります。このような弾き方はベートーベンの時代にはなかったものです。東フィルのみなさんも最初は面喰った表情をされていましたが、目を輝かせてお弾きになっています。そうとう耳を傾けていないと聞き逃してしまうかもしれませんが、僕の左手が天を向いた瞬間を注目してください」

 「今日は本当に素晴らしい演奏をありがとうございました。初めての凄い景色を観た瞬間のように、舞台袖で感極まってしまいました」と高橋さん。

 アンコール曲は「ダニー・ボーイ」。「覚えていらっしゃる方もおられると思いますが、以前にNHKの『ららら♪クラシック』に出演させて頂いた時にアンコールで何を弾きたいかとお尋ねになられた時に答えた曲です。父が亡くなり荼毘に付された同じ時間に、ダニー・ボーイを演奏していました。けむりになって天に消えていく父を想いながら演奏した、特別な曲です」と小林さんは語り、穏やかで優しくどこか懐かしいメロディを披露してくれました。

 次回の「ららら♪クラシックコンサート」第6弾は、「ミュージカル特集~舞台と映画のラララな世界~」と題して、10月26日①14時30分、②18時45分の2回、サントリーホールで開催します。

◎演奏風景動画はこちら

シェア!