ららら♪の「Vol.3 リポート」

 10月8日「体育の日」の祝日、東京・サントリーホールで、第3回目のコンサートが開催されました。今回は「魅惑のチェロ特集」と題して、実力ある若手演奏家と名器が結集し、詩情豊かな音色でチェロの名曲が披露されました。

ららら♪クラシックコンサートVol.3
2018年10月8日(月・祝)14:00開演 サントリーホール 大ホール

 オープニングはNHKの「ららら♪クラシック」番組内でチェロの演奏に挑戦している高橋克典さんが楽器を持って登場。会場からはどよめきが起きましたが「私の演奏はまた今度」と本日は司会に徹する事に。


  スタートは北村陽さん14歳。北村さんは昨年の「第10回若い演奏家のためのチャイコフスキー国際音楽コンクール」の優勝者です。曲はチェリストたちにとって金字塔のような存在のチェロのための独奏曲:バッハの「無伴奏チェロ組曲第1番からプレリュード」とチャイコフスキーの「ペッツォ・カプリチオーゾ(小奇想曲)」。楽器は1668年製のカッシーニ。

 「生命力にあふれた音がする楽器ですね」と司会の高橋克典さんも驚きの感想。北村さんは「今日はすごく気持ちよく楽しく弾けました。僕は3歳の頃にディズニーのファンタジアを観て、大きな楽器にあこがれました。でも弾いてみたかったファゴットやコントラバスは当時の自分には大きすぎて、チェロに行き着きました。夢は自分にしか出せない音を世界中の人に届けたいと思っています」と笑顔で語ってくれました。



北村陽さんの演奏動画

 続いてカメラータ・チューリッヒのソロ主席チェリストに就任し、現在スイスを拠点に活動されている新倉瞳さんの登場です。曲はアルゼンチンの作曲家ピアソラの「タンティ・アンニ・プリマ(アベェ・マリア)」で、美しく切ない叙情的なメロディーを披露した後は、チェロのさまざまな超絶技巧が散りばめられたポッパーの「ハンガリアン・ラプソディー」。

 「チェロに興味を持っていただける事に感激しています。今日の楽器は明日の東京ストラディバリウス フェスティバルに出演するためにお借りしたものです。楽器に学ぶ事はいつもとても多いです」と語る新倉さんが手にするのは1717年製のストラディバリウス ボナミー・ドブレ・スッジア。普段は宗次コレクションより貸与された1694年製のジョバンニ・バティスタ・グランチーノを愛奏している。新倉さんの演奏については、共演された斎藤雅広さんも「最初の1音から素晴らしい。まるで後光がさしている感じでした」と興奮気味に語ってくれました。



新倉瞳さんの演奏動画

 前半最後は日本フィルハーモ二―交響楽団のソロ・チェリストとして活躍中の辻本玲さん。使用楽器は1724年製作のアントニオ・ストラディヴァリウス。演奏曲は、甘美な旋律と和音を用いたロマンティックな作風で知られるドイツの作曲家ブルッフの「コル・二ドライ(ヘブライ語で神の日という意味)」と、ピアソラの「オブリヴィオン(忘却)」。
 
 「音楽は非日常的な体験として、人間的な感性や感情を覚醒してくれるとものだと思っています。そんな非日常的な体験をしていただけるような演奏家になりたいです」と辻本さん。



辻本玲さんの演奏動画

 コンサート後半のスタートは、ドイツのデュセルドルフから帰国された上野通明さん。上野さんもまた2009年「第6回若い演奏家のためのチャイコフスキー国際コンクール」の優勝者。演奏1曲目はスペイン・カタルーニャ民謡「鳥の歌」。チェロの巨匠カザルスが1042年に編曲、1971年国連平和賞の受賞式で平和を願うスピーチとともにこの曲の演奏した姿が世界中に放送され話題となった名曲 。2曲目はマルティヌー:「ロッシーニの主題による変奏曲H.290」。

 「このようなコンサートに出演する機会を頂いて嬉しいです。僕は、小さい頃カタルーニャに住んだ事があります。カザルスは音楽家としても、人としても偉大な人です。うちは母がピアノ、姉二人がヴァイオリンとピアノを弾いています。僕自身は4歳の頃ヨーヨーマーのビデオを見て、1年間かけて習わせてほしいと頼んで、5歳からチェロを初めて…現在も続いています」と語る上野さんは現在デュッセルドルフ音楽大学に在学中。使用楽器は1758年製のパオロ・アントニオ・テスト-レ。「1756年生まれのモーツァルトと同じ時代から現代までいろんな方に弾かれた楽器」と高橋克典さんが解説。



上野道明さんの演奏動画

 本日最後の演奏は宮田大さん。日本音楽コンクールを含め出場したすべてのコンクールで優勝、「第9回ロストローヴィッチ国際チェロコンクール」でも日本人初の優勝者。演奏曲はラフマニノフ:「ヴォカリーズ」、サン=サ-ンス:「白鳥」、フォーレ:「夢のあとに」。使用楽器は、1698年製のストラディヴァリウスの「シャモニー」。

 「ご自身のリサイタルを明日に控えた忙しいスケジュールの中で出演して頂きありがとうございます」と紹介されると宮田さんは「明日は無伴奏で独りぼっちです。今日は木村徹さんのピアノがありますから、気持ちが楽ですね」と笑顔でした。



宮田大さんの演奏動画

 コンサートの締めくくりに出演者全員が再登場。14歳の北村さんが「素晴らしい名曲が聴けて幸せな気分です」と感想を語ると、上野さんも「素晴らしい大先輩と演奏ができて幸せ」と一言、それを受けて「素晴らしい大後輩と演奏ができて幸せ」との辻本さんの言葉に会場からも拍手。高橋さんからは「全世界に僅か63挺しか残っていないストラディバリウスの名品が4挺もこの場に集まり、世界で活動されているこの顔ぶれが揃う事もめったにない貴重な機会です。ぜひ全員参加で1曲弾いていただきましょう」。

 選ばれたのは、アザラシヴィリの名曲「無言歌」。哀愁と叙情美を漂わせる美しい旋律を5人の演奏家が絶妙なハーモニーで表現したパフォーマンスに大喝采でした。

 次回の「ららら♪クラシックコンサート」第4弾は、「華麗なるオペラ特集」と題して来年2月14日ヴァレンタインディに、上野の東京文化会館大ホールで開催します。

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