らららの「Vol.2 リポート」

新緑がぐんと色濃く変わりゆく上野公園の、東京文化会館大ホール。今回もチケットは完売。開場前の入り口には長蛇の列ができ、コンサートへの期待の高さが伺える。第2回は、世界で活躍する若手日本人ピアニストが結集し、ショパンの名曲・難曲が多彩な表現で演奏されました。

「ららら♪クラシックコンサート Vol.2」ショパン名曲特集
2018年6月5日(火)18時30分開演 東京文化会館大ホール


ららら♪クラッシックの番組収録後に駆けつけた司会の高橋克典さん。今注目のピアニストへの期待の声でコンサートはスタート。

 オープニングはジュリアード音楽院・大学院を卒業され、アメリカ・ヨーロッパ・日本で大活躍されている中野翔太さん。ニューヨーク生活20年のなかでクラッシックだけでなく、JAZZの一流の演奏家達とのセッションなどにも取り組まれています。

 曲はお馴染みの「夜想曲(ノクターン)第2番」でスタート。2曲目の「練習曲第10番ロ短調」は、テンポの変化や一音一音をなめらかにつなげて弾くレガートが特徴の曲。そして最後の「練習曲第2番ハ短調(愛称:大洋)」は大海で大きくうねりをなす波を思わせると言われる名曲です。




 「一人目で緊張しました。ショパンの曲は音色の美しさ・ピアノと言う楽器の性能と機能を惜しみなく使いきっています。実はJAZZとは即興演奏という共通点があります。ショパンの時代はクラッシックも即興をやっていました。特にショパンは即興演奏家としての腕がすばらしかった。遊び心で同じフレーズを変化に富ませて演奏していた。同じ曲でさえ2度と同じようには演奏しなかったらしいです」と語る中野さん。

 続いてドイツから一昨日帰国したばかりの藤田真央さんは最年少の19歳。曲は「アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調」。ポロネーズの中でも初期の傑作として名高い名曲です。華麗な技巧を披露してくれた藤田さんは昨年度のクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールの優勝者。




 演奏後の高橋克典さんとのトークでは「僕は横浜DeNAベイスターズの大ファン。ベイスターズが勝つとテンションが上がります。クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールの最中もベイスターズが3試合連続サヨナラ勝ちという偉業をやってくれて、パワーをもらえたから優勝できたのかもしれません」とベイスターズ愛を熱く語ってくれました。

 前半の締めくくりは實川風(かおる)さん。2015年にロン=ティボー=クレスバン国際コンクール第3位と併せて最優秀「リサイタル賞」および「新曲集」と受賞、さらに翌年にはカラーリオ国際ピアノ・コンクールで優勝されている実力者です。演奏は「前奏曲第15番 変二長調・雨だれ」と「スケルツォ第2番 変ロ短調」。




 「ショパンは昔から大好きであると同時に苦手で、弾いていて苦しくなる作曲家です。作曲家のメッセージやエネルギーを代弁しようとしてもベートーベンのようにわかり易くないのです。実に複雑で、明るく振舞っていても哀しみでいっぱいな心であるとか、素直ではないのです。よくわからないまま10年間格闘しています。ショパンに“お前にはまだわかるまい”と見下されている感じがまだあるのです」と語る實川さん。

 コンサート後半戦のトップバッターは紅一点の小林愛実さん。9歳で国際デビューを果たし、アメリカ・フランス・ポーランドなどに招かれ、ニューヨークのカーネギーホールでは4度の演奏を成功させた実力者。演奏は司会の高橋克典さんが「フレーズが怖い!」と紹介する「夜想曲第20番 嬰ハ短調・遺作」と「ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調・葬送」。






 「葬送はとても好きな曲のひとつです。ショパンはこの曲を自分自身の死のために、自分を送る曲として書いたのではないかと思います。演奏する時はショパンを送るつもりで弾いています」と荘厳なエネルギーが満ちた素晴らしい演奏を披露。もうひとつ、面白いエピソードを披露してくれました。小林さんは世界中で5名の人だけが保有する「ショパンパスポート」をポーランド政府から贈られたひとり。「でもこのパスポートが何に使えるのか、さっぱりわからないんです」との言葉に会場からも笑い声でした。

 「よっ、待ってました!」と高橋克典さんも愛する3大名曲を披露してくれたのが、金子三勇士さん。バルトーク国際ピアノコンクール優勝の他数々の国際コンクールの優勝者。演奏は「練習曲第12番 ハ短調・革命」「練習曲第3番 ホ長調・別れの曲」「ポロネーズ第6番 変イ長調・英雄」。




 パワフルな演奏に拍手喝采。「少し強すぎました」と笑う金子さん。日本人の父、ハンガリー人の母が共働きで忙しい家庭で育った5歳のある日、独り遊びで耳に聴こえた曲をピアノで再現。それを知ったハンガリー人の祖母が「もしかして・・・天才かも」と6歳でハンガリーに音楽留学させてくれたそうです。当時、飛び級制度があったので、11歳でハンガリー国立リスト音楽院大学に入学された華麗なる経歴ですが、当の本人は「11歳の僕が19歳の同級生とクラスメートって、あまり楽しくはなかったです。ハンガリーの大学を卒業して、日本の高校に編入し直しました」と変り種の履歴を披露してくれました。「リストはショパンの親友。そしてショパンの1番の理解者だったと思います。親友の見たショパンを想いながら弾きました」。

 最後は現在ベルリン在住の福間洸太郎さん。パリ国立高等音楽院、ベルリン芸術大学で学び、20歳でクリーブランド国際コンクールの優勝者。演奏は、高度な表現力が要求されるショパン晩年の傑作「舟歌 嬰へ長調」と、シューマンにショパンの天才性が現れた名曲と評された「バラード第1番 ト短調」。




 神戸のアイスショーで福間さんのピアノを聞いた、羽生結弦さんから直接に「コラボして欲しい」と頼まれた経緯を披露してくれました。オリンピックの大舞台で使われたバラード第1番。「羽生さんの演技は、ひとつひとつの音をとても大切に捉えて表現されていると感じました」。

そしてアンコールは、2台のピアノを出演者6人が代わる代わるそれぞれの持ち味で弾いてくれる、まさに夢の饗宴でした。曲は「華麗なる大円舞曲」。胃薬のコマーシャルで聴いた事がある方、またクラッシックバレエでは妖精達の踊り(レ シルフィード)としても有名です。2台のピアノで演奏し合う僅かな時間で、交代する奏者が椅子の高さを早業で調節するパフォーマンスに会場からに笑い声が沸き起こりました。ひとつの曲が、6人それぞれの解釈で豊かに調和しあって観客の心に響く、これぞ生演奏の醍醐味。人気ピアニスト達の華麗なる大演舞に拍手喝采でした。






 ららら♪クラシックコンサート第3弾は、2018年10月8日サントリーホールで、豪華5名の人気チェリストが贈る「魅惑のチェロ特集」。この秋ふたたび、高橋克典さんの楽しいトークと、今度はロマンテックなチェロの音色がたっぷりと楽しめるひととき。待ち遠しいです。